師弟の絆 17
こうして、サクモとミナトの熱い修行は続けられ、カカシが四歳を過ぎた頃には、最早下忍並みのレベルまでに達していた。
ミナトは思い切って、サクモにカカシをアカデミーに入学させてはどうかと申し出た。 普通アカデミーには六〜七歳位で入学するのが平均的なのだが、入学試験は字の読み書きや簡単な計算問題、体力測定などだけだから、カカシなら何の問題もなく、合格出来るだろう。 すでに、カカシがマスターしている分身の術だって、本来ならアカデミーの卒業試験に出されるくらいのものなのだから。 その当時の大陸の情勢は、国と国との小競り合いが続き、このままでは、また大きな戦に繋がっていくのではないかとの懸念が持たれ、不安が大きく渦を巻いていた。 もちろん、木ノ葉の里でもさらなる軍事力の拡大と力を堅固にする訓練だけは怠らないで、いつ何時事が起こっても対処出来るようにと、着々と準備は進められていたのだ。 人材はいくらでも欲しいというのが、里の現状だった。 「カカシ、アカデミーって知ってる?」 「うん、忍になるために行く学校でしょ? ぼくも大きくなったら行くんだよね。 早く下忍になって、パパやミナトと一緒に任務に行きたいよ!」 「でも、アカデミーには、普通は六歳くらいにならないと入れないんだよ」 「そっか、ぼくはまだ入れないのか・・・」 「カカシ、入りたい?」 「うん!」 カカシはつぶらな瞳をきらきらと輝かせてミナトを見つめた。 「それにはカカシがちゃんと約束を守らなければいけないんだけど」 「守れるよ!ぼく、絶対守るから!」 「じゃぁ、サクモさんから校長先生にお願いしていただこうね」 「ミナト、どんな約束を守ればいいの?」 「もしも、今カカシが入学できても、まわりはカカシよりも大きなお兄ちゃんやお姉ちゃんばっかなんだよ。わかる?」 「うん」 「カカシはまだ四歳だけど、入学するってことは、その大きな子たちと一緒に勉強するってことなんだ。 だから、カカシにはまだ難しいことでも、やらなければならないこともある。 そういう時に、『ぼくはまだ四歳だから出来ません』とは言えないんだよ」 「わかった、言わない」 「カカシが何度やっても出来ないこともあるかもしれないし、辛いこと、苦しいこともあるかもしれない。それでも泣かないって約束出来る?」 「ぼく、絶対泣かないよ!」 「カカシ、大切なことは諦めないことだ。いくら頑張っても出来なかったことでも、次の日、また、次の日って、出来るようになるまでやり続けること。いい?」 「うん、やる」 「それから、逆に忍術のことでいえば、他の子はまだ何にも習っていないのに、カカシはサクモさんやオレから習っているから、もう出来ることもたくさんあるんだ。 そういう時に、『ぼくはもうそんなこと出来るからやんなくていいよ』と、決して言ってはいけないよ」 「うん、わかった」 「カカシに出来ることでも、もう一度練習をすることも大切なことだし、出来ることを自慢したりしないで、出来ない子には教えてあげるんだよ」 「大丈夫、ちゃんとするよ!」 ミナトは優しい言葉でカカシに分かりやすく話を続けた。 「それからね、アカデミーにはいろんなお友達がいるんだよ。 強い子もいれば、弱い子もいる、優しい子もいれば、いじめっ子もいる。 おしゃべりな子もいれば、あまりしゃべらない子もいる。 読み書きや計算が得意な子もいれば、苦手な子もいるんだ。 でも、どんな子でもカカシにとっては大切なお友達だからね! 忍になったら、一緒に戦う仲間になるんだよ!だから、誰とでも仲良くすること。 何かに困ってる子がいれば助けてあげようね。 カカシだって、助けてもらうこともあるかもしれないし」 「うん、ぼくお友達いっぱい作るよ!」 ミナトの話にカカシは、うんうんと頷きながら、話を聞いていた。 「アカデミーの先生の言うことをちゃんと聞いて、勉強も修行も頑張ること! 辛いことがあっても泣かないこと!そして、お友達を大切にすること! これが、アカデミーに入る約束だよ、守れる?」 「ミナト、約束する」 「じゃぁ、指切りげんまんしよう!」 そう言って、ミナトは右手の小指をそっと差し出した。 「うん!」 カカシも小さな小指をミナトの指に絡ませた。 「ん!カカシはいい子だ。サクモさんが校長先生にお願いしてくれるから、アカデミーに入れるまで、オレと修行しようね!」 「ミナト、ぼくにもっともっと色々な忍術教えて!ぼくもパパやミナトみたいに強くなりたい!」 サクモは、カカシの受験を承諾して貰えるように正式に校長に嘆願書を出した。 サクモの我が子への溺愛ぶりは、もちろん、校長の耳にも届いていた。 さぞかし、張り切って忍術を教えていることだろうと想像は出来ていたし、何といっても「木ノ葉の白い牙」と、通り名を持つサクモの血を引き継ぐ後継者として、カカシには大きな期待を持っていのだ。 校長は特例として、カカシの受験を許可した。 「カカシ、校長先生が許してくださったよ!特別に試験が受けられるんだって!よかったね!」 「え〜本当に!?」 「試験に受かったら、カカシはアカデミーに入学出来るよ!」 「ぼく、しけんがんばる!」 その後、カカシは入学試験には無事合格し、翌年の春、それまでの最年少記録を塗り替えて、四歳でアカデミーに入学を果たした。 いまだにこの記録は破られることはなかった。 |
2009/4/29