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師弟の絆   13


「うわ〜 ちっちゃいね。 赤ちゃんてこんなに軽いんだ。 
カカシ君、 オレ、波風ミナト。 よろしくね!」
 
そう言って、ミナトはカカシの天使のようなほっぺを人差し指でつんつんと突いた。
ミナトには一瞬カカシが自分を見てにこりと笑ったように見えた。
 
「見て! 見て! 今、カカシ君が笑ったよ! オレの顔見て笑ったよ〜!」
 
今度は小さな小さな手にそっと触れてみた。
一瞬驚いたようにぱっと手のひらが開かれ、ミナトの指をぎゅっと握り返してきた。
ミナトは言葉では表せない感動に包まれていた。
血が繋がっている訳でもないのに、何だか、不思議な感情が湧いてきた。
 
「ん! オレ、決めた! カカシ君がアカデミーを出たらオレの弟子にする!
そして、オレが上忍になったら、一緒に組むんだ!」
 
「まぁ、カカシ、良かったわね」
 
自来也も部屋に入って来て、お祝いのベビー服が入った紙袋と大きな包みを、カカシのママの前にどうぞと置いた。
そして、ミナトに抱かれたカカシを覗き込み、
「ほほぉ〜 これはまた、奥さんにそっくりな別嬪さんだのぉ」
と、こりゃサクモがああなるのも仕方ないかと思わず納得した。
 
「自来也先生、カカシ君は男の子なんだから、別嬪さんじゃないでしょ!可笑しいよ」
 と、ミナトが自来也に向かって言った。
 
「わっはっはっ〜 そうだな。 父親に似て、強い忍になるだろうな」
 
「うん! 絶対してみせるって!
あっ、それそれ、オレがカカカシ君のために選らんだんだよ」
 
お祝いを受け取ったママに向かって自慢気にミナトが告げた。
 
「ありがとう。 開けてもいいかしら?」
 
今度は、自来也がカカシを抱いた。
ママが嬉しそうに包装紙を取り、ベビー服を手に取った。
 
「まぁ〜 可愛いわね〜 カカシに良く似合いそうだわ。 
この大きいのは何かしらね〜?」
 
ママがリボンを解くと、中から・・・
大きな大きな熊のぬいぐるみが出てきた。
 
「わぁ〜 可愛い熊さん! 肌触りにも柔らかくて! 早く、カカシも抱けるようになればいいのにね。 こんなにたくさん申し訳ありません」
 
ママは、大喜びで自来也とミナトに頭を下げた。
ミナトは得意げな顔をして、笑っている。
 
「この熊さんも、ミナト君が選んでくれたの?」
「へへへ〜 そうだよ! まっ、お金払ったのは自来也先生だけどさ。 
カカシ君が大きくなったら、今度はオレの小遣いでおもちゃをいっぱい買ってきてあげるからね!」
 
ミナトは、熊のぬいぐるみを抱いて、カカシの顔に近付け見せてあげた。
 
「カカシ君、この熊さん、どう? 可愛いでしょ? あぁ〜、早く一緒に遊びたいな〜
ねぇ、いつになったら歩けるようになるの?」
 
「そうね、1歳くらいかしらね」
 
「えぇっ、 1年もかかるのか・・・ まだまだ先だな。
ねぇ、自来也先生、もう一度オレに抱かせてよ」
 
ミナトは、自来也からカカシをそっと抱き上げた。
ふわふわの銀色の髪を撫でて、小さな手をもう一度握り締め、
「カカシ君、カ〜カ〜シ君」と何度も呼びかけてみる。
 
カカシは、口をパクパクして、ミナトをじっと見ている。
 
「ねぇ、何かお口を動かしてるよ? どうしたのかな?」
 
ママは壁に掛けられた時計をチラリと見て、
「もう、お腹がすいたのね。 そろそろおっぱいの時間だわ」
 
そう言って、ママは立ち上がり、ベビーベッドの下に置かれた籠の中からオムツを取り出した。
 
「オムツを換えるから、カカシをベッドに寝かせてくれる?」
 
「はい」
 
ミナトは、そっとベッドにカカシを寝かせた。
 
ベビー服のボタンを外すと、カカシの真っ白な細い足が見えた。
ママがそっとオムツのシールを外す。
ミナトは興味深そうにカカシを覗き込んだが・・・
 
いきなり、後ろからサクモに首根っこを掴まれて、持ち上げられてしまった。
 
「こらっ、何してるんだ! カカシを見るな!」
 
「うわぁっ! 何で〜?」
 
「こんなところ見られて、ミナトに弱みを握られちゃ、たまったもんじゃない」
 
「そんな〜 弱みだなんて・・・」

「カカシが大きくなってから、オレはお前のオムツ換えてやったとか言われるのは御免だからな!」
 
「サクモさん、オレ、そんなこと言わないよ〜」
 
「ははは〜 ミナト、そろそろおいとましような。
これ以上居たら、サクモに何されるかわかんねぇぞ。
まだ退院したばかりなんだから、落ち着いてからゆっくり遊びに来させてもらおう。 
サクモ、失礼するよ」
 
自来也は笑いながらサクモからミナトを受け取った。
サクモは恐ろしい顔で自来也とミナトをじろりと睨んだ。
 
「お前等、カカシのこと誰にも言うなよ!
カカシの顔が見たい!見たい!って里中から押しかけて来られたら大変だからな!」
 
「白い牙ともあろうものが・・・
 今からこれじゃあな・・・ ったく呆れてものも言えんわ。
 いつまでもカカシを人前に出さないでおくわけにはいかんじゃろ?」
 
「・・・」
 
呆れ顔の自来也にサクモは返す言葉も出て来ない。
サクモは、自来也に言われて、今更ながら、これからのことを考えては頭が痛くなってきた。 確かにカカシをずっと、部屋に閉じ込めておくわけにもいかないし・・・
かといって、あの可愛い可愛いカカシを人前にさらすことはとっても危険なことのように思えて・・・
  
何か良い方法はないものか・・・
 
 こうしてこの日から、“カカシの美貌を守る”というサクモの新たな戦いが始まったのだった。
 
 

                                                                              2008/2/4

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