空中でちゅう!! 完
「ごめんなさい、 先生・・・
オレ・・・ そっと遠くから先生を見て年を越そうと思って来たのに・・・」
「何で謝るの? オレ、すっご〜く嬉しいんだけど」
「だって・・・ 任務中なのに・・・」
「あはは〜 今日は大晦日だから特別ね。
オレもここに立ちながらずっとカカシの事思ってたよ。 今頃何してるかな〜って。
何のテレビ見てるかな、それとももう寝ちゃったかなとか。
そしたら、背中からカカシの気配がしてびっくりした」
「オレ・・・ 大丈夫だなんて言ったのに・・・
やっぱ一人じゃ寂しくなっちゃって。 バカみたいだよね」
「そんなことないよ! オレも一人で寂しかったから。
カカシの気持ちはよ〜く分かるよ!」
先生は、前後左右と辺りをぐるりと見渡した。
「カカシ、写輪眼で誰か来ないか周りを見て」
カカシはすっと写輪眼を出して、360度四方をぐるりと見回した。
「大丈夫。誰も来なさそうだよ」
先生は時計を見てにんまり笑った。
「カカシ、あと五分だよ。
ここでカカシと二人きりで新年を迎えられるよ〜! 嬉しいな。
でもよくここだってわかったね? 誰かに聞いたの?」
「シカクさんに教えてもらった。
でも、先生程の人がこんな誰も通りそうにもない所の担当なんてびっくりしたよ」 「本当は中の任務だったんだけどね。 ここの担当がオレよりも相当年上の人だったから申し訳なくって交代したんだ」 「先生は優しいね」
「まっ、戦闘に行く任務じゃないし、どこの担当でもそんなに変わらない。
あぁ、でも本当はシカクがいた境内の人が混雑する所が一番大変なんだけどね」
「先生寒くない?」
「カカシがくれたカイロがあるから大丈夫だよ、ほらね」
そう言って、先生はカカシの手を握りポッケに入れた。
「おっ、あと三分」
先生はカカシの頬をそっと撫でて、愛しげにカカシを見つめた。
「今年もカカシは頑張ったね。 本当に強くなったよ。
背も伸びたしね〜
それから、オレの面倒もよく見てくれました。ありがとう」
カカシも先生を見つめ微笑みを返した。
「先生・・・ 今年はいろんな事があったけど・・・
先生がいてくれたから・・・ 乗り越えることが出来たよ。
オレいっつも思うんだけど、もし一人だったら・・・てね。
落ち込んだまま、きっと悲惨な暮らしをしていると思う。
先生、ありがとう。 いつも甘えてばっかで情けないけど・・・
来年はもっと・・・ もっと・・・ 頑張ります」
先生はカカシを抱きしめた。
「それはオレも同じだよ・・・
オレだってカカシがいないと生きていけないし。
オレだってカカシに甘えてばっかじゃないか」
「先生・・・」
先生はもう一度時計を見た。
「うわ、カカシあと三十秒!」
「先生、本当にありがとうね〜!」
「こちらこそ、ありがとう、カカシ!
ねぇ、カウントダウンして、ちょうど0の時はジャンプするんだよ! 年越しの瞬間は空中でね、いい?」
「うん!」
「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1・0!」
抱き合ったままジャンプした瞬間、先生はカカシにちゅっとキスをした。
「おめでとう〜カカシ! 今年の初キッス! 空中でちゅうしてねずみ年が明けたね〜」 カカシはぷっと吹き出した。 背中がちょっと寒くなった。
「おめでとう、先生・・・
って、こんなところで・・・ 誰かに見られちゃったらどうすんのよ〜」
「だって、カカシの眼で見てもらったんだから大丈夫でしょ!?」
「もう・・・ 先生ったら・・・ 任務中なのに・・・」
「いいの、いいの、お正月だからね!」
「そんなの全然理由になってないでしょ」
そうは言ってもカカシも嬉しかったのだ。
一人で部屋にいないで思い切って来てよかったなと心から思った。
「さぁ、もうカカシは部屋に戻って寝なさい。 お正月早々風邪引いちゃったら大変だからね。 オレもカカシのお陰で身体が暖まったし!」
「うん、じゃぁ帰る。 美味しいお雑煮作って待ってるからね」
先生はもう一度カカシをぎゅっと抱きしめて、耳元で囁いた。
「来てくれて、ありがとう。 本当に嬉しかったよ。 気をつけて帰りなさい」
カカシはバイバイと手を振って階段を登り始めた。
先生はカカシのズボンに少し土が付いているのを見逃さなかった。
自分に会いに来るのにあの暗い階段を急いで下りて、転んだのだろうかと思うと胸が熱くなってきた。
「カカシィ〜 暗いからね〜 転ばないでね〜!」
「うん、大丈夫だよ〜!」
カカシは振り返って、笑って答えた。
えっ、もしかして転んだの見られてた?
そんなはずはない、先生は前を向いてたし。
先生には何でもお見通しなんだなと思うと何だか恥ずかしくなってきた。
翌朝、まだ元朝の初日が登る前に先生は部屋に戻ることが出来た。
すやすや眠るカカシの可愛い寝顔を見ながら、着替えをぱっぱと済ませた。
枕元にある目覚まし時計を見て、五時半にかけてあるアラームを解除した。
そして、カカシを起こさないようにそっと布団を捲って、カカシの隣にするりと入り込んだ。
(うわぁ、暖かい)
人通りはあんまりなかったから、大変な任務ではなかったものの、寒さだけが辛かった。
身体はすっかり冷え切っていた。 (カカシ・・・おやすみ・・・)
「ん・・・」
声は出さずに言ったのに、カカシは先生が帰って来たのが分かったようだ。
「せ・・・んせぇ・・・ 帰って来たの?」
「あぁ、ごめん、ごめん。 起こしちゃった。
いいよ、そのまま眠りな、オレも寝ちゃうからさ」
「あれ今何時? オレ目覚まし掛けたのに・・・
起きれなかったのかな・・・ 先生、朝ご飯はいいの?」
「交代の人が早く来てくれたから、五時に上がれたんだよ。
アラームは解除したから、ゆっくり寝よ。
そんなにお腹空いてないから朝ご飯はまだいいよ」
先生の冷たい足がカカシに足に触れ、カカシはびっくりした。
「先生! 足がこんなに冷たくって・・・ お風呂は入らなかったの?」
「もう面倒になっちゃてさ、 帰ってすぐに布団にもぐりこんだ。
いいよ〜 このままカカシ暖めてもらうからさ!」
そう言って、先生はカカシを腕の中に抱き寄せカカシの髪に顔を埋めた。
「あぁ・・・ 暖かい・・・ ほっかほっかになってきた。
やっぱオレにはカカシカイロが一番だな〜」
「せんせぇ・・・」
「さすがにさっきはね外だったから、一回しか出来なかったからさ。
カ・カ・シ・・・ 今年二回目のちゅうね・・・」 そう言いながら先生は
額に・・・
頬に・・・
耳朶に・・・
唇に・・・
何度も何度もカカシに優しいキスをした。
先生の手がカカシの太ももをそろりと撫で上げ、目指すべきところに向かってじりじりと近づいてくる。
「えっ・・・ 先生・・・?」
「だってさ、今晩は自来也先生の家に行くんだよ。
毎年いっぱい飲まされてさ・・・
たぶん泊まることになっちゃうと思うし・・・
ねっ! いいでしょ?
神社で来年はもっともっと頑張るって言ってくれたよね?」
「もう・・・ 先生ったら・・・」
いやそういう意味で言ったんじゃないけど・・・と言う言葉はぐっと飲み込んだ。
先生にいいでしょと聞かれてイヤと言えるはずもない。
カカシは頬をぽっと染め、こくりと小さく頷いた。
「今年初めての・・・
ひ・め・は・・・」
次の言葉を言おうとした先生の唇をカカシがそっと塞いだ。
「そんなこと・・・ 口に出して言わないでよ・・・」
恥らうカカシが愛しくて堪らない。
「カカシ〜 今年もいっぱいいっぱ〜い愛してあげるよ〜!」
窓から差し込む初日が二人を暖かく照らした。
こうして二人の甘い甘〜い一年がめでたく明けましたとさ。
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2008/1/8