Sacred Pierce 1
「ん! 何も問題なかったみたいだね。お疲れ様!」
「お疲れ様でした!」
シカクとカカシとゲンマとアスマが声を揃えて挨拶をした。
今日の任務は、通常任務でBランクだったから、予定よりも早く終わったみたいだ。
もう、オレもこれで上がっちゃおう。
報告書に判を押し、後の雑務を火影付きの事務方に任せ、カカシと一緒に帰ろうとすると・・・
「先生、ゴメン、今日はちょっとアスマ達と寄って行くところあるから先に帰っててね。
夕飯の買い物はオレがしていくから大丈夫だから」 そう言って、カカシは申し訳なさそうな顔をして、口元で拝むように手を合わせた。
「いいよ〜 たまにはゆっくりしておいで。
オレが買い物していこうか?」
「ううん、平気! そんなに遅くはならないから。 でも今日はお鍋にしていい?」
「そうだね、それなら時間かからないしね。 チゲ鍋がいいな〜!」
「うん、分かった、じゃぁ行ってくるね〜」
カカシはひらりと手を振って、アスマとゲンマの方に駆けて行った。
一度上がると言ってしまったから、またデスクに戻る気にもなれず、シカクはさっさと消えちゃったし、かと言って、一人で真っ直ぐ部屋に帰る気にもなれず・・・
そういえば欲しい本があったなと何とか用事を作り出し、本屋に寄ってみることにした。
商店街を歩き出すと、街はもうすっかりクリスマスムード一色に変わっていた。
通りにはジングルベルの音楽が流れ、店先にはツリーが飾られ、綺麗なイルミネーションがキラキラ煌いていた。
「そっか、もう12月だもんな。 早いな〜 もうすぐクリスマスか・・・」
綺麗な街並みを見ては、今年はどうしようかなと思いながら、ぷらぷらと歩いていた。
そして、本屋の前に着いた時、ふと目線が向かいのお店に留まった。
「あれ? カカシ?」
ガラス張りのお店は中まで良く見えた。
思わず店を覗き込むと、そこにはカカシとゲンマとアスマの3人が片寄せあって、何かを見ている。
「やっぱそうだ、カカシ達だ。
えっ・・・ でも・・・ ここって・・・!?」 オレは、慌てて前の本屋に入り、立ち読みしているように本で顔を隠しながらカカシ達を見た。
そのお店は、木ノ葉でも一番人気のジュエリーショップだった。
広い店内には他にも数人の男性客がいたが、それぞれの人に女性の店員がピタリと付いている。
もしかしてこんな早い時期からもうクリスマスプレゼントを買っているのかな。
きっと間際になるとこのお店は物凄く混雑してゆっくり選べないからなのだろうか。
もちろん、カカシ達にも女性の店員が付き、楽しそうに話している。
三人でガラスケースを覗きながらあれこれと指差していたり。
カカシが笑いながら、アスマの肩をぐいっと押した。
オレはそんなカカシを見て何だかドキドキしてきた。
(何! 何! カカシったら、あんな楽しそうな顔しちゃって。
えぇっ? もしかして、オレへのプレゼント選んでくれてるの?
でも、この店って・・・ 違うよな・・・
それとも・・・ 誰か女の子に贈るの? ぎゃぁぁ〜 どうしよう・・・ )
オレとカカシは火影屋敷に一緒に住んでいて、そりゃあもうラブラブな関係なんだけど、まさかオレのプレゼントをこんなお店で選んでるとは思えなかったし。
カカシったら、ゲンマ達にオレの事、何て話してるんだろうかとか、何か相談してるのかな?とか。
それとも、やっぱオレのじゃなくて、誰かへのプレゼントなのかな。
あぁ・・・ ダメだ。 あれこれ色々考えてたら、頭に血が上って、心臓もバクバクしてきた。
楽しそうに笑っているカカシをオレはハラハラしながら見つめていた。
どれ位の時間が経ったのだろう。
本当はそんなに長い時間ではなかったのだろうけど、果てし無く長く感じられた。
どうやらやっと、プレゼントが決まったようだ。
店員が頭を下げ、選ばれた商品を手に持って店の奥へ入っていった。
しばらくすると、3人が店から出てきた。
オレは見つからないように、さらに本で顔を隠しながら片目だけでチラリと覗くと・・・
何と小さな紙袋を持っていたのはアスマだった。
(えぇぇぇっ!? アスマなの?
はぁぁ・・・ カカシじゃなかったのね・・・)
身体全身から力がすぅっと抜けてふにゃりとなった。
カカシは、「じゃあね〜」と手を振りながら、走って行ってしまった。
こうして、期待と不安で頭の中をぐるぐると回っていたドラマはあっけなく幕を閉じた。
それから、アスマとゲンマが遠くなるのを見届けてから、本屋を出た。
しかし、あのアスマがね〜って、何買ったのか物凄く気になって、ちょっと覗いてみようと、オレは思わずその店の扉を開けてしまった。
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2007/12/4