空中でちゅう!! 1
「カカシ、悪いけど今年の大晦日はさ、木ノ葉神社の四年に一度の夜勤の任務なんだよ。
カカシ、一人になっちゃうから先に自来也先生の家に行ってた方がいいよ」 木ノ葉隠れの里では、大晦日の木ノ葉神社の警備誘導任務を上忍達が1年毎交代で就くことになっている。
そして、大晦日の晩から元旦の朝までの夜勤と元旦の朝から夕方までの日勤も交代でするので、それぞれの任務が四年に一度回ってくるということになる。 もちろん、上忍でも未成年は夜勤の任務は免除されているので、カカシと一緒に任務に就くことはない。
先生とカカシが一緒に住むようになって大晦日の夜勤任務は初めてのことで、先生は年越しがカカシ一人では可哀想だと心配しているのだ。
「先生、いいよ、オレ一人でも大丈夫だから。 先生が夜勤から帰って一人じゃ寂しいでしょ!」 「本当に? 年越しの瞬間が一人だなんで、カカシの方こそ寂しいよ〜?」
「テレビでも見て、カウントダウンするから平気だよ」
「そぉ。 じゃぁ、留守番たのむね。
初詣は自来也先生の家に行く前に一緒に行こうね」
大晦日の晩、二人で年越し蕎麦を食べた。任務があるから先生はお酒も飲めない。
十時になり、もう任務に出なくてはならない時間だ。
「カカシ、お蕎麦おいしかったよ! そろそろ行ってくるね。
明日は、六時までだから、たぶん六時過ぎには帰れると思う。
自来也先生の家でご馳走食べるんだから朝はお雑煮だけでいいからね。
本当に何もいらないから」
「うん、分かった。 気をつけてね〜」
「じゃあぁ・・・ それではそれでは今年最後のキスを!」
先生はカカシをぎゅうっと抱き寄せて、可愛い唇に触れるだけの優しいキスをした。
「カカシ、今年もオレにたくさんの幸せをありがとうね!」
「オレも先生からいっぱいいっぱい幸せをもらったよ!
ありがとう、先生。 はい、寒いからこれ持って行ってね」
カカシは使い捨てカイロを先生のポッケに入れた。
にこりとウインクをして、先生はどろんと消えて行った。
それから、カカシは明日のお雑煮のお出しを取って準備をしたけど、それもあっという間に終わって、後はもう何もすることはなくなってしまった。
紅白をつけても、そんなに真剣に見るわけでもなく、ただ音を流しているだけだ。
時計を見ても、一人だと中々進まない。
まだ早いけどもう寝ちゃおうかなとも思った。
ふと窓から夜空を見上げると、澄み切った空に満天の星が輝いていた。
「あんなに星が綺麗に見えるってことは、相当気温が下がっているのかな?」
カカシは窓を開けて手を伸ばして出してみた。
「うわ〜 冷えてきたな・・・ 先生寒そう・・・
あぁ、でも先生程の上忍ともなればきっと優遇されて、寒くない社務所とかの任務に就いてるよな、きっと」 カカシはもう一度時計を見て溜め息をついた。
「あ〜あ・・・ やっぱ一人じゃ・・・」
任務に就いている先生のことを思い出し、誰もいない部屋で年を越すのがやっぱり何だか寂しくなってきてしまった。
「そうだ、その瞬間だけ先生の顔が見えるところに行って、そこで新年を迎えよう。
うん、ここで一人で迎えるよりはその方がずっといい」
カカシは、任務の邪魔をしてはいけないと思ったし、来たことが分かったら怒られるような気がしたから、遠くからそっと見れるだけでいいと思った。
そうと決めたら、箪笥からセーターを取り出し、ダウンを羽織り、マフラーと手袋と帽子を持って部屋を飛び出してしまった。
木ノ葉神社へは歩いても十五分位で着くが、カカシは走って行ったので五分で着いた。
すでに大勢の参拝客がぞろぞろと並んで歩いている。所々に忍服を着た上忍が立って誘導している。
「先生はどこかな・・・」
境内をゆっくり歩きながら、あちらこちらをぐるりと見回したが、先生の姿は見当たらなかった。
「やっぱ、中の任務なんだ。 呼び出したらダメだよな・・・
まぁ、家にいるより先生の近くにいるんだから。 あと十分か・・・ いいや、ここで新年を迎えようっと」
がっくりと肩を落として歩いていると、後ろから声を掛けられた。
「よう、カカシじゃねぇか」
振り返って見ると、シカクだった。
「こんばんは」
ぺこりと頭を下げる。
「ミナトのとこに来たのか?」
「えっ・・・ その・・・ 」
「アイツなら裏門の警備だぜ」
「裏門?」
「ほら、今、そこの細い道から、人が歩いて来ただろ。
そこを道なりに行って階段を下がると裏門だ」
「ありがとうございます!」
カカシは嬉しくなって思わず駆け出して行った。
「おいおい、その階段は暗いし、凄く急だからな! 気を付けて行けよ〜!」
階段を足早に駆け下りた。
所々木に提灯が付いているだけで、確かに暗い。
本当にこんなところ上がってくる人がいるんだろうかと疑問に思う程だった。
結構下ったつもりなのに、まだまだ着きそうにもない。
カカシは二段飛ばしで物凄いスピードで降りて行った。
「うわっ!」
足を踏み外し、五〜六段転げ落ちてしまった。
「いってぇ・・・」
お尻の土をパンパンと払い落とし、今度は慎重に一段ずつ降りて行った。
遥か下の方で、ちらりと金色に輝くものが見えた。
「先生だ!」
カカシは嬉しくなった。
やっとのことで、一番下まで着いた。
先生は、向こう側を向いていたから、気配を消してそっと近づき木の陰から先生を見ていた。
でも、先生にカカシの気配が分からないはずがない。
突然、先生が振り返った。
「カカシィ〜」
「あっ」
と、叫んだ瞬間にはもう力いっぱい抱きしめられていた。
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2008/1/4