☆「ろまんちか」 ななみ様よりいただきました!





それはごく平均的な朝の事だった。
 
 
    
木の葉の里が誇る忍者、はたけカカシは朝からこたつに入ってみかんを食べ続け。    
「こたつといえばみかんだよね。」      
と語るカカシに対して、彼と一緒に暮らしているうちはサスケもやはりこたつに入ったまま    
「こたつに入ると出たくなくなるよなぁ。」
などと暢気に相槌を打つなどしていた。    
お互いその日は休日であったので、朝から慌しく出勤の仕度をする事もなく。 のんびり、ぼんやりと こたつに入ったままテレビを眺めたりしてゆったりと過ごしていた。
そのうち。 突然カカシがみかんを食べていた手を止め、 「うっ。」 と一声漏らすと口を押さえ、「出たくないね。」 などと言っていたこたつから飛び出し、バタバタと洗面台へ向かって駆けて行った。     
大方みかんを喉に詰まらせでもしたのだろうと思ったサスケは左程気にする事もなく。
むしろカカシが出て行った後のこたつ布団が捲れ上がったままになっていた事の方を気にして腕を伸ばし、外の空気がこたつに入らないよう気を配りながら再びカカシが戻ってくるのを待っていた。
     
テレビ番組がCMへと切り替わり。 それから再び番組へと戻った辺りでカカシが再びこたつの部屋へと戻ってきた。     
青い顔をしたままで。
     
初めサスケはその顔色を見て 「吐いたんだな。」 と勝手に解釈していた。      
吐いて気持ち悪くなっているのだな。     
そりゃそうだ、朝から5つも6つもみかんを食べれば、誰だって気持ち悪くなるだろうし、喉につまる事もあるだろう。
     
そんな事を考えながら、再びこたつに入って来たカカシをチラッと見やるだけで済ませていたサスケは。 次にカカシから告げられた言葉を聞いてひっくり返るほどに驚いた。
    
「・・・赤ちゃんできちゃったみたい。」
 
     
正確にはこたつの隅に額を打ちつけ、床に倒れ込んだのだが。 痛みに涙目になりながらもサスケはカカシの事を未知なる生物であるかのように    
驚愕の表情を浮かべてまま見つめ返した。
 
 
 
 
・・・・・・・・・・・・    
 
 
 
「・・それで。 できちゃってたんですか?」
     
里で一番美味しいと評判の団子屋で団子を食べながら落ち着いた物腰で訊ねてくるゲンマと向かい合って腰を下ろしていたカカシは    
「そんなわけないでしょ。」     
と、あっさりと否定してみせた。
 
    
「ただ、そう言ったらあの子、どんな顔するのかなぁって思っただけ。」     
暇だったから。    
「・・・・。」     
暇だったから という理由だけでそんなニを吐かれたら堪ったもんじゃないだろうな。 と思いながらも、ゲンマは普段と左程変わらぬ表情のまま    
静かにお茶を飲み。 緩く口角を引き上げチラと上目遣いで団子を頬張るカカシを見やり    
「それは残念。」     
と一言答えた。    
「・・残念って、どういう事?」     
流石にその意味深な姿を見ては訊ねずにいられないカカシが不思議そうに訊ねると、ゲンマは涼しい顔のままで団子を一串手に取り    
「そのまんまの意味です。」 と答え齧りつく。     
暫くは団子を美味しそうに食べていたゲンマだが。 いつまでも自分の発言の意味を理解できずに知らせてもらえるのを待っているカカシを見て    
小さく笑うとお茶を啜りながら 「俺の勝手な想像ですから。」 と、一言付け加えた。    
「カカシさんとあいつの子供ならきっと、珍しい子供が生まれただろうになぁって、話しですよ。」    
「・・・。」     
勝手な想像をするゲンマに流石にムッとして見せるカカシに対して彼はまた緩く口角を引き上げ、ニヒルチックな笑みを浮べてみせると。    
「どっちに似ても可愛いでしょうしね。」      
と、今更のように付け加えて見せた。    
「俺だったら、カカシさん似の子供だったら可愛がるけどなぁ。」     
あ、俺だけじゃないか。 ライドウも多分そうだな。     
ぶつぶつとそんな事を呟きつつお茶を飲む姿を黙って眺めていたカカシだが。 ふとゲンマと視線がぶつかると今度はゲンマから改めて訊ねてきた。    
「で。 本当のところ、どうなんです? 子供が欲しいんですか?」
    
「・・・まさか。」     
できっこないよ。     
と、視線を反らしたまま呟く姿にゲンマはまた笑ってお茶のお代わりを店員に頼んだ。
 
     
新しいお茶を湯飲みに注ぎ足してもらった後、店員が傍から離れたのを確認し終えたゲンマがいたずらっぽく笑ってカカシを見やる。    
「俺。 よろしければ種を仕込んでさしあげましょうか?」
     
もとよりそうであるだけに、尚更敢えてセクシャルな話し方をされては困る。 と、内心焦りながらも表面上は普段と何ら変わらぬ態度で    
カカシは 「結構です。」 と冷たく答えてみせた。
 
    
「第一ゲンマだって無理だもん。 俺、男だよ? お前も男だし。 俺には子供を授かる場所すらないんだからね。」    
「まぁ、まぁ、カカシさん。落ち着いて。」     
ここ、茶屋ですから。     
そっと釘を挿され、そうだったとカカシも我に返り小さく咳払いを一つすると    
「無理だから。」     
と、改めてゲンマの冗談を否定してみせた。     
なるべく上官としての威厳を保とうとしているカカシの様子を見ながら。
だが実際はそんなものなどあるようで無きに等しいカカシの姿を密かに楽しんでいたゲンマは、チラッと人影もまばらな店の中を見回し    
「俺、持ってますよ?」     
と、声を潜めてコッソリ囁くように告げた。    
その囁き方があまりにもお手本のようであったのでカカシも思わず好奇心を掻き立てられ、思わず身を乗り出し声を潜めて訊ねる。    
「・・何を?」     
何を持っているというのか と訊ねるカカシの姿を満足そうに笑い見やったゲンマは自分の腰に取り付けたポーチに片手を差し入れ。
何やらゴソゴソと探った後で赤い紙包みをカカシの手元に差し出してみせた。
 
    
「これを飲んだら相手の事を骨まで愛しちまうって薬。」
「・・・まっさかぁ・・っ。」     
流石にそれは在りえない。  と笑うカカシに対してゲンマは酷く真顔で 「ホントですよ。」 と更に言い募る。    
「これは内密の話しなんですが・・・。」     
そう言い、人差し指を自分の唇に軽く押し当て 「内緒だ」 と意思表示を示して見せてくるゲンマに釣られ、カカシも思わず身を乗り出しゲンマと額をつき合わせるようにし、
机の上に置かれた赤い包み紙に包まれた薬を見つめながらゲンマの話しに耳を傾けた。
 
 
 
 
 
 ・・・・・・・・・・
 
 
 
 
 
     
両手をポケットに入れ、互いに逆方向へ分かれたカカシの後姿を見送ったゲンマはアンニュイな笑みを浮べて溜息を漏らした。     
昔からの癖で、少し背を屈め足元を眺めながら歩いて行くカカシの手にあの赤い包み紙の薬が握られている事を知っているのはゲンマだけだ。     
カカシは信じて持って帰ったようだが、当然あれはゲンマのでまかせで、あれは単なる胃薬なのだが。     
だがそれでもカカシが受け取り帰って行った姿を見送り、複雑な思いと共に自分が言ったニを思い返した。
 
 
 
 
    
『 これを飲んだら相手の事をめちゃくちゃ愛おしいと思うんですよ。 それこそ、昼も夜もないくらいにね。 俺達が諜報で閨に忍び込む際、    
相手の女にこっそりとコレを飲ませておくんですが・・サりゃもう、気を抜けば精を吸い尽くされかねないぐらいの効き目でして・・・。』    
『 え〜〜〜・・・っ。すご〜〜い・・・っ。やっぱ、そういうの使うんだ・・・っ。 』     
真剣に関心してみせる姿が幾分幼げでそれが可愛く見えた。
 
 
 
    
『 骨まで蕩かせた後からこちらの欲しい情報をあれこれ聞き出すって寸法なんですがね・。 どうです?使ってみます?』     
これであいつの本音を引き出せたとしたら、容易い事だと思いませんか?
 
 
 
     
ホンの悪戯心程度のつもりだった。     
だがカカシは真剣に考え込み。 やがては 「うん、使う。」 とハッキリと言いきり薬の包みに手を伸ばした。     
流石にゲンマも 「あくまでも飲むのはカカシで。 相手を蕩かすつもりで挑まないと駄目だ。」     
相手が蕩けた所で本心を探る。 と釘を挿しておいたのだが・・Bどうなることやらと考えながら歩き出す。
 
 
 
 
 
 
 
    
『サスケが一体何を考えているか解からないから吐いたニだったんだ。  だってあいつ。 俺と違って絶対本気で男とどうこうするような奴じゃないんだもの。
・・・きっと俺の事を不憫に思って構ってくれているだけなんだ。』     
そして飽きたら俺、きっとあいつに捨てられる。
 
 
 
     
一体どうしてそんなつまらない冗談みたいなニを吐いたのだとしつこく訊ねた後。 根負けしたカカシがようやく吐いたのはそんな理由だった。     
そんな筈がないだろう と笑ってみせたがカカシは本気でそう考えており。ゲンマが笑うと怒ったように顔を顰めて 「嘘じゃないって。」 と    
言い募ってみせた。
 
 
 
 
    
『だって俺。 子供なんて産んでやれない。  あいつが望んでる一族復興の手助けもしてやれない。 いつかきっと、あいつが子供を欲しいと思ったって・・・。
俺にはどうする事もしてやれない・・・っ。』     
そんな俺。 いつか捨てられちゃうよ。
 
 
 
    
「捨てられたら俺が引き受けてあげますよ。」     
目尻をうっすらと赤く染めて真剣に語ったカカシが愛おしく。そして気の毒にもなったゲンマがそう告げると、カカシは弱々しく笑った後で    
『ゲンちゃんは優しいよね・・・。』  と一言だけ呟き視線を反らしていた。
 
 
    
『 もしそうなったら、よろしくね。』    
『おじいちゃんになっても、一緒にこうやってお茶を飲んだりしようね。』
 
 
     
どう考えてもサスケが既に一族復興の事などどうだって良い程にカカシとの事を真剣に考えているのは解かっているのに。 肝心のカカシがその事を解かっていない事もまた滑稽だった。
     
カカシは笑ってはいたがきっと、心からそう在りたいと願うのは自分ではなく、あの生意気な子供なのだろうと思いつつ。 
ゲンマは赤い包み紙の単なる胃薬を川に向かって放り投げ、複雑な思いのまま歩き続けた。
 
 
 
                                                                                                       
 
 
 
 
                                  08.1.18
 
                                            
                      わぁぁぁぁっ!  やっと、年末に掲げた課題が終わりましたっ;。                                              
                      「カカシ妊娠話」 いや。実際妊娠しちゃいないですけど。                          
                      カカシがそうなりたいなぁって願っているだけの話しなのですけど。                                            
                      この話をずっと親しくして下さっているあっきぃさんに捧げます!                                            
                      受け取ってやって下さい・・・っ。
 
 
 
 
 
わ〜い!わ〜い!
ろまんちかのななみさんより、小説を贈っていただきました!
カカシ妊娠!?に食いついた私が是非書いてくださいとおねだりしたので!
 
きえぇぇぇぇぇぇ〜><
 
サスカカ+ゲンマですよぉ><
 
サスケに捨てられちゃうなんて思ってるカカシが何と可愛いこと!!!
サスカカってこんな感じですよね!
カカシはいつでも身を引こうと思ってるみたいな。
もっと、自信持てばいいのに!
 
 
ゲンマは優しいですよね〜!!!
そして、私も最後にカカシと一緒にいるのは案外ゲンマじゃないかな〜なんて密かに思ってたりします。
年を取っても二人でお茶を飲んでそうですよね。
ラストは思わずうるっときてしまいましたよ!
ななみさん、ステキなお話をありがとうございました!