「ほいひいい〜!」
御馳走をいっぱい詰め込んで、もぐもぐと口を動かしながら話している四代目を見て、カカシは吹き出しそうになる。
「先生、そんなに慌てて食べなくても、誰も取りやしませんから」
「らって、ほいひいんらもん」
「もう〜先生ったら、口に入れたまましゃべらないでください」
ごくりと飲み込んで、四代目はふうと息を吐いた。
「あ〜幸せだ。新術も完成したし、こんなにたくさんの御馳走で、こうして誕生日を祝ってもらってさ。
オレ、今日の日のこと、一生忘れないよ。カカシ」
四代目は穏やかな笑みを浮かべてから、また、御馳走を物すごい勢いでぱくぱくと食べ始めた。
新術の開発に、ずっと細かい神経を使い続け、さらに、体力もチャクラも使い果たして、疲労困憊なのだろう。カカシは少し心配になった。
「先生、大丈夫?」
「何が?」
「だって、大変だったんでしょう?」
「ま、そりゃ、今までにない新しい術の開発だったし。普段、使わない神経をちょっと使ったからね。
でも、カ・・・いや、全部里のためと思えば、どんな苦労も吹っ飛んじゃうよ!
それに、カカシが傍にいてくれたからさ、安心してできたんだよ。
万が一、オレが倒れても、カカシが助けてくれるしね」
「そんな!先生、万が一なんて、言わないでよ!」
「カカシったら、本当に心配症だねぇ。オレが倒れるって、お腹が空き過ぎてってことだよ。
ん!このオムライス最高だよ!でも、カカシは何でも上手なのに、絵だけはね・・・これ全然似てないよ〜」
そう言って笑いながら、四代目はカカシの作った旗を大事に胸ポケットにしまった。
「ごめんなさい。オレだって下手だってわかってるけどさ・・・何もないよりいいかなと思って・・・」
「誕生日のプレゼントはこれでいいよ。ありがとう、カカシ!」
「先生、ちゃんとプレゼントはあるんだ。あ・・・どうしよう、後であげようかと思ったんだけど・・・
今の方がいいかな?」
「うわ〜い!本当に?嬉しいなぁ〜う〜ん、じゃぁ、お楽しみはお楽しみの時まで取っておこうっかな」
意味ありげに笑う四代目の言わんとすることは、カカシにもすぐにわかった。
カカシはぽっと頬を染めて、「ん、じゃぁ、後でね」と言って恥ずかしそうに下を向いてしまった。
それから、カカシの御馳走を綺麗に平らげて、お楽しみの時を迎えるために、二人して後片付けと入浴をささっと済ませた。
「カカシ、おいで」
四代目はカカシが入浴中に布団の用意をしておいた。
「見てー!カカシが選んでくれた布団カバー、黄色で可愛いね!」
「だって、男か女かわからなかったんだもの、とりあえず、黄色なら無難かなと思って・・・」
湯上りでほんのりと染まったカカシの頬がさらに紅く色づいた。
手招きされて、一歩ずつゆっくりと四代目の前に歩み寄る。
「新しい食器や電化製品、新しいお布団で、まるで新婚さんみたいだね、オレ達」
「もう、先生ったら・・・」
四代目の腕の中にすっぽりと収まったカカシは、恥ずかしくて顔をあげられなかった。
「カカシに選んでもらって、自分で自分にプレゼントをいっぱい買っちゃったんだよ。中々いい考えだよね?」
「先生にはちゃんとオレからあげるのに・・・」
「いいじゃん、プレゼントはたくさんあった方が嬉しいし」
「自分でお金出して買ったなら、プレゼントって言わないでしょ?」
「でも選んだのはカカシだもん」
「あ、先生、忘れないうちに、先に渡しておくね。
はい、これがオレからのプレゼントだよ」
カカシはポーチに隠して持ってきた包みを四代目に渡した。
「ありがとう!何だろう?楽しみ〜」
四代目が黄色いリボンで綺麗にラッッピングされた箱を開けると・・・・
「ん?Tシャツかな?」
白いTシャツだったが、無地だったので、外に着て行くものと言うよりは下着っぽかった。
広げたTシャツを身体に宛てて、四代目は不思議そうに顔を傾げた。
「先生、それ、今流行りの新素材の肌着なんだよ。
入荷してもすぐに売り切れちゃうから、買うのに苦労したんだ。
今も、入荷待ちで手に入らないんだって」
「へぇ、こんなのが流行ってるんだ?」
「うん、薄いのに凄く温かいから、若い人からお年寄りまで大人気なんだよ。
オレもお揃いで買っちゃった」
カカシは照れながら、パジャマの裾をちょっと捲って、Tシャツを見せた。
「カカシとお揃いーーー!わーい!嬉しいな!」
「一度洗ってきたから、すぐに着れるよ」
「さすが、カカシだね」
四代目はにこにこ顔で、パジャマを脱いで、カカシからのプレゼントのTシャツを身に付けた。
「うん、するするして肌触りもいいし、着易そうだね」
「先生は真冬でも薄着だからさ、風邪ひかないようにって思って。これね、着てるとぽかぽか暖かくなってくるんだよ」
「ありがとうね、カカシ。でも、今は・・・」
四代目は、カカシをぎゅっと力強く抱き寄せて、耳元で囁いた。
「これから、いっぱい汗かくんだから・・・今晩は必要ないね。
カカシ、脱いじゃおう!」
「ちょっ、先生・・・」
あっと言う間に、パジャマごとTシャツを剥ぎ取られてしまった。
「カカシが温めてくれるんでしょ?」
「え・・・うわ・・・せんせぇ・・・」
四代目ははさっとカカシを抱き上げて、黄色いカバーのかかった布団にそっと横たえた。
「カカシをもっとちょうーだいね!」
「こんなプレゼントでいいの?」
「カカシの思いの詰まったTシャツも嬉しかったけど、オレは欲張りだからね。
もっと、もっと、カカシが欲しいんだよ」
カカシは目を閉じて、こくんと小さく頷いた。
「先生、お誕生日おめでとう」
「ありがとう、カカシ」