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Carriage of pumpkin    1

   

 
「ねぇ、バッシュ小父様、来週のラーサー様のパーティにバルフレアさんも、もちろん来てくださいますよね〜?」
「はぁ・・・それが、その・・・」
「バッシュさんが来いって言ったら、どんなお仕事だって何もかもぶん投げて、すっ飛んで来てくださるんでしょ?バルフレアさ ん て !!」

小首を傾げてにっこりと笑うパンネロに、何て答えたらよいのか、バッシュは戸惑っていた。

いったい、いつ誰がそんなこと言ったのだろうか?
まさか、バルフレア本人が言ったとは到底思えないし。
パンネロにも、恥ずかしくって今更聞けやしない。
本当にそうだとしたら、このうえなく幸せなんだんだけど。
実際は・・・

昨日から、メールを何通も送っているというのに、未だに一通の返信さえこないのだから。
仕事に夢中になっている時のバルフレアは、俺のことなんか眼中にないのだ。
悲しいけれどそれが現実。

「でね、小父様、バルフレアさんの服のサイズを教えてくださる?
きっとお忙しいでしょうから、服はこちらで用意させていただきますって、ラーサー様がおっしゃってるの」

ラーサー様の主催されるパーティに、私とバルフレアも招待されたのだが、
しまった、ドレスコードがあったのか?
招待状は最後までちゃんと読んだつもりだったのに。

「サ、サイズ?」
「ご存知ですよね〜?バルフレアさんのことなら 何 で も !」

パンネロの弾けるような笑顔が眩しい。
本当に素直な良い娘だと思う。
私が、帝国でジャッジとしての任に就くようになってから、帝国の細かい慣習に慣れずに手間取っていた時に、偶々、遊びに来ていたパンネロが、「私がお手伝いしましょうか?」と、申し出てくれたのだ。
もちろん、ラーサー様からも、優秀な専属スタッフをつけてもらってはいたのだが、
気ばかり使って、ついつい、一人で何でもやってしまうので、完璧にこなしているようでも、
些細なミスを犯してしまうこともあったのだ。
パンネロは実に聡明な子で、何より気配りが出来るという点では、私よりもはるかに上だろう。
ヴァンには頭を下げて、私の執務が軌道に乗るまでという約束で、了承してもらったのだ。
すぐに、スタッフとも打ち解け、何もかもがスムーズに流れるようになった。
パンネロの笑顔の力は実に大きい。
彼女が小首をちょこんと傾げ、笑って、「ね〜」と言うと、大抵の男共は、魔法をかけられたように、彼女の言いなりになってしまうのだ。
ラーサー様とも実に仲が良く、あの二人が組むと、何もかもが二人の思い通りに進むから不思議だ。
そのうち、ラーサー様と・・・
なんてことも、頭の隅をかすめなくもないけど、
いやいや、それを言ったら、ヴァンが可愛そうだな。
ラーサー様とパンネロは、どちらかというと、姉弟のような仲のよさなのだから、心配はしなくてもいいだろう。

「えっと・・・」

サイズと言われてもな・・・

正直言って、バルフレアに服をプレゼントしたことはないのだ。
センスの良い彼に似合うものを選ぶなんて、勇気はなかったし。
その・・・
一度だけ、指輪なら贈ったことがあるので、指のサイズだけなら知っているんだけどな・・・

パンネロが、きらきらと瞳を輝かせて私を見ている。
汗がじわりと背中を流れた。

「小父様?まさか、知らないなんてことはないですよね?」
「あ、いや、その・・・
彼は私より身長は3cmほど高いのだが、ウエストはかなり細い。
足も私より・・・かなり長いな・・・」
「もう〜かなり細いとか、かなり長いとかじゃなくって!
ちゃんと、何cmってわかりませんか?」
「こ、このくらい・・・」

私は思わず、両手で輪を作って、このくらいの大きさだと見せてしまった。
パンネロも、もちろん、私達の関係は知っていたので、今更恥ずかしがることもないのだが・・・
頭にカーっと血が上って、顔が熱くなってきたのが、自分でもわかった。

パンネロは、私の肩をバチンと思いっきり叩いて、
「やあだぁ〜バッシュ小父様ったらあ〜
そんなに細かったら、私より細いじゃありませんかあ〜」
と、くすくすと笑った。

「そ、そっかな・・・でも、本当にこのくらいなんだが」
「とにかく、今日中に、バルフレアさんの全身のサイズ、聞いておいてくださいよ!
お願いしますね。間に合わなくなっちゃうと大変ですからね!」
「わかった。必ず、確認して、後でメールで送るよ」
「私、他にも色々と準備があるから、ラーサー様のところに行ってますね〜!
じゃあ、失礼します」

パンネロは、頭をペコリと下げて、執務室を出て行った。

扉がパタンと閉まると、カーテンがはらりと揺れた。
爽やかな風と共に、パンネロは去って行った。
ふぅと、ため息をひとつ吐いてデスクに向かい、PCの画面を見つめた。
まだ、メールの受信はない。

昨日も今朝も午前中にも、バルフレアに送ったメールが
すでに12通。
エラー表示もなかったので、確実に届いているはずだ。
もしかして、全部同じ文面だったから、怒っているのだろうか・・・?

それとも、
忙しいとか、怒っているのではなく、
もしかして、事故にでもあったのだろうか。
怪我でもして、体を動かせない状態にいるのだろうか。
携帯電話は、常に留守電に切り替わってしまう。
只、電源が入っているだけでも、まだましだ。
心配しだしたら、きりがない。
胃がキリキリ痛み、心臓も痛くなってきた。
そして、頭もガンガンしてきた。

これは、まずい。
非常にまずい。
危険な状態だ。
バルフレア欠乏症の禁断症状が出てきたのだ。
こうなったら、奥の手を使うしかない。


「バルフレア!
愛しのバルフレア!
いったい、君はどこにいるのか?
私は、心配で心配で、今、呼吸もままならないのだ!
事故にあったのではないだろうか?
怪我はしていないのだろうか?
身体は大丈夫なのだろうか?
とにかく、緊急事態だ!
すぐに、電話をくれ!
そうでないと・・・
私は・・・
私は・・・」


これでよし。
ここまで書いておいて、連絡がないはずはないだろう。
ああ見えて、バルフレアは、結構心配症なところがあるのだから。

送信ボタンを押して、メールを送信。
喉がカラカラだ。
部屋の隅にある冷蔵庫から、ミネラルウォーターを取り出して、デスクに戻った。
本当は、ビールでも飲みたいところだが、まだ勤務中だ。

たぶん、
きっと、
この水を一口、いや、二口くらい、飲み終えるくらいには、返信がくるだろう。
バルフレアという男はそういう男なのだ。

ごくり、
と、冷たい水が喉を通り、実に気持ちが良い。

ごくり、
と、二口目が、さらに、喉を潤してくれた。

大丈夫だ、
必ずくる!
と、さっきまで確かな自信に満ち溢れていた自分が、
なぜか、急に、不安に押しつぶされそうになる。

バルフレア!
バルフレア!
バアルフレアァァァァァ〜!
と、心の中で、三度唱えてみた。

何度も何度も更新ボタンを押しては
PCの画面を、穴が開くほど、じっと、じぃっと見つめていたけれど、
それでも、受信もなかったし、
デスクの上の電話も鳴らなかった。

「いったい、君は・・・」

それからというもの、仕事はまったく手につかなかった。
簡単なことを申し送りして、スタッフも帰した。
これ以上、仕事をしてもらうにも、まともな指示出しが出来る自信もなかったので。

デスクの前にずっと座っていると、かえって心臓に悪そうなので、
少し、気分を気分を変えようと、テラスに出てみた。

碧い空にはたくさんの飛空艇が、気持ち良さそうに悠々と飛んでいる。
しかし、どんなに目をこらしても、愛しい人の艇は見えない。

「はぁっ・・・バルフレア・・・」

バッシュは、今日、もう何度目かわからない大きなため息を吐き、
テラスの手すりに手を付き、頭を下げた。

ぽたり、ぽたりと
と、雫が落ちて、足元の床を濡らした。


 
 

                                                           2009/10/31
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                          いつ以来とか書けない位久々のBB小説です。
                                って言うより、サイトでは、初めてのBBか!

                          なのに、すみません・・・1話目にバルが全然出てこなかったよぅ・・・
                          おろおろバッシュが何やってんだか・・・