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みかづき島の思い出   1
   

これ以上写輪眼を使ったらどうなるかってことくらいは分かってたけど、
オレが任務に就いてて、王子に万が一のことがあったら、とんでもないことになる。
もうこれが最後の1発と残りのチャクラを搾り出して、写輪眼で攻撃した。
 
どうやら、ナルトが頑張ってくれて、王子は助かったようだ。
でも、もう一歩も歩けない。 オレはチャクラ切れで倒れてしまった。
サクラが心配して顔を覗きこむ。
 
「先生、大丈夫?」 
「ダメダメ・・・ 写輪眼使い過ぎて・・・ 二週間は無理かも・・・」 
「ヤッタァ! じゃぁ 先生が回復するまでバカンス満喫ね!」
 
サクラが飛び上がって喜んでいる姿が微かに見えた。
綱手様もきっと許してくれるだろう。
何てったって王子を救って、国際問題にはならなかった訳だし。
オレもこの島でゆっくり休めると思うと嬉しくなって思わず頬が緩んだ。
 
先生との思い出がいっぱい詰まったこの島で・・・
 
 
 
あれは、オレが父を亡くして、先生と一緒に暮らすようになって、初めての夏のこと。
 
 
  
「カカシィ〜  ただいま〜!」
 
先生は、帰ってくるといきなりオレを抱き上げ、ぐるぐると回った。
 
「カカシ! ヤッタァ〜! 夏休みだよぉ〜!!! イエ〜ィ!」
 
先生はオレを降ろすと、今度はぎゅうっと抱きしめて、髪をぐしゃぐしゃと撫でた。
オレは何が何だか分からなかったが、先生がとても喜んでいることだけは理解できた。 
 
「ごめん、ごめん、びっくりさせちゃったね。
実はね、先生この間、とぉ〜ってもキツイ任務、頑張ってやったんだよ。
誰も嫌がってしないような大変な任務だったんだ。
だから、三代目がご褒美くれたの。
明日の任務はね、月の国の王様に火の国の大名の親書を届けることなんだけど、
普通の足で行って来ていいってさ!
意味分かる? 普通の忍の足なら、月の国までは丸二日はかかるんだよ。
でも先生なら、半日もあれば飛んで行けちゃうよ!
はい、カカシ計算してごらん」
「えっと・・・ 普通なら二日、往復四日かかる。
でも先生なら半日、往復で一日しかかからない。 ってことは、三日は・・・」
「そのとおり! 三日は夏休みってことだよ〜! 凄いでしょ!
もちろん、カカシも一緒の任務だからね!」
「えっ、オレもいいの?」
「あったり前じゃん! カカシにも重要な任務があるんだよ。
オレが親書を持つから、カカシはオレの荷物を半分持ってもらうからね。 
月の国はね、みかづき島っていう南の島でね、とっても綺麗な海があるんだよ!
それに、ちょうど国王の在位記念式典が行われて、大きなお祭りもあるらしいんだ。
海水浴の準備もしていかなくっちゃね!
そうそう、カカシ、ゆかた持ってたっけ?」
「浴衣?」
「そう、浴衣」
「浴衣って?」
 
カカシはきょとんとして小首を傾げた。
 
「ほら、夏祭りとか行く時に着る薄い着物だよ! 着せてもらったことない?」
 
カカシは、サクモが亡くなった時、荷物は何もいらないから処分して欲しいと言って、自分の箪笥から、洋服だけを、ダンボールに詰めて持ってきた。
貴重な本や巻物も多くあったので、それは自来也がいつかカカシも読むだろうと引き取って預かってくれている。
それ以外のものは、何も残さなかったのだ。
カカシは、そういえば、お祭りに行く時はこれを着なさいと変なものを着せられたなと思い出した。
 
「あぁ・・・ あれね・・・ 持って来たかな・・・
探してみるけど」
「もし、なかったらいいよ。 じゃぁ、水着はある?」
「見てくる」
 
カカシは、寝室にあるカカシ用の小さな箪笥の引き出しを開けて、中の洋服をかき回してみた。
しかし、それらしきものはなかった。
下着の入っているところの奥の方を探して、いかにもそれはパンツじゃないだろうというものを取り出して宛ててみた。
 
「これ・・・
もう小っちゃいかな〜?」
「どれどれ? カカシの水着、可愛い〜!  でも、もう着れそうにもないね」
 
先生も手に取ってみたが、どう見ても今のカカシには小さくなってしまったようだ。
 
「今日はもう買いに行く時間がないから、浴衣と水着は向こうで買おうね!
うわぁ〜 先生もカカシとお揃いのにしよっと! えへへ・・・」
 
先生は嬉しそうに笑って、カカシのほっぺをつんつんと突いた。
 
「さっ、準備! 準備! 早く仕度済ませて、早く寝ようね。
明日は、7時には出よう。 少しでも夏休みの時間が多く取れるようにね!」
 
それから、二人で、荷物を詰め始めた。
先生が、浮き輪は?とか帽子もビーサンもだの、あれもこれもと言うもんだから、
二人のリュックはパンパンに膨れ上がった。
 
「うわぁ・・・ 重そうだな・・・
カカシ大丈夫?」
「うん、このくらい平気、平気!
あっ、でも、飛雷神の術で飛んで行くなら、結局先生がオレも背負って行くんでしょ。
これ全部先生が・・・ 先生こそ大丈夫?」
「うわっ、そっか・・・ 忘れてた・・・ 
でも、もういいよ、詰めちゃったし。
カカシのためなら、ネッ! このくらい、何でもないよ〜ん! 
先生、頑張っちゃうから!」
 
先生は、そう言って、もう一度オレを高く抱き上げて、ぐるぐると回してくれた。
オレは、こんな瞬間がたまらなく嬉しかった。
そして、どんな夏休みになるのかと思うとワクワクして、まるで、明日遠足に行く子どもの様にその晩は中々寝付けなかった。

                                                                              2007/9/3

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