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秘伝封印術巻ノ五   1
   


「カカシにもできるかなぁ・・・」
 
四代目は書斎の最奥にある鍵のかけられた本棚の前に立った。
そこには、木ノ葉隠れの里の秘伝の巻物が納められている。
そこから、ひとつの巻物を取り出し、ぎゅっと握りしめてから、四代目はぽそりと独り言を呟いた。

「まだちょっとチャクラが足りないかも・・・
でも、カカシなら、きっと・・・」

三忍を凌ぐ程の天才忍者と呼ばれた父親サクモの遺伝子を受け継ぎ、幼い頃より、その才能を遺憾なく発揮していたカカシだったが、オビトの写輪眼を継いでからというもの、チャクラの消耗に身体がついていけずに、無茶をして任務後に倒れることもしばしばだった。
もちろん、四代目はそんなカカシの状態を理解し、任務の質も量も十分に配慮をしている。

「今年の誕生日プレゼントは、どうしてもこれをあげたいんだよな。
ん!決めた!やっぱ、これにしようっと!
どうしてもオレのプレゼントが無理だったら、とっておきのあれだけでも喜んでもらえるしね!」

四代目は巻物を胸のポケットにそっとしまい込んで、本棚に鍵をかけて、執務室へ戻った。

「しかし、早いよな・・・あれから、もう5年も経ったのか・・・」



     * * * * * *



大きな任務の失敗の責任を取らされ、自宅謹慎中だったサクモのところに、訪れていたのはミナトだけだった。親友の自来也も、長期の国外任務に出ていたからだ。
自来也と一緒にサクモの家にもよく遊びに行っていたミナトは、カカシのことを、いずれは自分の弟子にしたいと溺愛していた。
里の厳しい処遇に不満もあったが、まだ一介の上忍にしかすぎなかったミナトでは、どうすることもできなかった。
差し入れを持って行ったり、話相手をすること位だけでも、それが自分の役目と思い、里の人間に何て言われようともサクモの訪問は続けていた。

あの日は、カカシが単独の任務に出ていて、帰りが遅くなり、ミナトが訪れた時にはまだカカシは帰っていなかった。

「カカシがまだ帰って来ないんだよ。大丈夫だろうか・・・?」

布団に横たわりながら、心配そうな顔で窓の外を見つめていたサクモは、急に何かを思い出したかのように、ゆっくりと身体を起こした。

「サクモさん?」

ふらりとよろける身体をさっと支えると、サクモは申し訳なさそうな顔をして、ミナトを見つめた。

「すまない、ちょっと、そこの本棚にところまで、連れて行ってくれ」

サクモは、本棚の真ん中の引き出しを開けて、中から桐の箱をを取り出した。
そして、再び布団に戻って、腰を下ろした。

「ミナト、ひとつお願いがあるんだが・・・」
「サクモさん、オレにできることなら、何なりと申しつけてください」

ミナトは、にっこりと笑って、サクモの横に座った。

「これは、オレの開発したオリジナル忍術だ。
まだ、試したことはないんだけど・・・
多分・・・これで完成しているだろう。
ちょっと、術式を見てくれないか?」

サクモは、ミナトに巻物を渡した。
ミナトはするりとその巻物を開き、術式を読み始めた。

「サクモさん!こ、これ・・・す、凄いです!
こんなこと本当にできるのですか?」

「どうだ、なかなかのものだろう?」
「素晴らしいです!こんなこと、今まで考えたこともなかった。
これなら、理論的には可能です!」

ミナトは興奮しながら、大きな声で答えた。

「この封印術を使って・・・
オレは、カカシに残したいんだ・・・
オレがしたことを・・・
だけど・・・今のオレのチャクラじゃ・・・
足りないんだよ・・・」

「サクモさん?」

「たぶん、今のカカシには・・・
オレの気持ちは・・・まだ何もわからないだろう・・・
だけど、そうだな、5年もたてば・・・
カカシだって・・・」

悲しげなサクモの顔を見て、ミナトにはサクモの覚悟がわかってしまった。
しかし、絶対にそうはさせまいと、ミナトはこの瞬間に固く心に決めた。

希望を持って、
カカシと共に歩む未来を。
明るい未来を。

「サクモさん、この封印術、オレが一度試しても宜しいでしょうか?
そして、成功したら、サクモさんのチャクラをカカシに封印してください」
「今の・・・オレに・・・できるのかな・・・?」
「サクモさん、この封印術なら絶対に大丈夫ですよ!
サクモさんの思い、カカシに伝わりますよ!」


それから、ミナトはサクモに託されたこの新たな封印術を研究し、何度も試して、調整を繰り返した。
そして、ついに完成させて、サクモに報告をした。

「ありがとう、ミナト。君のお陰で、これならいけると自信が持てたよ。
カカシも、きっと喜んでくれるだろう・・・」
「サクモさん、この封印術は何にでも幅広く応用がききます。
只、ちょっと、チャクラコントロールが難しいのと、チャクラの消耗が非常に激しいので、
普通の忍には、厳しいかもしれませんね」
「もちろん、それは承知の上だ。誰にも教えるつもりはないんだから、いいんだよ。
カカシへの誕生日プレゼントになれば、それだけでいい」
「サクモさん!」
「5年後に渡して欲しい。カカシの13歳の誕生日に解放時間をセットするから」




     * * * * * *



「カカシーーー!お誕生日おめでとう!
今年のプレンゼントは、超豪華だよ!
ジャジャジャジャ〜ン!はい、これがプレゼント!」

誕生日だというのに、主役のカカシに料理を作らせて、美味しい御馳走を食べ尽くした四代目は、胸ポケットから巻物を取り出して、とびっきりの笑顔でカカシの掌にそれを乗せた。

「秘伝封印術巻の五」

「先生、ありがとう!もしかして、これって、先生の新術?」
「んー、新術ってわけじゃないんだけどね」

カカシは飛び上がらんばかりの喜びようで、わくわくしながら巻物を見つめている。

「開いてもいいの?」
「もっちろん、カカシへプレゼントしたんだもの。カカシの術だよ」

カカシは嬉しそうに巻物を開き、しばらくの間、術式を夢中になって読んでいた。

「先生・・・こ、これ・・・す、凄い!
こんなこと本当にできるの?」
「かなり、難しいけどね」
「先生の開発した術なんでしょ?これをオレに?」
「うん、と言いたいところなんだけどね、残念ながら、考案したのはオレじゃないんだよ」
「こんな凄い術、見たことも聞いたこともない!もしかして、自来也様?」

カカシは頬を真っ赤に染めて、興奮しながら、早口で話している。

「違うよ、自来也じゃない。サクモさんだよ」
「えっ!父さんの術?」
「そう、凄いでしょ。オレも最初にこれを見た時、今のカカシみたいにとっても興奮したよ」
「父さんが・・・」
「サクモさんが、オレに託してくれたんだ。
カカシは、まだ小さかったからね。
あの頃のカカシには、まだ到底無理だし」
「でも、先生、こんな凄い術なのに、誰も知らないなんて・・・
やっぱり、父さんの術だから・・・?駄目なのかな・・・」
「違うよ、サクモさんは、カカシだけに残したかったんだと思うよ。
あ、ごめん、オレも知ってるんだけど。
サクモさん、身体の調子が優れない時だったからね、オレに最終調整を頼んだんだ。
ごめんね、カカシ」
「先生が謝ることじゃないよ、オレは、まだ子どもだったんだから」
「あ、でもよく考えてみたら、これって、サクモさんからのプレゼントなんだよね。
ってことは、オレからのプレゼントはないってこと?あれ?」
「先生、そんなこと、もういいって!」
「じゃ、ちゅうで許してもらおうっかな〜!」
「もう、先生ったら・・・いちいち言わないでよ」

カカシは、ぷくりとほっぺを膨らませた。

「でも、こんな凄い術、オレにはできそうにもないよ・・・」
「サクモさんからね、5年後の13歳のカカシに渡してって言われてたんだ。
ってことは、サクモさん、今のカカシなら大丈夫って、わかってて、そう指定したんだと思うよ」
「本当に?」
「うん、だから、大丈〜夫!!」

四代目はカカシをぎゅっとと抱き寄せて、頬にちゅっとキスを落とした。


「カカシ、お誕生日おめでとう!
サクモさんからも、きっと、ステキなプレゼントが届くと思うよ」
「え?だって、この術がプレゼントなんでしょ?」
「何かもらえたら、オレにも教えてよね〜
ってことで、そろそろ、お楽しみタイムってことで〜!」
「先生・・・ちょっと、まだだって。オレ、この巻物もっと見ていたいもん」
「えー明日でいいじゃん!
ここからが、オレの本当のプレゼントなんだからねー!」
「うわーせんせぇ・・・」

あっと言う間に、カカシは四代目に抱きあげられて、ベッドまで連れて行かれてしまった。
それから、四代目の腕の中で甘い夜を過ごして、最後にはいつものように意識を失ってしまったカカシだったけど・・・


ふわふわと夢現な感覚。
それは、とっても温かくて。
カカシは不思議なものに包まれたような気がした。

そして、突然聞えてきた・・・
優しいあの声が・・・

「カカシ、大きくなったな」

でもそれは、決して夢ではなく、
優しい父の、
懐かしい声だった。


「おまえに、話ておきたいことがあるんだ」




                                                                               2011/09/15

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                              カカ誕1話目は、四カカ+サクモ
                                   カカシ、13歳のお誕生日のお話です!
                                   例の四の術ですが、サクモ考案ってことに、捏造してます。すみません。
                                   
                                   ぎゃーーーなんじゃこれーーー!
                                   サクモパパ、びっくりしてるよーーー!
                                   カカシに会いに来たら、隣にミナトがーーー!
                                   おいおいおいおいおいおいおい!オレのカカシに何してんじゃコラァァァァァ
                                   ってね。
                                   
                                   回想シーンは、一応、ほんのりミナサク風にしてみました。
                                   ミナサクは始めて書いたので、楽しかったです。
                                   でもCPとか関係なく、あの時期、ミナトは本当に、はたけ家に通っていたと思います。
                                   料理とか、全然できないくせに、サクモに何か作ってあげようと思って。
                                   でも、失敗して、結局カカシが作り直すハメになってたとか。
                                   そんな日々があったんじゃないのかなと思っております。
                                   そして、カカシともっともっとお話したかっただろう、サクモパパ。
                                   この術使って、会いにくればいいよー!
                                   
                                   カカシ、お誕生日おめでとうー!