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直線上に配置

電灯
   

夕陽が西の空を茜色に染めている。
任務を終えたカカシは夕食のおつかいに木ノ葉スーパーに立ち寄った。
先生に頼まれてたおやつもしっかり買った。
今日、先生はあれからまた別の任務に出て、帰りは遅くなるって言ってたっけ。
まだ時間はたっぷりある、そう思うと足は自然にあの場所へと向かってしまった。
 
そう・・・ 一月前まで暮らしていたあの家へと・・・
裏口からこっそり入り込む。無人となった家はがらんとして、ここで暮らしていたことが嘘のように冷たくなって色を失っている。
よせばいいのに、あの部屋の襖をすっと開けた。
まだ、赤茶色の染みが残っている畳。
カカシはスーパーの袋をぽんと投げ、壁に寄りかかり膝を抱えて座り込む。
 
「やっと・・・ 先週から任務に復帰出来た。
今はミナト先生と一緒に暮らしているんだよ・・・」
 
必死に堪えてはみたものの、人前では決して泣かないように我慢してるから、ここに来たら堪えきれずに、
想いが溢れて、溢れて・・・
涙が一筋すぅっと頬を伝い落ちた。
 
「父さん・・・ どうして・・・ 」
 
現実が中々受け入れられない。
今でもその襖を開けて、サクモが「ただいま」と笑って帰ってくるような気がする。
 
「うぅ・・・」
 
溢れた涙を手で拭った瞬間、突然、鋭い殺気を感じた。
 
「庭か?」
 
カカシはさっと立ち上がり、縁側に出た。
 
「誰だ?」
 
庭をよく見ると木の陰に茶色のマントを着けた赤髪の少年が立っていた。
フードをしていたから、顔ははっきりと見えないものの、背丈は自分と左程変わらないように感じられた。
 
「ここは白い牙の家か?」
 
(こりゃ、木ノ葉の人間じゃないな)
 
「うん、 まぁ、前はそうだったけど・・・ 今は違う」
「じゃぁ、今はどこだ?」 
「名乗らないものに答える必要はない」
 
少年は木陰から、カカシの方に向かってフードを取り、ゆっくりと身体を現した。
 
「分かった。 砂のサソリだ。 木ノ葉の白い牙に会わせて欲しい」
「えぇっ? 砂から来たの? どうして?」
 
砂の里からは大人の足でも三日はかかる。 
それに、木ノ葉とはまだ抗争が続いていて、忍であってもそう簡単に潜入できないはずだ。
忍ではなく、普通の子どもなのだろうか。 でも、さっき感じたのは確かに殺気だ。
やっぱり、忍か? お互い、鋭い視線を浴びせ探り合っている。
 
「用事があるんだ」
「悪いけど、ここにはもういないよ」
「困ったな・・・ どうしても会わなくてはならないんだ」
 
カカシは、話ているうちに、何だか悪い奴ではなさそうだと感じ、本当の事を話てもいいかなと思った。 
そのうち、砂の里にだって、サクモの死は伝わるだろうし。
 
「それは・・・ ちょっと無理・・・ 
だって、もうこの世にはいなんだもの」 
「何だと!!! しっ、死んだのか?」
「うん・・・ そう・・・」
「クソッ・・・ 誰が? 誰が殺ったんだ?」
「ごめん・・・ そこまでは・・・ 言えない・・・」
 
サソリは、身体の力が抜けて、へなへなと座り込んでしまった。
 
「父さん・・・ くっ・・・ うぅ・・・」
 
そして、急に涙をぽろぽろと溢れさせ、泣き出した。
 
「大丈夫?」
 
カカシは、ぱっと庭に降りて、サソリの側に近づいて、背中をさすってあげた。
 
「うわぁぁぁぁ〜」
 
カカシに優しくされて、サソリは堪えていたものが一気に溢れ出したようだ。
 
「ごめん・・・ オレ・・・」
「いいんだよ・・・泣きたい時は思いっきり泣いた方がいいって先生が教えてくれた」
 
カカシはまるで自分にも言い聞かせるように呟いた。
 
「白い・・・ 牙は・・・ 父さんの・・・ オレの父さんの・・・ 仇・・・」
 
思いがけないサソリの言葉がカカシの胸に突き刺さった。
 
「そっか・・・ ごめんね・・・ もしも・・・ もしも・・・
オレで気が済むなら・・・ オレを・・・ いいよ・・・」
「えっ?」 
「オレは白い牙の子どもだから・・・」
 
サソリはカカシの目をじっと見つめた。
泣きはらしたような赤い目をしていた。
 
 (コイツもか・・・)
 
「お前には関係ない・・・ 
悪かったな・・・ もう帰るよ」
「砂から来たんでしょ? すごく遠いのに。 これから帰るの? もう真っ暗だよ」
 
いつしか陽はどっぷり暮れて辺りは暗闇に包まれていた。
 
「お腹空いてないの?」
 
カカシは、さっと部屋に戻り、スーパーの袋を取って来た。
 
「ちょっと上がって待っててよ。 今、電気点けて来るからさ」
 
カカシはブレーカーを上げて、電灯を点けた。
真っ暗な家に灯りが点った。
サソリも縁側から部屋に上がった。
 
「はい、お菓子あげる。 ここじゃもう料理は出来ないから、お菓子で我慢してね」
 
カカシはにっこり笑って、袋から取り出したチョコレートをサソリの手に載せた。
 
「ありがとう・・・」
 
二人でチョコレートをパクリと頬張った。
口の中にぱぁっと甘い香りが広がった。
 
「美味しいね」
 
カカシがそう言うと、サソリの目から、また涙が一筋零れ落ちた。
 
「うん・・・ 砂にはこんな美味しいチョコはない・・・」
「そう、よかった。 まだたくさんあるから、お土産に持っていっていいよ」
 
カカシは先生の分はまた後で買えばいいやと、残りを全部サソリに渡した。
 
「ありがとう・・・ そういえば、お前の名前・・・ まだ、聞いてなかった」
「あぁ、そうだっけ、ごめん、ごめん。 オレは、はたけカカシよろしくね」
「カカシ・・・ お前も忍なんだろ?」
「ん、まあね」
「お前も・・・」
「ん?」
「何でもない・・・」
 
サソリは言葉を飲み込んだ。
父親の仇を取ると壮絶な覚悟で家を飛び出して来てしまった。
今から思えば、父親を殺す程の忍をまだ子どもの自分が仇を討てるはずもないのだ。
そして、来てみれば、その仇もすでに亡く、自分と同じ境遇の息子が残されていただけだった。 
サソリの思いもぶつけるところを失い、何とも言えない虚しさだけが心にぽつんと残った。
 
二人の父と二人の子ども・・・
二つの生と死に、サソリは何か因縁めいたものを感じ、ふっと笑った。
 
「オレたちは・・・ ちゃんと・・・ 生きよう・・・ な・・・」
「うん」
 
カカシもこくりと頷いて、小さな笑みを返した。
 

                                                                               2008/2/14

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