White Christmas of the snowy country! 3
「カカシ!」
先生は思わず、大声をあげた。 カカシは、まだ頭を上げられないでいる。 「やはりお知り合いの方でしたか。どうぞ頭をあげてください」 銀色の頭をゆっくりと上げて、カカシは緊張した面持ちで大名の顔を見た。 「申し訳ありませんでした。入国許可証がいるとは知らずに参りました・・・」 先生は席を立ち、カカシの隣に移動し、大名に頭を下げた。 「この者は私の弟子、はたけカカシと申します。決して怪しいものではありません。 えっと、おそらく・・・」 先生は、何か上手い言い訳をしなくてはと、必死に考えてみたものの、焦って、適当な言葉がみつからない。 「あっ・・・そういえば・・・えっと・・・その・・・ 私が忘れ物を・・・した・・・のかも・・・?」 「はっはっはっ!もう、よろしいじゃないですか。カカシ君はどうしても、あなたにお渡ししなくてはならないものがあったのでしょう。ね?カカシ君」 「そっ・・・それは・・・あの・・・ はっ、はい、そうです!」 先生はびっくりしてカカシの顔を見つめた。 「え、カカシ、そうなの?」 「今日はクリスマスイブですからね!カカシ君があなたにプレゼントを差し上げたいのでしょう! ということで、カカシ君も是非ご一緒に、我が家のパーティにいらしていただけますよね? 客間はたくさんありますので、どうぞ、そのまま今夜はこちらにお泊りください。 その方が、あなたもお酒を安心てお召し上がりになられますからね」 まさか泊まっていけと言われるとは思わなかったが、さすがに、もうこうなっては返って断るのも失礼かと思い、先生も快く返事をした。 「ありがとうございます。それではお言葉に甘えてお世話になります」 先生とカカシは深々とお辞儀をして、それから、二人で目を合わせて微笑み合った。 風花大名主催のクリスマスパーティは、和やかに開催された。 大名の人柄なのだろう。仕えている従者たちも、皆笑顔で、本当にパーティを楽しんでいる。 小雪姫のまわりにはいつも大勢の人たちがいて、にぎやかな笑い声が絶えなかった。 風花大名に呼ばれて、先生とカカシも小雪姫と一緒に遊んだ。 言葉を教えるそばから、新しい言葉をどんどん覚えていく可愛いお姫様は、小さいお口で一生懸命に、 「しぇんしぇいとかかち〜」 と、言っては先生の後をおっかけまわしていた。 もちろん、食べきれないほどの豪華なお料理も次から次へと運ばれてきて、先生はほくほく顔で、食べまくっていた。 最後に、風花大名から一人一人にプレゼントが渡された。 先生は遠慮したが、雪の国にいらした記念に是非受け取ってもらいたいと強く言われて、 先生とカカシもありがたくプレゼントをいただいた。 こうして、雪の国のクリスマスパーティは、先生とカカシにとって、かけがえのない思い出となった。 大名に丁重に挨拶をして、二人は案内された客間で休むことになった。 二人で、大きなベッドにボスンと腰を沈めた。 「あ〜楽しかったね。お料理もすご〜く美味しかったし! それにしても、カカシったら!びっくりしたよ〜! どうして、黙ってついて来たんだよ?」 先生は、コラっというような顔をして、カカシのほっぺをつんつんと突いた。 「先生、本当にごめんなさい・・・だって、先生、あんなにがっかりしてたでしょ。 だから、先生が任務終わるころに突然会いに行って、驚かせようと・・・ オレ・・・先生に喜んでもらおうと思って、24日と25日に有休を取ったんだよ。 ご馳走の準備に時間がかかりそうだったし・・・それに・・・ 次の日も・・・いろいろと・・・大変かな・・・って・・・」 そう言うと、カカシはぽっと頬を赤く染め、先生の肩にそっと寄り添った。 先生は、カカシの思いが嬉しくてたまらない。 本当は、入国許可証も持たずに、他国へ入国しようなんて、決してしてはいけないことで、もちろん、忍として入るなら、警備隊に見つからずにそっと侵入すればよかったものを、捕らえられてしまうなんて、大問題なのだ。 雪の国の大名の人柄が良かったから、お咎めにはならなかったものの、もしも他国だったら外交問題に発展しかねないのだから。 先生はカカシも、十分自分の失態は反省しているだろうから、これ以上はもう何も言わないで、後は、里に帰ってから、他国への侵入の仕方はしっかり教えてあげようと思った。 そして、今晩は、折角のカカシの思いに応えて、二人で雪の国のクリスマスを満喫しようと、心に決めたのだ。 「ありがとうね。カカシ。オレ、嬉しくって、嬉しくって、雪の中飛び回りたい気分だよ!」 先生がそう言って窓の方を見た。 「わ〜!カカシ!雪が降ってきたよ!」 先生は立ち上がり、窓際まで行って、外を見渡した。 「カカシ、こっちにおいで!すごい綺麗だよ〜!」 窓際にカカシを手招きして呼んだ。 窓の外は一面の銀世界が広がっている。 ライトアップされた木がキラキラと光って幻想的だ。 その周りにはかわいらしい小さなトナカイや星やハートのイルミネーションが、点々と置かれて優しい光を放っていた。 先生はカカシを後ろからすっぽりと腕の中に抱き込んだ。 「カカシ、ありがとうね・・・まさかカカシがオレを追ってこんなに遠くまで来てくれるなんて思わなかったよ・・・」 「だって、クリスマスは先生と二人で過ごしたかったし・・・ 本当は、クリスマスプレゼントに、こっちで食材買って、簡単なケーキを作るつもりだったんだけど・・・作れなくってごめんね。帰ったらちゃんと作るからね」 カカシが振り返って、先生の顔を見上げ、にこりと微笑んた。 「ん!じゃあ、ケーキは大晦日に作ってね!」 「えっ?年越し蕎麦の代わりにケーキ?」 「お蕎麦ももちろん!ケーキと両方食べるんだよ!」 (その組合せはちょっとどうかと・・・) とは決して言わずに、カカシはこくりと頷いた。 「先生、先生と一緒にホワイトクリスマスを過ごせるなんて・・・ とっても嬉しいよ・・・」 「オレも大感激!あ、三代目に感謝しなくっちゃあね。こんなステキな任務を命じてくれて! 来年もクリスマスにこの任務があるといいのにね〜 そうだ!三代目に今から予約しておこうっと。 寒くて遠くて一人じゃ絶対無理だから、カカシと二人行かせてってお願いしよう」 「先生・・・バレバレだと思うけど?」 「ま、任務がなくても、来年のクリスマスは休暇取って来ようよ〜」 「先生、そういえば小雪姫にすごく懐かれていたし、風花大名も何時でも遊びに来て下さいっておっしゃってたしね」 「あ、そうだ、プレゼント開けてみようか!」 そう言って、先生が大名からいただいたプレゼントの包みを解いた。 「わ〜暖かそう!」 プレゼントは、ベージュのマフラーだった。 「オレのも、同じマフラーだよ!」 先生がカカシにマフラーを巻いてあげた。 「とってもあったかいよ、先生」 カカシも先生に巻いてあげた。 「本当だね、カカシもよく似合うよ!わ〜い!お揃いで嬉しいな〜!」 「先生、木ノ葉では、絶対に一緒にしないからね・・・オレ・・・恥ずかしい・・・」 「もう、カカシったら、いいじゃん!そんなの気にすることないでしょ?」 「先生は気にしなくても・・・オレは・・・はぁっ・・・ふぅっ・・・」 先生は、それ以上カカシが何も言えないように、唇をキスで塞いだ。 「じゃぁ、カカシからのプレゼントをいただきま〜す!」 先生はにっこりと笑って、カカシをぱっとお姫様抱っこでベッドまで運んだ。 「先生・・・」 「カカシ・・・二人だけのクリスマスパーティをしようね」 そう耳元で優しく囁いて、カカシの身体をゆっくりと横たえた。 「メリークリスマス!カカシ」 カカシも頬をほんのり桃色に染めて、先生の首に手を回した。 「メリークリスマス!先生・・・」 外は凍えるような深い深い雪の国。 でも、先生とカカシの二人の国は、ぽっかぽっかに暖かかった。 Merry Christmas! |
2009/1/14