四代目は火影に就任して、今までの古い掟をばっさりと取り払い、数々の改革を断行した。
その中でも、三代目やご意見番の反対を押し切って決めたのが、誕生日とクリスマスとお正月休暇であった。
本来、忍の世界にあっては、盆暮れも、誕生日やクリスマスだって、浮かれている暇はない。
ましてや、今、大陸は忍界大戦争という戦乱の世、真っ只中なのだ。
三代目の頃は、一年365日、一日も休みなく任務は受け付けていたし、皆もそれが当たり前だと思っていた。
しかし、四代目は、生きるか死ぬかの日々を送っている里の仲間のために、感謝の思いを込めて、何かプレゼントをしたいと思った。
そして、せめて、一年に一度の誕生日とクリスマスとお正月三日くらいは、特別休暇にして、ゆっくり過ごしてもらおうと考えたのだ。
まぁ、お正月に関しては、初詣客の警備など、どうしても必要な任務も若干あるのだが、それは順番制にして、公平にシフトを組めば問題はなかった。
それ以外の通常任務はすべてお断りだ。
この思い切った改革に、何よりも里の皆が喜び、さらに、四代目の思いに応えていこうと心に固く決めたのだった。
そして、四代目が火影に就任してから、初めてのクリスマスをもうすぐ迎えようとしている。
休暇が取れることもあって、今年の里の雰囲気が、いつもの年よりも、明るく晴れやかに感じられるのは、誰もが同じ思いだろう。
親子や友達、、そして、恋人同士で、どんなクリスマスを過ごそうか、そんな話で里中が賑わっているようだ。
四代目とカカシはいつものように、二人で夕食を済ませた。
カカシは、見たいテレビ番組もなく、読みかけの本を取り出して、ベットに寝転んだ。
四代目は、いつも、読みきれなかった書類をいっぱい持ち帰って、食後に目を通すのが日課になっていた。
カカシが手伝いたいと申し出ても、機密書類ばっかだからと言って、四代目は一人で片付けるしかないのだ。
本当は、四代目だって、カカシが秘密を漏らすはずはないのだから、半分でも読んでくれて、内容を教えてくれれば済むものもあるのだが、カカシには、そんなことより、好きな本や忍術書でも読んで、いろんな知識を吸収してほしかったから、仕事はいっさいカカシに頼まないと決めていた。
しかし、今晩の四代目は、いつもと、ちょっと違った。
書類の山ではなく、小さな札の山を机の上にどんと並べた。
「ジングルベ〜ル ジングルベ〜ル 鈴が鳴る〜♪」
四代目は鼻歌を歌いながら、いきなり印を組んで、二人に分身した。
「あぁ、結構あるな・・・
ねぇ、カカシィ〜
お願いがあるんだけど、ちょっと手伝ってくれない?」
カカシがリビングに戻ると、二人の先生が座っていた。
「うわぁっ、先生、びっくりした〜!何してるの?」
「これね、まだみんなには内緒なんだけどさ、俺、クリスマスにサンタさんになって、
アカデミーの生徒達にプレゼント配ろうと思ってるんだけど・・・
でも・・・初めてカカシと二人きりでイヴの夜を過ごせるんだからさ・・・
やっぱ、ゆっくりしたいじゃん!」
四代目は、少し怪しげな笑みを浮かべながら、カカシを見つめた。
「だから、プレゼントの配達、一気にパパッと済ませちゃおうと思ってネ!
俺の術式書いた札をアカデミー生の家にそっと貼っておいて、
影分身で行けば、一回で済んじゃうし!
ナイスでしょ〜!」
「先生、すっご〜!オレがアカデミー生で、火影様からプレゼント貰ったら、
とっても嬉しいよ!絶対 喜んでくれるよ!」
「でもね、この術式の札ってさ、コピーじゃダメなの。
こんな汚い字でも、直筆じゃないと飛んで行けないんだ。
1学年40人としても、6学年で240枚はいるな・・・」
「オレも手伝うよ!」
「サンキュ!カカシ!
これが見本だから、表にはこの術式をこれと同じように書けばいいから。
そして、裏には、この名簿の名前と住所と学年も書いてね!」
「これを一軒一軒貼っていくの?結構大変だね」
「うん、夜中にこっそり貼りに行かなきゃならないからね。
まっ、影分身で行くから、大丈夫だよ!」
二人は、アカデミー生だったら、どんなプレゼントを喜んでくれるか、あれやこれや考えながら、せっせと術式を書いていった。
夢のある作業だから、難しい術式の文字であっても、本当に楽しく書き進めていった。
「もちろん、男の子と女の子は違うものにするつもりだけど、
低学年と高学年にも分けたほうがいいよね〜?」
「じゃぁ、4種類用意すればいいんだ。
女の子はやっぱりぬいぐるみとかかな・・・?」
「今度の日曜日、午後からなら時間取れそうだから、ちょっと遠出して、
国外までプレゼント買いに行こう!」
「国外まで行くの?」
「そりゃそうだよ!木ノ葉の中じゃ、バレちゃうかもしれないでしょ!」
カカシは嬉しくなって、思わずにっこり微笑んだ。
「あ〜 それから、もっちろん、カカシのプレゼントもちゃんと考えているからネ!」
「うわぁ〜何だろ・・・?」
「ヒ ・ ミ ・ ツ☆」
そう言って、四代目は、自分の口にあてた人差し指をカカシの小さな唇にちょこんとあてた。
「フフフ・・・ 楽しみしててネ!」
カカシはポッと頬を赤く染めて、
「じゃぁ、オレも先生に・・・」
「あ〜カカシはいいの!
だってクリスマスはサンタさんが良い子にしてた子ども達にプレゼントをあげる日なんだよ〜!
だから、カカシはまだ,貰う方でしょ!
それに、いいじゃん。今年は二人きりで、クリスマスを過ごせるんだから、
俺にとっては、それが、何よりのプレゼントだよ!」
「先生・・・」
先生と暮らし始めてから、クリスマスの朝は目覚めると枕元には、先生からのプレゼントは置いてあったが、先生は任務でいないことが多かった。
もちろん、心のこもったプレゼントは嬉しかったけど、今年は、目覚めた時に先生も一緒にいてくれるのかと思うと、カカシは胸がきゅんと熱くなった。
1時間程経って、やっと全ての札を書き終えた。
先生は分身を解いて一人に戻った。
「ふぅ〜 やっと終わった!ありがとう、カカシ!
俺だけでやったら、まだまだ時間かかってたな」
「こんな楽しいこと、もっとたくさんあっても全然苦じゃないよ!」
「カカシも書くの早くなったね! 今度、またストック分書く時に、カカシに頼んじゃおうかな〜!?」
四代目は、カカシの手を握って、拝むように胸の前に上げた。
「イブの夜は・・・
ねっ カ ・ カ ・ シ!」
そして、ほっぺにちゅっと触れるだけのキスをした。