サクサクと音をたてて、カカシがリンゴを頬張る。
「美味しいね〜 このリンゴ 先生にも帰ったら、剥いてあげよう〜!」
そう言いながら、カカシは、ふぅ〜と深くため息をついて、胸を押さえた。
「どうしたんだよ?そんなため息なんかついて。
リンゴが引っかかったのか?」
「えっ・・・ あっ・・・ちっ 違うよ・・・その・・・ゲンマ・・・」
「何だよ?」
「そっ・・・その・・・ゲンマにひとつ聞きたいことがあるんだけど・・・
誰にも言わないって約束してくれる?
オレ こんなこと聞けるのゲンマしかいないし・・・」
「オレは、カカシのためなら、何だってやるぜ〜!
もちろん誰にも言わねぇから安心しろ!」
「うん、ありがと! 実は・・・オレ・・・
病気かもしれないんだ・・・」
「はぁぁ???
どこが悪いんだ?」
「時々、胸がぎゅうっと締め付けられるように、苦しくなって・・・
それから、しばらく心臓がドキドキして・・・
これって、心臓病なの?
病院行って診てもらった方がいいのかな?」
カカシは、少し恥ずかしそうに、下を向いてぽそっと言った。
(オイオイ!カカシ もしかして、もしかすると・・・それって・・・!?)
落ち着け自分!と、ゲンマは自分自身にまず言い聞かせて、ここはゆっくりと話を進めていかなくてはと思った。
「カカシ その症状は、どんな時に出るんだ?
朝とか夜とか、決まった時間か?それとも突然くるのか?」
「う〜ん・・・どうだろ・・・何時って言われてもな・・・」
カカシは肘をついて、ほっぺに手を当てて、考えている。
「何ていうか・・・走ってもいないのに、心拍数が上がったみたいな・・・!?」
「何かの物体が近づいた時か?何かに反応しているという事はないのか?」
「何かに・・・???
何かって・・・???
そう言われても・・・」
ゲンマは、すでにある確信めいたものがあったが、ゲンマの口からは言いたくはなかった。
どこかで外れて欲しいという思いもあったからだ。
しかし、その思いもあっという間に砕け散った。
何か閃いたように、カカシの目が大きく開いた。
「アッ!!! そういえば・・・」
「ん?分かったか?」
「たぶん・・・きっと・・・そうかも・・・」
「何だよ?言ってみろよ!」
「せっ 先生だよ・・・」
カカシは小声で恥ずかしそうに言った。
「へっ?先生って・・・あの先生かよ?」
「うん・・・そうだよ・・・最近、先生の顔見てると・・・
なんか急にドキドキしてきて・・・
今までずっと一緒に暮らしてきても、何ともなかったのに・・・
どうしてだろ・・・? ねぇ ゲンマ どうして?」
「そっ、そりゃぁ、どうしてって言われてもなぁ・・・
今まで何ともなかったのに、急にドキドキするようになったってことはだな、
何か今までとは違う変化がカカシに起こったってことだろ?」
「変化・・・? オレは何も変わっていないと思うけど・・・」
「いや、だからそれは、自分は気がつかないだけで、カカシの中で何かが変わったということだ」
「何かが変わった?」
「そう、先生に対する気持ちが変わったってことだろ?」
「先生に対する気持ちって言われても・・・
気持ちって何?」
「だ〜か〜ら〜さ!その何て言うか・・・」
(クソッ!何でオレがカカシにこんな説明しなくちゃならないんだ!
カカシが自分の思いに気がついて、先生に告白したら、今まで我慢しているあの野郎は、
もう我慢しなくなるに決まってる!
それは、カカシにとっていいことなのか?
あの先生は、次期火影候補って言われるような人だ。
それにあの性格・・・カカシは苦労するに決まってる・・・!
そんな辛い思いをさせるくらいなら・・・
オレが・・・オレがカカシを幸せにしてやる・・・!)
ゲンマも迷っていた。
少しの間、カカシを見つめながら、考えた。
(カカシのために・・・
やっぱオレじゃぁ・・・
ダメかもな・・・)
ゲンマは、自分の思いをぐいっと飲み込んだ。
「ゲンマ?」
「あぁ オレ、分かったよ! カカシ!」
「えっ?何を?」
「うん、それは・・・
それはだな・・・
カカシが先生を好きってことじゃないかな?」
「えぇぇぇ〜???
先生を好きって???
そっ そんなぁぁぁ〜???」
カカシは顔を真っ赤にして、両手で目を覆い、首を大きく横に振った。