「ゲンマ、外で食べないで、ウチで食べようよ。
オレ、簡単なものだったら作れるし。ウチの方が、落ち着くでしょ?」
「あぁ、そうだな。カカシの手料理が食べられるなんて、そうないしな!」
カカシとゲンマは、親同士も仲が良かったので、小さい頃からよく遊んだ幼馴染という関係だ。
ゲンマの方が、歳は二つ上だが、カカシは通常より早くアカデミーに入学したので、
ゲンマとは同期になってしまった。
そして、カカシは異例のスピードで、普通なら5〜6年はかかるところをたった1年で、卒業してしまったから、ゲンマより先に卒業したことになる。
その後、ゲンマが卒業してからは、先生の班で、一時期、一緒に組んでいたこともあり、
カカシにとっても、最も心が許せる親友の一人と言ってよい。
サクモが亡くなって、先生とカカシが一緒に住むようになってからも、
先生が長期任務で家を空ける時は、ゲンマの家に泊めてもらうことが多かった。
先生も安心して預けていたのだが、さっきのゲンマの、ちょっと怪しげな視線に、
先生もちょっとドキッっとして、もしかしてもしかすると、なんて心配がチラリと頭をかすめたのだった。
(まぁ、この里のみんなは、カカシのことが大好きなんだから、
もちろんゲンマだって、そういう気持ちを持っていたっておかしくはないよな・・・)
スーパーで食材を買出しして、二人は先生とカカシの家に帰った。
「ゲンマの好きなかぼちゃの料理にするからネ〜!
でも、オレ、甘いの苦手だから、煮物はちょっと勘弁してね。
バター焼きとサラダだったら、オレでも食べられるからさ」
「かぼちゃのバター焼きにサラダ?
ウチの母ちゃん、そんなの作ったことないな〜」
「えっ、そう?煮物より簡単だよ。
薄くスライスして、バターで焼くだけだし。
サラダだって、ポテトサラダをじゃがいもをかぼちゃに変えるて作るだけだよ。
テレビでも見て、ちょっと、待っててね〜!」
カカシは額宛と口布を外し、エプロンをして、キッチンに向かった。
(まったく、サクモさんがカカシの素顔を隠させた気持ちはよく分かる。
あれは、ある意味、立派な兵器だよな。
えっ、オレって、それ見ながら飯食うってのか・・・!?)
「カカシ〜、カカシがいつも飯の仕度してるのか?」
「うん、先生はね・・・本当は、出来なくはないんだけど、ほら、色々忙しいし・・・
それに、オレは、先生がおいしそうな顔していっぱい食べてくれるの見るのが、
とっても嬉しいんだ!」
実のところ、先生は、料理は下手だ。
カカシが来たばかりの頃は、無理して作っていたのだが、無理して食べてくれるカカシに申し訳なくって。
お互いのために、我慢はやめようという事になり、それ以来、カカシが料理をするようになったのだ。
カカシは手先も器用で、料理のセンスも中々のものだ。
最初は、料理の本を見ながら作っていたが、今では、一通りの料理は、作れるようになっていた。
もちろん、カカシが疲れている時や、忙しい時は、外食することもあるが、外で食べて、美味しかった料理は、その通りに作ったりもできる程、腕前を上げていた。
ただちょっと困るのは、先生は甘党で、カカシは甘いものが苦手ということだ。
先生は、カカシの作った料理に文句をつける事は絶対にしないが、自分でこっそり、お砂糖をかけたりなんかする。
カカシも、それに気がついた時は、次に作る時は、ちょっと多めにお砂糖を入れたり。
でもそうすると、今度は自分が食べられなくなり、残すと先生が心配するのだった。
カカシは、先生の分も含めて、かなり多めに、3人分の料理を手早く作り上げた。
「さぁ、ゲンマ〜 出来たよ〜!}
「うわぁ〜 すっげ〜!美味そう!」
「いただきます!」
二人は手を合わせて、食べ始めた。
メインはお肉の野菜炒めだが、かぼちゃのバター焼きとかぼちゃのサラダ、
お味噌汁にまでかぼちゃが入ってて、まるでかぼちゃのフルコースだ。
「うっめぇ〜!!! 何これ! 激ウマ〜!!!」
一通りの料理を一口ずつ食べて、ゲンマは大感激だ。
「カカシ、全部美味しいよ!また、料理の腕上げたな〜!」
「そう? ありがとう! 簡単なので悪いけど、
まだ、いっぱいあるから、よかったらおかわりしてね!」
そう言って、カカシはニコっと笑った。
エンジェルスマイル〜!!!
ゲンマは思わずドキっとして、慌ててお箸をポロリと落としてしまった。
(まったく、カカシの笑顔が最高のご馳走だよな・・・
こんなエンジェルスマイルを見ながら、カカシの美味しい手料理を食べられるなんて・・・
ちぇっ、あの先生は、いつも、こんな美味しい思いをしてやがるのか・・・
許せねぇ!)
「あっ、悪い悪い!」
ゲンマは箸を拾って、流しに向かって行った。
箸を洗いながら、ふぅっと、息を吐いて深呼吸した。
(ヤバイな・・・あのカカシの顔見てたら、ドキドキしてきた。
何だかまともにカカシの顔見れないな・・・)
ゲンマは、呼吸を整えるのを、カカシに怪しまれないよう、箸を丁寧に洗い続けた。
「ゲンマ〜 どうしたの〜?」
心配そうな顔で、カカシがゲンマに近づいて来た。
「いやぁ、何でもないよ」
テーブルに戻って、平静を装うのに苦労しながら、食事の続きをした。
他愛もないくだらない話しては、ケラケラ楽しそうに笑うカカシを見てた。
後半は、料理の味も何だか分からなくなるほど、ドキドキは続いていたが、
どうにか食事を済ませた。
「もう少しゆっくりしていってくれるでしょ?
デザートにリンゴむくからさ、ちょっとまっててね!」
そう言って、流しに向かうカカシの後を追って、
「料理は、カカシがやってくれたから、茶碗くらいオレが洗うよ!」
「いいよ〜そんなこと、お客さんにさせられないでしょ!座っててよ〜!」
「二人でやればすぐ終わるだろ!」
「ありがとう、ゲンマ!」
二人は仲良く、食器を洗って片付けた。
カカシはリンゴをむいた。