直線上に配置

秘伝封印術巻ノ五   3
   



「カカシ、俺、もう無理!大体、こんな任務で報告書5枚も書けって、鬼だろ?シカク隊長。
カカシ、代わりに書いてくれよ、な、頼むよ」
ゲンマは口に咥えた千本をくいくいと上下に動かしながら、カカシに報告用紙をぱっと手渡した。
イラついた時、ゲンマは千本を細かく動かすのが癖なのだ。

「そりゃあ、確かに、捉えた奴等は5人いたけどさ、あんなゴロツキ野郎共に1人1枚なんて、そんなに書くことねえだろよ。1枚で十分だっつうの」
「オレだって、もうへろへろなんだよ。シカク隊長が頼んだのはゲンマでしょ?
元々お二人の任務だったのに、オレは今朝急に助っ人で呼ばれただけなんだもん」
と言って、カカシは報告用紙をゲンマに突き返した。

「いいのか〜?カカシ。ここでオレが無駄に時間くっちゃうと、飯の支度が遅くなるぞ?
飯が遅くなったら、寝る時間も遅くなる、ってことはだな。ヤル時間が少なくなるってことなんだぞ!」
「オレはいいよ、少なくなっても。別に、今日しなくたっていいし〜、オレはそんなに溜まってないし〜」
カカシはゲンマの千本の先を人差し指でピコンと弾いた。

「カカシ、まさか・・・忘れてるんじゃないだろうな・・・オレが今朝言ったことを」
「へ?何か言ったっけ?」
「はぁ?本当に何も覚えてないのかよ!」
「うん」
当然だと言わんばかりの顔でカカシは頷いた。
「ほら、今朝、おはようのチューしながら大事な事、言っただろ!」
「そうだっけ〜?まだあの時は半分寝てたかも〜」
「あ・の・な!カカシはちゃんと、『わかった』って言ったからな!」
「そんな事言ってる暇があったら、報告書仕上げちゃいないよ。
あ!思い出した!オレ・・・」
「おお!思い出してくれたのか?」
「うん、今晩、ガイ達に一緒に飲もうって誘われてたんだ。あれ、ゲンマも一緒じゃないの?」
「はぁっー?何だよそれ!オレは聞いてないぞ!」
「え、そうなの?確か、ライドウとアスマも来るって言ってたような・・・」
「ったく・・・あいつら・・・何企んでいやがる。少しは気を使えっての」
「いいじゃん、折角みんながオレの為に集まってくれるんだから」
「ガイとアスマが来るってことはだな、どうなるか、カカシだって想像つくだろ?」
「大丈〜夫!オレはそんなに飲まないってば」
「ま、最後まで付き合うことはないからな、途中でうまくバックれようぜ」


それから、カカシに半分手伝ってもらって、報告書をなんとか仕上げて、二人でいつもの居酒屋に向かった。店にはすでに、ガイとアスマとライドウが来ていた。

「遅かったな、カカシ。みんな腹減ってたから、先に始めさせてもらったぞ」
「ごめん、ごめん、ちょっと報告書の枚数が多かったからね〜」
「さ、主役が到着したから、乾杯しよう」
ガイが皆のグラスにビールを注ぐ。
「カカシ、誕生日おめでとう!」
カカシのグラスにこつんこつんとグラスがぶつけられ、みんな一気にビールを空にした。
「ケーキは買ってないけど、カカシの好きな物、じゃんじゃん食っていいそ」
「ありがと。アカデミー生じゃないんだから、今更誕生会なんてね」
カカシが恥ずかしそうに、枝豆をぴゅっと出して、口に放りこんだ。
「あのアカデミーの誕生会は楽しかったよなぁ」
「そうそう、ゲンマが7月、ライドウが8月で、カカシが9月。そして、俺が10月って、毎月続いてたもんな」
「ふん、どうせ、俺は正月だ。冬休み中で誰も祝ってくれないんだぞ」
ガイが不満げに2杯目のビールを一気に飲み干した。
「1月だって、誕生会あったじゃん」
ゲンマが焼鳥を串から取り分けて、カカシの小皿に乗せた。
「誕生会はいつも月末だったろ?元旦なんて、お年玉は貰えても、誕生日プレゼントなんか、誰もくれないからな」
「いいじゃん、世界中が祝ってくれてるようなもんだぞ」
他愛もない話で酒が進む。
全員がアカデミーで同じ時を過ごしたわけではないが、いくつになっても、その絆は強く結ばれている。

「おお!そういえば・・・」
と、ガイが急に大声をあげた。
「なんだよ。でかい声出すな」
「一度だけ、誕生日プレゼント貰ったことあるんだ!四代目に。年始の挨拶に言ったら、お年玉とは別に誕生日プレゼントいただいたんだ。あれには、びっくりしたな。嬉しくて、その場で大泣きしたら、一月生まれって損だよね〜って、笑っていらした」
「そういえば、俺も四代目からいただいたことある。
火影様からプレゼントなんて、しばらく抱いて寝てたような・・・」
「饅頭じゃなかったっけか?」
みんな、懐かしそうに、四代目の思い出話を話し始めた。
「俺は、団子だったぞ」
どうやら、誕生日プレゼントと言っても、特別なものではなく、多分、その日の自分のおやつの一つを分け与えたくらいのものだったのだろう。
でも、たとえ饅頭一つでも、下忍や中忍にとって、火影様が自分の誕生日を祝ってくれたということの喜びは計り知れない程大きいのだ。
「へぇ〜みんな、先生からそんなものもらってたんだ・・・」
「カカシだって、貰っただろう?」
「お菓子はなかったけどな」
「もっといい物貰ってたな?」
皆、興味深々でカカシの顔を覗いた。

四代目が亡くなった時、カカシは四代目のことを思い出すのが辛くて、貰ったものはすべて処分してしまった。ミナト班の写真とあの上忍就任祝いのクナイだけ残して・・・
「ん〜何だったかな、思い出せないよ。もう何もないしね」

それから、カカシの誕生日だというのに、なぜか四代目の話で盛り上がり、昔話に花が咲いた。
火影護衛小隊の時代は、四代目に散々翻弄されていたが、それでも、どんな苦労も今となってみれば、懐かしい思い出となっていた。

「あの時は、毎日、本当にキツかったけど、あの四代目の命令をこなすことができたからこそ、俺達も一人前になったようなもんだよ」
「あぁ、今ではあんな厳しい任務をすることもなくなったし」
「ま、あれだけは、一生続くけどな」
ゲンマが意味ありげにそう言うと、カカシ以外は皆頷いた。

心を許す仲間との語らいが楽しかったせいか、カカシにはいつもより早く酔いが回ってしまったようだ。
アスマが目で合図をすると、ゲンマがカカシの手を引っ張り、立ち上がらせた。

「さ、カカシ、そろそろ帰るぞ」
「え? あ、うん。みんなありがとう。楽しかったよ」

カカシとゲンマだけ、一足先に店を出た。
カカシの部屋に戻ると、カカシはもうあくびをしている。
これでは、今朝の約束は無理だなとゲンマは諦めて、カカシを眠らせることにした。
ま、別に何が何でも誕生日の今日でなければならないということではないし、カカシの気分の良い日の方がたっぷりと可愛いがってあげられるのだから。

「おやすみ、カカシ。今日はゆっくり寝ろよ」
「ごめんね、ゲンマ・・・なんか、飲みすぎちゃったみたい」

1分もしないうちに、スースーと寝息が聞こえてきた。
ゲンマは布団を肩までかけてやり、銀色の髪をそっと撫でた。


その時・・・
いきなり、背後で気配を感じた。
忘れもしないこの気配は・・・

あまりの衝撃で振り返ることもできずに、身体が固まる。

嘘だろ・・・
マジかよ・・・

肩にそっと手が乗せられらような気がした。
でも、怖くて、声を出すこともできない。

「ちょっと、俺が来たってのに、挨拶もできないの?ゲンマは」

間違いない・・・
このお声は・・・

「はい、ああ、あの、すんません」
「もう、折角俺が会いに来たのに、なんで、カカシ寝てるの?ひっど〜い!
俺、カカシの誕生日合わせて、来てるのに!
この術ね、チャクラを相当使うから、5年に一度しか来れないんだよ!
カカシにも、5年前にちゃんと言っておいたのに!起きてカカシ!先生だよー!」

すぅっとゲンマの横に現れたのは、信じれらないことだが、やはり四代目の姿だった。
声もそのままだし、何より気配とチャクラが四代目の物で、変化の術ではないことは確かだった。
四代目は布団を捲り、カカシをゆさゆさと揺すって起しているが、爆睡しているカカシはびくともしない。

「ゲンマ、何やってるんだよ。カカシにそんなに飲ませたの?」
「い、いえ、そんなには飲んでないと思いますが・・・」
「じゃぁ、よっぽど疲れているんだね、カカシ、可哀想」

起きないカカシを見て諦めたのか、四代目は布団を掛け直した。
「あ〜あ、今晩はダメっぽいな、カカシ。
ゲンマ、いい?次は、5年後だよ。みんなで、カカシのお誕生会をしてあげるのはいいけどさ、前の日にしてくれない?」
「はい、わかりました」
「それから、護衛小隊の極秘任務も引き続き頼むよ。
俺のカカシに何かあったら、許さないからね!」
「はい、もちろんです。俺達は、生涯カカシを護ると四代目の御前で誓いましたから」
「じゃ、帰るから、よろしくね。あ、カカシが5年後も忘れたから困るから、手紙書いておこうっと」

四代目はカカシの机の引き出しから紙と筆を取り出して、さらさらと書き記した。
そして、そのまま、引き出しに入れておいた。

「ん!これでよしっと!ゲンマ、バイバイ〜!」

どろんと煙と共に、四代目の姿は消えていった。
ゲンマは身体中の力がすっと抜けて、その場にへなへなとしゃがみ込んでしまった。

「はぁ〜いったい、どんな術だよ、5年ごとにカカシに会いに来るって。
生前に、どこかにチャクラを練り込んで残していたんだろうか?
ま、俺達の人知を超えたお方だったからな、カカシのためなら、どんな術でも可能にしてしまうんだろうなぁ」

ゲンマはふぅっと小さく笑ってから、ベッドで気持ち良さそうに寝ているカカシの顔を覗き込んだ。

「四代目、任せてください。あなたの可愛い可愛いカカシは、俺達『カカシ護衛小隊』が命をかけて、お守りしますから!」






                                                                               2012/07/16

直線上に配置

BACK INDEX  NEXT



                              三番目のお話はゲンカカです。
                                   一応、セフレっぽい関係ww
                                   『四代目護衛小隊』は、=『カカシ護衛小隊』でもあったはずです!そう、確信しております。
                                   二人を護るという、それはそれは大きな大きな極腐任務だったと思いますよ!
                                   アスマ、ガイ、ゲンマ、ライドウ、そして、カカシ。
                                   四代目との約束は、みんな、ちゃんと守っていくと思います。
                                   
                                   お話はカカシの誕生日になってますが、ゲンマの誕生日にうpしました!
                                   ゲンマ、お誕生日おめでとう〜
                                   これからも、カカシをよろしくね〜