「ありがとうね。カカシのお陰で何とか間に合いました」
「先生、お疲れ様」
「ほんと、久々に集中したから、メチッャ疲れました・・・!」
四代目は、膝の上のカカシの髪を撫でながら、優しい目でじっと見つめている。
「ねぇ、カカシ、除夜の鐘ってどうして鳴らすか知ってる?」
「あぁ・・・確か・・・嫌なこと忘れて、良い年を迎えようって感じだっけ・・・?」
「うん、まぁ、だいたいそんなとこだけど。
じゃぁ、108回の意味は知ってる?」
「ううん、知らない」
「人間にはね、“煩悩”っていって、言い換えると“欲望”って意味なんだけどさ。
それが、108個もあるんだって。
その108の様々な欲望を鐘の音と共に洗い流して、綺麗な生命になって、
新年を迎えましょうってことなんだよ」
「へぇ〜 そうなんだ・・・」
「オレは、金も名誉も・・・何もいらないよ・・・
欲しいのはカカシだけ・・・」
四代目は、カカシの耳たぶにそっとキスをして囁いた。
カカシは、思わずぽっと頬を赤く染めた。
「セ ・ ン ・ セ ・ ェ ・・・
オレも・・・何もいらないよ・・・」
「オレの108の欲望はすべて・・・
“カカシ欲”だな・・・」
「じゃぁ、師匠を求める“欲”は何て言うの・・・?」
「う〜ん・・・何て言うんだろうね・・・」
「“師匠欲”???」
「ハハハ〜 そのまんまじゃん!」
真面目な顔で尋ねたカカシに思わず笑ってしまった四代目。
(カカシったら・・・可愛い〜!)
「オレの108の“カカシ欲”は果てしないから、決して消すことは出来ないよ〜!」
四代目は、カカシの頬を両手で包み込んで、にっこり笑った。
「だから・・・
108回のキスで許してもらうおうかな・・・」
「えっ・・・ 108回も・・・ 数えるの・・・!?」
「あと5分あるんだから、十分間に合うよ!」
チュッ・・・ 「108」
チュッ・・・ 「107」
「先生・・・ だから、声だして数えないでよぉ・・・」
「フフフ・・・ハイ、ハイ・・・」
チュッ・・・ (106)
チュッ・・・ (105)
静かな火影室で、除夜の鐘の音と二人のキスの音だけが聞こえてくる・・・
チュッ・・・ (・・・・・・・)
「明日から、自来也の別荘で、3日もゆっくり出来るなんて嬉しいね〜」
チュッ・・・ (53)
「うん、大勢の方がにぎやかで楽しいよ・・・」
チュッ・・・ (42)
「こんなお正月初めてだよな〜
えへへ〜 自来也のおせち料理・・・ 旨そう〜」
チュッ・・・ (31)
四代目はちらっと、時計を見て残り時間を確認した。
チュッ・・・ (20)
「今年は、カカシも暗部に入って、頑張りました・・・」
チュッ・・・ (12)
「先生も火影になって、頑張りました・・・」
チュッ・・・ (7)
「ほんと、まさかね、オレが火影になるなんて思ってもみなかったけど・・・」
チュッ・・・ (4)
「うわぁ・・・あと20秒くらいだよ!あと何回?」
チュッ・・・ (3)
「大丈夫・・・余裕!余裕!」
チュッ・・・ (2)
「もう、ラスト1回だから・・・
12時ちょうどにね!」
二人は、時計を見て、カウントダウンを始めた。
「10・9・8・7・6・5・4・3・2・1」
チュゥゥ〜
「おめでとう〜 カカシィ〜!
うわぁ〜今年初のキッス!」
「おめでとう〜 先生!」
「又、新しい生命になって、今年もカカシをいっぱいいっぱい求めていきま〜す!!!」
「もぉ・・・先生ったら・・・
真顔でそんなこと言わないでよ・・・」
カカシは、四代目の長い長いキスから開放されて、膝から降りた。
「このまま続きをしたいとこだけどさ、
残念だけど、ちょっと行かなきゃならないところがあるんだ。
カカシ、悪いけど付き合ってくれる?」
「うん、どこに?」
「木ノ葉神社の初詣の警備に就いている人達に声を掛けていきたいからさ。
いくらお正月三が日は、任務休みっていっても、これだけはしょうがないよ。
任務に就いてもらってるみんなに、せめて、ご苦労様って言ってあげないとネ!
で、オレ達もついでに、初詣すませちゃおう」
「さすが、先生だね、じゃぁ行こう!」
二人は、木ノ葉神社に向かって、警備の任務に就いていた中忍達一人一人に、声を掛けていった。
「寒い中、ご苦労様!」
「みんなが休んでいる時に悪いね!」
任務に就いていた中忍達も、四代目の笑顔に寒さも吹っ飛ぶ程、暖かい気持ちになった。
そして、四代目とカカシも、この一年の木ノ葉の里の平和と皆の幸福を祈願して部屋に戻った。
「あぁぁ〜 疲〜れ〜た・・・
カカシィ〜 もう、オレ ダメ・・・」
いつもの三倍もの仕事をした四代目は、部屋に戻ると、バタンキューと先に寝てしまった。
四代目の優しい寝顔を見ながら、カカシはそっと布団を掛けてあげた。
「先生・・・ オレの108の欲望も・・・
全部・・・ 先生だけだよ・・・
おやすみなさい・・・」
カカシは、四代目のほっぺにチュッとキスをして、するりと隣に潜り込んだ。