師弟の絆 16
カカシはサクモとママと、そしてミナトの愛情をたっぷりと受け、健やかにすくすくと成長していった。
ミナトは任務のない時の僅かな時間でもカカシの元へすっ飛んで行く。 そして、休みの日には、丸一日たっぷりとカカシと一緒に過ごした。 最近では、遊びの中に、絵本を読んだり、数字を教えたりして、少しずつ、文字の読み書きや計算など学習の要素も取り入れている。 好奇心が旺盛で聡明なカカシは、一度教えられたことは、すぐに覚えてしまった。 カカシが三歳になった頃には、近所の友達とも外で元気良く遊ぶようになっていたのだが、サクモは心配で心配でたまらない。 そう、カカシのあまりの美貌にカカシが誘拐されてしまうのではないかと。 毎朝、後ろ髪を引かれるように任務に出掛け、家に帰ってまずはカカシの可愛い顔を見るまでは気が気でならない。 「もうダメだ、こんな可愛いカカシの顔を見せたら、犯罪に巻き込まれるに決まってる!」 と、言い出し、防御策として、外に出掛ける時は必ず口布をして行くようにと言い聞かせ、まだ下忍でもないのに、口布付きTシャツを特注で作らせ着せているのだ。 「何もそこまでしなくても・・・あなた、かえってそっちの方が目立つんじゃないの?」 と、呆れ顔のママの言葉はあっさり無視して、サクモの溺愛ぶりはさらにエスカレートしていく。 日に日に可愛らしさと共に、ママそっくりの美しさも増していくカカシを見ていると、一瞬たりともサクモの心が休まることはない。 このままでは、自分の身体がもたないと感じたサクモは、万が一、襲われた時のことを考えて、少し早いとは思ったが、カカシに我が身を守るための忍術を教え始めたのだ。 サクモは、ミナトにもこの思いを告げ、自分がいない時の修行を頼んだ。 もちろん、二人はしっかり連携を取り、サクモの決めたカリキュラム通りに修行を進めた。 最初は、チャクラの原理から、五属性、印の組み方と基本的な体術と忍術だけを教えていたが、あっという間に覚えてしまったので、さらに、木ノ葉隠れの里の歴史や五大国と忍里との関係まで、アカデミーで習うことを先取りで教えていった。 今日はここまで出来たとか、この辺が苦手だとか、ミナトは後からきちんとサクモに報告をした。 カカシは飲み込みが早く、何を教えても、ぐんぐん吸収していった。 何てったって、天才忍者二人にマンツーマンで教えてもらっているのだから。 ミナトはカカシとの修行が楽しくて堪らない。 どんな手を使ってでもカカシの担当上忍に絶対になるんだと、今から心に固く決めていた。 もちろん、カカシもミナトとの修行を楽しみにしていた。 「カカシ〜 さぁ、先週の続きね。分身の術、もうひといきなんだろう?」 「うん、どうしても、分身がうまく形にならないの・・・」 「じゃ、一度やって見せてごらん」 「はい!」 カカシは、ぱっと印を組んだ。 「分身の術!」 確かに、出てきた分身はカカシよりさらに一回り小さくて、ふにゃぁっとしていて、全身がまだまだちゃんとした人間の姿になっていなかった。 「そっか、チャクラを練るスピードがまだ少し足りないのかもね。 集中して、一気に、すぱっと二つに分ける感じで、ねっ! もう一度、やってごらん」 それから、何度もやってみたが、中々うまくは出来なかった。 いつしか、西の空が茜色に染まっていた。 「カカシ、今日はもう終わりにしようか。たくさん頑張ったからね。 次の時にはきっと出来るようになるよ!」 カカシははぁはぁと肩で息をしながらも、きりっとした瞳でミナトを見つめた。 「ミナト、最後にもう一回だけするから」 カカシの真剣な眼差しに、ミナトは一瞬ドキっとしたが、にこりと笑って頷いた。 「ん!じゃぁ、最後の一回ね」 カカシは、ふぅと小さく息を吐いて呼吸を整えてから、素早く印を組んだ。 「分身の術!」 ボン! と、今度は見事にカカシの分身が現れた。 「カカシ、大成功!すっご〜い!やったね!」 「本当に?これで、大丈夫?」 「うん、カカシそっくりな分身が出来たよ!うわぁ〜い!可愛いカカシが二人いる〜!」 ミナトは大喜びで、二人のカカシを左右に両手で抱き上げた。 ミナトはカカシが初めて分身の術を成功させたこの日のことは決して忘れないだろうと思った。 |
2009/3/5