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White Christmas of the snowy country!    1
   

それは、クリスマスイブの前の日のこと。
扉が開いた瞬間に先生の様子がいつもと違うことにカカシは気づいた。

「先生、おかえりなさい」

いつもなら満面の笑みでガバッとカカシを抱きしめて、ブチュ〜ッとキスをしてくれるのに、
先生は何も言わずに、カカシの前を通り過ぎてリビングの椅子に腰掛けた。

「はあぁぁぁ・・・」
と、大きく長い溜息を吐いて、がっくりと肩を落とした。
「先生・・・?どうしたの?どっか具合でも悪いの?」
「ひどいよ・・・ひどいよ・・・カカシ・・・」

今にも泣き出しそうなほど悲しげな顔で先生がカカシを見つめた。

(先生のあんな悲しそうな顔は見たことがない・・・
 どうしよう・・・一体何があったんだろう?)

カカシはなんて言葉をかけてよいのかわからずに、只先生の隣に座ってそっと先生の掌に自分の掌を重ねた。

「信じられない・・・こんなこと・・・」
「先生・・・大丈夫・・・?」

先生はカカシの掌をぎゅっと握り返して、また深くて長い溜息を吐いた。

「カカシ・・・ごめん・・・」

先生の深刻な顔を見たら、よっぼど大変なことがあったのだろうと、カカシは心配になってきた。

「だってさ、だってさ・・・
折角カカシとロマンティックな二人だけのクリスマスイブを過ごそうと思ってたのに。
よりによって、イブの晩に任務だなんて!ひどいよ〜!有り得な〜い!」

(え・・・!? そんなことで・・・)

とは、決して声には出せないカカシだったけれど、心配していたよりも、重大なことでもなさそうだったので、少しほっとした。

「先生・・・仕方ないでしょ。任務なんだからさ」
「仕方ないじゃ済まないよ!オレ、すっご〜く楽しみにしていたのに!
もぉ〜あのクソオヤジ!!」

ぷんぷんと頬を膨らませ、怒っている先生は駄々を捏ねる子どもみたいだった。

「きっと、先生にしか出来ない任務だったんでしょ。
それに、もしも、先生が引き受けなくたって、誰かが行かなくっちゃならないんだから」
「雪の国なんだよ!すご〜く遠いんだよ!
あそこまでのルートには、オレの飛雷神の術式札が貼ってあるところはほとんどないから、さすがのオレでも、一日がかりだよ。
どんなに走ってもイブの晩中には、帰って来られないよ・・・」
「何もイブの晩だけ、特別に何かしなくちゃならないって訳でもないんだからさ。
先生が帰って来てから、一日遅れでも、楽しくやればいいじゃない。
まだ25日だってクリスマスでしょ?ね、先生!」
何とかして機嫌を直してもらおうと、カカシも笑顔で必死に先生を慰めた。

「カカシ・・・」

実は、先生は、今年のカカシの誕生日に、
「二人を休ませてくれたら、今後、いつでも、どこへでも、どんな厳しい任務でも必ず受けるから、一生のお願い!」と、三代目に土下座までして二人の有給休暇のお願いをしたのだ。
そして、三代目もかなり無理をして、任務の遣り繰りをし、休暇を許可してくれた。
そのお陰で、二人で甘〜い一日を過ごして誕生日のお祝いができた。
だから、三代目には大きな借りがある。
もちろん、カカシには内緒だったけれど。

雪の国への任務は、火の国の親書を届けるだけの簡単なBランクのものだが、三代目も、イブの日に、あんな遠くて雪深いところへ行かせることは、本当に心苦しい思いでいっぱいだった。
誰に依頼しようかと迷っていたところに、先生の顔がパッと浮かんだのだ。

「あ〜あ・・・がっかりだよ・・・オレとカカシのラブラブクリスマスパーティの準備は万端だったのにな・・・」

(ラブラブって・・・?準備万端って・・・?先生・・・いったい何を・・・)

カカシはこれ以上は聞かない方がいいかもと思って、ミナトから視線をそらした。

「え〜?カカシ、聞いてくれないの?カカシの作ってくれたご馳走と、ケーキを食べてさ!
それからもちろん、カカシを食べてさ〜!あ〜んなことや、こ〜んなことして!
恋人たちのロマンティックなイブの夜は熱く・・・」

カカシは顔を真っ赤にして、
「先生!」と、言って、先生の口をこれ以上言わせないように両手で押さえ込んだ。

「ふわ・・・かかひ・・・」
「もう〜先生ったら、何企んでいるんだよ!」

先生はカカシの手を取り除き、カカシの頬を優しく包み込んだ。

「だ〜か〜ら、一年に一度のクリスマスイブなんだからね。そりゃあもう特別に!
わかる?二人だけのス・ぺ・シャ・ル・ナ・イ・ト!!!」

「わわわ〜もう、いいよ!」
「まっ、いっか。カカシの言う通りに、帰って来てから、一日遅れで盛大にやろうね〜!」

先生はさっきまでの落ち込みが嘘のように、何か吹っ切れたような、晴れやかな顔をしている。
楽観主義者の先生は、通り名「黄色い閃光」のごとく、気持ちの切り替えも素早い。
何やら良いことを思いついたようで、にんまりと笑ってカカシを見つめた。

「じゃぁ、今晩はイブイブてことで、イブの晩に、寒くて遠いところまで任務に行かなくっちゃならない可哀想なオレの身も心も暖めてくれるかな〜?
ねぇ、カカシ!」

そう言って、先生は、カカシの可愛い唇にちゅっちゅっちゅっとキスをした。

「えええぇぇぇっ・・・ちょっとぉぉぉ〜」

カカシの返事を聞く間もなく、先生はガバッとカカシを抱き上げて、瞬く間にベッドに潜り込んだ。

                                                           2008/12/24

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