直線上に配置

あのね先生   1
   

ここは・・・どこだろう?
 
 
おかしいな・・・
誰もいないし・・・
真っ暗で周りが全然見えないし・・・
チャクラはもう残っていないから、写輪眼は使えないし・・・
 
どうやら木ノ葉の里ではないみたいだ。
アイツに変な幻術でもかけられて、
どこかへ飛ばされてしまったのか?
 
でも、何かおかしい・・・
それにとても寒い・・・
 
辺りを見渡すと、
遥か前方にぼうっと微かな光が見える。
 
その光に向かってゆっくりと慎重に歩き出した。
何か足元がふわふわとして、気持ち悪い。
 
 
「うわ〜!綺麗!」
 
光だと思っていたものは、一面のお花畑だった。
色とりどりのお花が、甘い香りを漂わせている。
 
「どこだろ〜?ここ・・・」
 
お花畑をさらに歩いて行くと、今度は水の流れる音が聞こえてきた。
 
「川?」
 
音のする方へと進んで行くと、突然辺りがぱっと開けて、明るくなった。
目の前に結構川幅が広い大きな川が滔々と流れていた。
水面がきらきらと反射してとても綺麗だ。
 
 
その川の向こう岸に・・・
人影が見えた。
 
「誰かいる!」
 
オレは気配を消して、川のほとりに向かってそっと近づいて行った。
 
後ろ向きに一人の人が立っていた。
 
「!」
 
あの背中は・・・!
 
もしかして・・・?
 
オレの心臓の鼓動がバクバクと音が聞こえるくらい早くなっていく。
 
間違いない・・・
 
オレは、
今、自分がいる場所をやっと認識することが出来たのだ。
 
大声を出して叫びたいのに、
喉がからからで、
上手く言葉を発することが出来ない。
 
足が・・・
手が・・・
震えてきた・・・
 
早くあなたの名前を呼んで、
早くオレの名前を呼んでもらいたい。
 
呼吸を整えるために、
大きく息を吐いた。
 
そして、腹の底から、
命の底から、
搾り出すような声で、
愛しい名前を思いっきり呼んだ。
 
 
「先生・・・!」
 
先生がゆっくりと振り返って、
オレの方を見てくれた。
 
「・・・?」
 
オレのことは見えないの?
 
もう一度、大きな大きな声で呼んでみる。
 
 
「先生ぇぇぇぇ!!!」
 
「ん・・・?カカシ?」
 
声は聞こえないけど、口元が確かにそう動いたのが見えた。
 
あぁ、先生だ。
夢じゃない、
本当の先生だ。
懐かしい顔に胸が締め付けられる。
 
「・・・オレも・・・
今からそっちへ行くよ」
 
オレは無我夢中で駆け出して、川に足を入れようとしたまさにその時・・・
一瞬にして、先生がオレの目の前に移動してきた。
 
「カカシィ〜!」
「先生、こんなところにいたんだ・・・
先生に・・・やっと会えた・・・」
「カカシ、何しに来たんだよ?」
「何しにって・・・先生に会いたくて・・・会いたくて・・・
早くここに来たかった・・・」
「もう、カカシったら、どうやって来ちゃったんだよ!
お前の話を聞かせてくれない?」
「すごく長くなるから
ゆっくり話したいんだけど・・・」
「ん!・・・いいよ。
ここに座りなさい」
 
オレは先生の隣に腰を降ろした。
 

「あのね先生」

 

                                                           2008/12/7

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