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誕生日プレゼント   1
   

七月十四日、今日も、うだるような暑い一日だった。
任務が終わった後、オレは四代目に呼び出された。
連れて行かれたところは、木ノ葉でも屈指の高級料亭の一室。
こんな店に連れて来られていったい何事かとあれこれ考えていたが、部屋に通されると、四代目はコップにビールを注ぎながら、にこにこ顔で話し始めた。
 
「シカク〜 明日お誕生日だよね〜
まぁ、明日はヨシノちゃんと二人でお祝いするだろうから、オレは一日早くって思ってね」
「そりゃどうも」
明日が自分の誕生日なんてすっかり忘れていたオレは、四代目が覚えていてくれたことに驚き、胸が熱くなった。
 
「お誕生日おめでとう〜!乾杯〜!
あ、料理はコースでたのんじゃったからね。食べたいものがあったら注文していいよ。
はい、これ、オレからのお誕生日プレゼント!」
 
テーブルの上には豪華な料理が並べられ、オレの隣には綺麗な包装紙で包まれた大きな箱が置いてあった。
四代目は、料理を物凄い勢いでもぐもぐパクパク食べている。
 
「ん〜、やっぱここの料理は美味しいね〜
ヨシノちゃん、体調の方はどう? 順調? 
あっ、それ開けて見て」
「ありがとうな」

いくつになっても、人から贈り物を貰うのは嬉しいことだ。
四代目は、ああ見えても細かいところに心配りの出来る人で、里の忍の誕生日や何かの記念日はしっかり覚えているのだ。
包装紙を取り、大きな箱を開けると、中には・・・
 
なんと、最新型のノートパソコンと小型のデジカメが数種類、そして、分厚いマニュアルが入っているではないか!
 
「何これ?」
「何って、パソコンとデジカメじゃん」
「オレに・・・?」
「うん、そうだよ。お誕生日プレゼントって言ったでしょ」
 
あと二ヶ月程で待望の赤ちゃんが生まれる。
オレは、一瞬、子どものために・・・?
と思って胸が熱くなったが、いやいや待てよ・・・
そんなことはないな。
これ絶対何かあるぞ。
次の任務はクソ面倒な間諜任務なのか?
それで使うのかよ?
違うな・・・
何かこれイヤな予感がする・・・
四代目が何の意味も無くこんな高価なものをオレにくれるはずがない。
先の先まで思考を巡らせてみたが、どうも思い当たることはなかったので、単刀直入に聞いてみた。
 
「いったいこれで何をしろと?」
「ん!ははひのほうはう!」
 
口の中に食べ物をいっぱい詰めたまま四代目は言った。
 
「はぁっ?」
 
四代目は口の中の物をごくりと飲み込んで、今度はにっこり笑いながらこう言った。
 
「だからカカシの盗撮!」
「へっ?」
「オレ、カカシの写真あんまり持ってないんだよ!
そのちっこいのが盗撮用の超小型カメラだからね。
シカクの身体のどっかに着けておいて。
で、撮れたらメールで送って。ねっ!」
 
「ったく、何考えてんだか。
そんなにカカシの写真が欲しけりゃ、お前が撮らせてもらえばいいじゃないか」
「ダメダメ!カカシったら、超恥かしがり屋だからさ、まともに言っても絶対撮らせてなんかくれないよ!」

四代目は手をひらひらと振って答えた。
 
「それに、ポーズをとった写真よりも自然な表情のカカシの写真が欲しいの!」
「一緒に住んでるんだから、今更写真も何もねぇだろ?」
「だってさ〜 執務室で一日中、紙の山とにらめっこなんてさ。
オレの身にもなってみてよ〜
もうカカシと一緒に任務にも出れないし。
カカシ怪我してないかな〜 って心配で心配で。 仕事も手につかないんだよ」
「アフォか、お前は!」

もう呆れて言葉が出ない。はぁっと身体全身の力が抜けた。
 
「だ〜か〜ら〜 そんな時、カカシの写真があればさ、オレの心も和むし、仕事もはかどるし。
里のためにはいいことじゃん!」
「はぁっ? 何が里のためだよ」
「それに、シカクのところだってこれから赤ちゃん生まれるんだし。
シカクにそっくりな赤ちゃんだったらオレ絶対笑っちゃう! でも、可愛いだろうな〜
うん、きっとシカクに似て賢い子になるだろうね。
そっだ、カカシに弟子入りさせる? いいねぇ〜 それ! そうしようよ!」
「勝手に決めるなよ」
「シカクったら、人格変わるくらい親バカになっちゃってさ、きっと写真もたくさん撮るよ。 
だから、カメラはあっても邪魔にはならないよね?
それに、パソコンは鹿の角の調合データの管理にも使えるでしょ?
シ〜カ〜ク〜 ねっ、お願い」
 
四代目は、ちょこんと小首を傾げて、両手を前で合わせて拝むようにシカクを見つめた。
 
(はぁぁ・・・ こいつのコレには弱いんだよな・・・)
 
それに、当時のパソコンやデジカメはまだまだ高価なもので、パソコンは木ノ葉の里でもアカデミーや病院などの公共施設にしか設置されていない。
いくら上忍といえども、個人で持ってる人はほとんどいないのだ。
 
「こんなこと頼めるのシカクだけだも〜ん! 
いいでしょう〜?」
「へいへい 分かったよ。撮りゃいいんだろう」
「サンキュ! 楽しみにしてるからね!
さぁ、じゃんじゃん食べて食べて! もう少ししたらカカシも来るからさ。
それしまっておいてよ。 あっ、そうだ、早速試し撮りしてみる?」 

(ったく、何が誕生日プレゼントだよ。
これって、ある意味SSランクの極秘任務じゃね?)
 
いつも四代目に振り回されてばかりいるけど、そんな四代目と四代目が好きなカカシを自分も好きなんだからしょうがない。
四代目の笑顔が見られればそれでいい。
 
はぁと溜息を吐き、木ノ葉ベストのポケットに小さな盗撮用カメラをそっと取り付けたシカクだった。
 

                                                                               2008/7/14

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