「はたけカカシ、只今、戻りました」
ノックして執務室に入ると、四代目が満面の笑みで迎えてくれた。
「カカシ!おかえり〜 早かったね。品物、もう届いてるよ。
さすが、カカシだね、依頼通りの物ばかりだったよ」
任務帰りにいつも行われる怪我はないかとのボディチェックはさすがに今日はされなかったものの、頭を撫でられたカカシは、まるで初めてのお使いから帰った子どものような気分になった。
「本当に大丈夫でしたか? 最初に年齢やどういう方からの依頼なのか、きちんと確認しておくべきでした」
「あ、それは、問題ないよ。カカシが選んだものなら、何でも良いって言ってたから!」
「オレのことを知っている人なんですか?」
「そう、カカシご指名の依頼だったからね」
「それなら、最初からそう言ってくれればいいのに」
「え〜? カカシはただの買い物だと思って、適当に選ぶようなことしないでしょ?
任務なんだから、カカシは真剣に選ぶと思ってたよ」
「それは、そうだけど・・・」
「さ、それはもういいからさ。まだ、これを届ける任務が残っているんだよ。早く行かなくっちゃね」
「わかりました。すぐに出発します。届け先は?」
「う〜ん、それが、ちょっと遠いんだよね。でも、オレも行くから大丈夫だよ」
「え? 先生が直々に届けるんですか?」
火影が直接届けるなんて、有り得ないことだ。依頼者は火の国の相当身分の高い人なのだろうか。
しかし、そんな人が自分を指名するはずはないと、心当たりのないカカシは妙な気分になった。
「極秘の場所だからね。誰にも知られちゃいけないんだ」
「はい、わかりました。何か訳ありなんですね」
「う〜ん、訳ありって、何か寂しい響きだねえ。そんなんじゃないんだけどな。
実は、今開発中の新しい封印術がね、もうすぐ完成しそうなんだ。
最終調整には、繊細なチャクラコントロールが必要になる。
ここじゃちょっとできないんだよね。あちこち探したら、木ノ葉の森の奥に、ちょうどいいところがあったんだよ。そこに篭ってやるつもりなんだけどさ、一人じゃ寂しいでしょ?
それで、カカシについて来てもらおうと思って! あ、これは一応暗部の護衛任務だからね」
「え? じゃあ、届け先って先生の・・・? 研究所か何か?」
「ま、そんなところ。今度の封印術は九尾に関わる術だから極秘中の極秘なんだよ。絶対に外に漏れることは許されないんだ。
で、完成したら、その後は、そのままそこでのんびり休暇を取るから」
「きっ、休暇ああーー???」
「ん! オレもカカシもちょっと働きすぎたからね。ちゃんと休みを取らないと。
あ、心配しないで、三代目の許可は取ってあるから」
カカシは何が何だか全く理解出来なかった。
「えっと、そんな大事なところにオレがいたら・・・その・・・かえって邪魔になるんじゃ・・・・」
「何言ってんの! カカシ! カカシがいることで、早く術を完成させて、カカシとの〜んびりした〜いって、思うでしょ?
オレのモチベーションがもの凄〜くアップする訳。だから、カカシがいないとダメなの!」
「先生・・・」
カカシは頬を赤くして俯いてしまった。
四代目の日頃の行動を考えると、その後の事は、お約束通りの展開になることは間違いない。
「頑張ったご褒美頂戴〜♪」とか何とか言って、好き放題にされてしまうのだろう。
四代目はカカシも同じことを考えていることがわかって思わず笑みを零し、カカシにそっと近寄り、耳元で囁いた。
「新術が完成したら、二人だけの隠れ家で、二人だけの秘密の修行をしようか? ねぇ、カ・カ・シ?」
さらに、カカシは顔を真っ赤にして、ぷいっと横を向いてしまった。
「護衛任務はきちんとこなします。四代目はお疲れのようだから、術が完成したら、身体もきちんと休めてください。
オレは・・・四代目がゆっくり休めるように、その間も守って・・・」
「カカシったら、そんな冷たいこと言わないでよ〜 本当は嬉しいくせに、素直じゃないなあ」
四代目はくすくすと笑って、カカシの唇を塞いだ。