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Present from two    2
   


「オレ、暗部の時はさ、イタチと組んでいたんだ」

カカシは星空を見上げながら、ぽつりぽつりと話し始めた。

カカシからイタチの話を聞かされたことは、今までにも何度かあったが、暗部の話は一度もなかった。
暗部任務のすべてが里のトップシークレットであり、たとえ過去のことでも、他人に話すことはあり得ないからだ。

「イタチってさ、本当に、何でも完璧にこなせる奴でね。
ま、オレだって、ガキの頃から、それなりに人並み以上だったけどさ。
イタチと組んだ時は、こいつはオレよりできるなって、いつも感心してたんだよ。
本当に凄い奴だった」

サスケは何も言わずに、カカシの隣を歩いていた。
何もかもが、昔のままのこの道を。

「オレって、チャクラないくせに無茶する方だったから、ぶっ倒れそうになって、イタチに何度も助けられたし。まぁ、イタチがいるから、無茶してもあとはうまくやってくれるっていう絶対的な安心感もあったからね。
愚痴も言わず、淡々と任務をこなすし、オレの我儘もたくさんきいてもらったよ。
イタチは無口だったからさ、自分からオレに話しかけるってことは、ほとんどなかったんだけどね」

カカシは懐かしそうに、イタチの話を続けていた。
そして、サスケが住んでいた屋敷を通りすぎ、どんどん奥まで歩いて行く。


「任務報告書は、いつもイタチに書いてもらってたんだけどさ。
ある時ね、どんな細かいことも書き漏らさず完璧な報告書を書くイタチが、その日だけはちょっと簡単すぎたから、あれ?どうしたんだろ〜って、不思議になったのね。
報告書としては、提出してもおかしくないレベルだったんだけど。
でも、あのイタチがそうせざるを得ない何か特別な理由があるんだろうなって思ってたら、オレ、ちょっと意地悪したくなっちゃって。
『書き直して』って、言っちゃったんだよ。あの時の、イタチの焦った顔ったらなかったよな。あんな顔見たのは、あの時だけだった」

カカシは、くすっと笑った。

「イタチがさ、急に頭を深々と下げて、『申し訳ありませんが、今日だけは・・・どうしても早く帰らなくてはならないのです』
って、言ったんだよ。オレ、びっくりしちゃって。『うちはの会合でもあるの?』って思わず、聞いちゃったんだ。そんなことイタチが言うはずないのにね。
オレとイタチが組んでたのは、表向きは、写輪眼の使用法の伝授ってことになってたけど、本当の理由はイタチからうちはの情報を流してもらうって任務もオレにはあったからね。
イタチったら急に顔を赤らめてさ。『家庭の事情です』なんて言うから、吹き出しちゃったよ。
ま、あのイタチが早く帰らなくっちゃならない理由なんて、よっぽどのことなんだろうなって、興味わいちゃってさ。報告書はこれで出しておくからいいよって、帰らせてあげてから、イタチの後をこっそりとつけたんだ。普段のイタチなら、オレの尾行位、絶対気づくはずなのに。
余所見もしないで、一目散にすっ飛んで行ったんだ。でも、そこはうちはの屋敷じゃなかったんだよ」

カカシから思わぬ形でイタチのことを語られて、サスケの心臓は激しく鼓動した。

「で、そこがここ」

カカシはうちは街のはずれの、草がぼうぼうと生えている所で止まった。

「これは・・・?」

もちろん、今は雑草が生い茂っているだけのただの荒れ地にすぎないが、
よく見ると、きちんとした四角い形に区切られていて、畑の跡地のようだった。

「イタチはね、ダッシュでここに走って来て、一番奥の畑に入って行ってね・・・
オレはそこの木の上から見てたんだけど」


何かを思い出したのか、サスケが歩けなくなって、茫然と立ち止まっている。
カカシがそっと手を引いてゆっくりと歩き出した。
背の高さ程もある雑草を掻き分けて進んだその先に、ぱぁーっと雑草がない空間が開けた。

「真っ赤な・・・小さなトマトがね、たくさん実っていてさ。
イタチは嬉しそうに、愛しそうに、大事に大事に、ひとつずつ、トマトをもぎ取っては小さな箱に入れてたんだよ」

イタチから誕生日にトマトを貰ったことを、忘れるはずなんてなかった。

サスケの目の前には、信じられない光景が広がった。

「何だよ・・・」
「サスケ、お誕生日おめでとう!
オレからの、プレゼントだよ〜」
「どうして・・・?」
「イタチがね、オレのところに来たんだよ。
あの晩の前の日にね・・・
土下座して、額を地面に擦りつけるようにして。
明日から長期の国外任務に出ることになったから、あのトマトに、水をやって欲しいって。
サスケの誕生日まで、枯らさないで欲しいって。
前に、オレがイタチの後を付けていたのは、やっぱ、バレバレだったんだけど。
オレにあの場所を知らせたかったんだってさ」

サスケの身体がぶるぶると震えだした。


 真っ赤な、甘いトマト。
 大好きな兄さんが作ってくれたトマト。
 嬉しくって、嬉しくって、 
 美味しくって、美味しくって、
 いっぺんに何個も、ぎゅうぎゅうと口に押し込んで、
 兄さんに笑われたんだ。


 『サスケ、そんなに慌てて食べなくても、まだたくさんあるからな』
 『おいしいよ、兄さん!』



あの懐かしい光景が、目の前に再び現れたのだ。
サスケはゆっくりと跪き、トマトをひとつもぎ取った。
そして、そっと口に押し入れた。
カカシが不安げな顔でサスケを見つめながら、言葉を待っていた。


「ん・・・まぁまぁだな」

「何それ? これでも、結構頑張ったんだよ。
サスケがいない間もね」

カカシはイタチに託されたのだと、ずっと、ずっと、守ってきたのだ。
サスケと、トマトと、イタチの思いを。

「ったく、何こそこそやってたんだよ。俺様に隠しやがって」
「ま、オレとイタチとの約束だったからね」
「気にいらねぇな、あんたもイタチも」
「いいじゃないの、オレもほっとしたよ。イタチとの約束が果たせて、誕生日プレゼント渡せたしね」
「アホか」

サスケはもうひとつトマトをもぎ取って、ガブリとかじったかと思うと、すっとカカシの傍に寄って、カカシの口にトマトを押し込んだ。

「あんたも味見しろ」

サスケはにやりと笑って、もぐもぐと口を動かしかしているカカシをぎゅうっと抱きしめた。


 (サンキュ。
  馬鹿兄貴。
  馬鹿カカシ。
  嬉しかったけど、二人してこの俺様に隠し事とは、許せないな)

と、サスケは腕の中のカカシにそっと囁いた。



二人の家に帰ってから、隠し事をした罰だと言って、サスケにとっては、ある意味本当の誕生日プレゼントを、今度は一歩もカカシが歩けなくなるまで、じっくりと堪能した。


                                                                               2011/07/24

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INDEX



                               何かもう色々すみません。
                                    トマトをプレゼントするなんて、ありがちなネタですね、はい。
                                    それしか思い浮かばなかったんです。おにぎりの方がよかったかなぁ?
                                    カカシが必死に握るの。絶対に三角にならなくて、変な形ばっかで。
                                    って、それも皆さん書いていそうですよねww
                                    そうそう、今年のサス誕企画の対談の中に出てきたんですが、
                                    あの中忍選時のサスケの黒いつなぎコスをカカシが選んでプレゼントしてたのかもって話。
                                    あれ凄い激萌しました。

                                    「サスケ、これが本選用の忍服だ」
                                    「何だこれ?変な服だな、どうやって着るんだ?」
                                    「ほら、横にファスナーがついているんだよ。先に足を入れてから・・・」

                                    あれ、これ書けるかな? じゃぁ、来年のサス誕に!?

                                    サスケ、お誕生日おめでとうー!早く木ノ葉に帰って来てね〜!