「ん! ここなら大丈夫! 迷彩結界を張れば誰にも気付かれないしね。完璧だな」
四代目はニヤリと意味ありげに笑い、ドロンと姿を消した。
「カカシ! はい、これ今日の任務。ここのところキツイの続いてたから、今日は暗部任務じゃなくて、単独のDランク任務ね」
四代目は優しく微笑みながら、任務依頼書をカカシに渡した。
カカシは一読して、戸惑いの表情を浮かべた。
その任務の内容は、アカデミーを卒業したばかりの下忍がするような簡単な買い物の任務だったからだ。
「先生・・・これをオレに・・・?」
「だって、カカシったら、先週からずっと任務が続いてて、休み取ってないでしょ?」
「半月くらい休まなくたってどうってことないです。先生だって休んでないんだし」
「デスクワークと現場じゃ体力もチャクラも消耗の量が全然違う」
「体力もチャクラも使ってなくても、その代わりに火・影・様は頭も気もたくさん使っているんじゃないですか?」
「え? オレ全然使ってないけど」
カカシは呆れ顔でふぅっと短い息を吐いた。
「カカシを休ませてあげたいのに、カカシ休んでくれないからさ。
せめて、疲れないような任務をしてもらいたいの!」
「この位だったら、午前中で終わります。午後からは、他の任務に出してください」
「カカシ、ちゃんと依頼書読んでないでしょ? たぶん・・・午前中では終わらないな。
買った物を届けてもらう任務も含まれてるからね、一日はかかっちゃうと思うけど」
「こんなお使いで?」
「こんなんでも、里に来た依頼は依頼、立派な任務なんだからね。
とにかく、そこに書いてある物全部買い終えたら、執務室に届けてね。はい、お金」
そう言って、四代目はカカシに封筒を渡した。
カカシはそれを受け取り、頭を下げて、「行って来ます」と言って出て行った。
「さてと、どこから行こうかな」
カカシは依頼書をじっくり見て、買い物の順番を考えようとした。
「薬缶。お鍋。炊飯ジャー。小さな冷蔵庫。小さなテレビ。お茶碗。お箸。お皿。マグカップ。
布団。シーツ。布団カバー。歯ブラシ。タオル。バスタオル。それぞれ二組・・・
どうやら、引越しの準備みたいだな」
電化製品や日用雑貨など、二人分を用意すればいいようだ。
しかし、中には、色やメーカーの指定まであったりで、かなり注文が細かい。
この依頼書通りの物をすべて買い揃えるのには、四代目が言った通り、確かに時間がかかりそうだ。
「なるほど、ここまで、細かい指定があるから、時間がかかるって言ったんだな。間違えないようにしないと」
カカシは下忍が受けるようなDランク任務と馬鹿にしていたが、これも立派な任務だと仕切りなおして、買い物に出かけた。
カカシはまず木ノ葉電気に行って電化製品を買い、火影執務室に配送を頼んだ。任務ということを告げると、特別に今からすぐに届けてくれるという。
任務に対する里の協力体制は万全だ。
次は最近出来たばかりの大型ホームセンターに入った。ここなら大体の日用雑貨は揃うだろう。
「まずは食器売り場から行くか。赤と青のマグカップにお箸とお茶碗か・・・」
ほとんどが二組揃えるようなのだが、とにかく色指定やかわいいものだとかリクエストが多い。
「先生何も言ってなかったけど、この感じだともしかして新婚さんなのかな?
いや、そんな大事なものだったら自分達で選ぶよな・・・
ま、任務で依頼するくらいだから、何か事情があるのかも」
カカシはどんな事情であれ、受けた任務なのだから、喜んでもらえる物を選ぼうと思った。
どこに何があるのかわからないので、案内表示を見ながら探すのだが、これがなかなか見つからない。
途中から店員に聞いた方が早いとわかり、依頼品リストを見せて店員に案内してもらい、広いホームーセンター内を歩き回った。
お昼も食べずに買い物をして、すべての物を揃え終えたのは、三時を過ぎてしまった。
とても、持ちきれる量ではなかったので買ったものは、すべて配送にしてもらった。
「ふぅ、本当に一日がかりだな、これから、どこまで届けるんだろう・・・?」
カカシは帰りに一楽でラーメンをさっと流し込み、急いで執務室に戻った。