古の昔より、この世界を創り出した神々によって、人間と魔物はそれぞれの定められた大地で
互いが決してそれを侵すことなく生存していた。
しかし、何時の頃からか、欲にまみれた人間はその大地から少しずつ勢力を広げ、自然を破壊し、魔物が暮らしていた大地にまで侵食を始めてしまった。
すべてのバランスが崩れ、今までになかった人間と魔物が争う時代が訪れたのだ。
鬱蒼とした木ノ葉の森を奥深く進むと、急に目の前がぱっと開かれ、そこには、湖底までも透
き通って見える程の美しい湖があった。
そして、その湖のほとりに大きな城壁に囲まれて、ひっそりと美しい古城が佇む。
その森は、迷いの森とも呼ばれていて、複雑な道が絡み合うように幾重にも連なっている。
さらに、外部の人間や魔物が侵入しようとしても、決して入ることが出来ないように、幻術がかけられていて、侵入者は同じところをぐるぐる回り、道に迷わされてしまう。
たとえ、その幻術を破り城近くまで入ることが出来たとしても、城壁の四方は強力な魔法障壁によって結界をかけているので、城壁の中へ侵入することは不可能だった。
まさに、魔法と自然の力で鉄壁の守護を誇る天然の要塞とも言える木ノ葉城。
大きな力に護られて、城壁の中では人々が穏やかに暮らしていた。
木ノ葉国は八十年程前に火の国から独立した千手一族の長柱間が起した小国だ。
柱間には子どもが無く、王位は弟の扉間に引き継がれた。
しかし、その二代目も子宝に恵まれず、後継者となる血縁の者もいなかったので、王位は二代目の遺言により、木ノ葉国軍の将軍サクモに譲られ、今ではサクモが三代目国王となっている。
サクモの妻は五年前に重い病で亡くなっていたが、カカシという名の王子と共に慎ましく過ごしていた。
将軍だったサクモは温厚な人柄だったので、人望も厚く、国王に就いてからも、初代、二代の築いた木ノ葉国を継承し、さらに、国民のためになる政治を貫いた。
魔物の襲撃からは、木ノ葉国軍が民を守り、人々は平和な暮らしをしていたのだ。
父の愛情を一身に受け、すくすくと成長した王子カカシは、この秋、十四歳になる。
もうすぐ、本格的な戦闘に出るようになるのだ。
今までよりもさらに自ら進んで、勉学にも、もちろん、武術にも魔法の修行にも励んでいた。
我が父サクモを心から尊敬し、いつかは父のような誰からも慕われるような国王になり、国のため、人々にために尽くしたいと心から願うカカシだった。
そのためには今自分が為すべきこと、果たすべきことを常に頭の中で考え行動をおこすように心がけている。
サクモは将軍時代に若いながらも自分の片腕となって戦ってくれたミナトにカカシの教育を任せていた。
ミナトは、武術もさることながら、魔道士としては、木ノ葉国、いや、大陸中でも最強と言われる程の実力の持ち主だ。カカシの教育係りとしては、ミナト以上の人間はいなかった。
ミナトはカカシに時期国王として将軍学を徹底的に教え、カカシもミナトから多くのことを学び、素直に成長していった。