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カカシの微笑み   4

   

3人はレストランを出て、ゲンマが知っているお店がるあるからと言うので、後を着いて行った。
お洒落な小物が並んでいるいかにも女の子が好きそうな雑貨屋さんだ。
 
「ゲンマ、何でこんなお店知ってるの?」
と、不思議そうに尋ねるカカシに、
「まあね・・・」と笑って、ゲンマは店の扉を開けた。
 
若い店員がゲンマに声をかける。
 
「まぁ、ゲンマ君、いらっしゃい! お友達と一緒なんて珍しいわね〜
あれ、お母様のお誕生日、今月だったかしら・・・?」
「あぁ、いや今日は別件で」
「そう、何かお探しのものがあったら、お手伝いするわよ」
 
店員は愛想よく笑いかける。
 
「うん・・・ 実は、ある人にエプロン贈りたいんだけど、選んでくれる?」 
「ふふ、エプロン、いいわね〜」
「あっ、その娘、こいつくらいの背だから。
こいつに合わせて、可愛いの選んでくれる?」
 
「可愛い」の言葉にカカシがぐいっとゲンマの袖を引っ張るが、ゲンマは無視し、店員にカカシの方を指差して、ウインクした。
 
「はいはい、お姉さんに任せてね〜」
 (ふふふ・・・なんか面白そう・・・)
 
「その人の好きな色って知ってる?」
「えっと・・・ 確か・・・」
 
ゲンマがカカシの方をそっと見ると、
 
「黒と赤」
カカシが小声で囁いた。
 
「黒と赤だったかな〜」
 
店員は鼻歌を歌いながら、エプロンがたくさんぶら下がっているハンガーの方へ行き、中から4〜5枚のエプロンをささっと持ってきてゲンマに見せた。
しかし、カカシを意識したのか、少し地味で男女兼用でもおかしくないものばかりだった。
黒い無地のデニム地のシンプルな物、赤や黄色やラベンダー色の無地のもの、それに薄い水色のギンガムチャックの物など。
カカシは、黒のデニム地のものを手に取って、
(これならオレでもおかしくないな・・・) と思い、
 
「あっ、あのこれなら、きっとあの娘にも似合いそうだよね〜」
 
と、しどろもどろにゲンマたちに言った。
 
「そんなのダメダメ! もっとさ、こうフリフリした可愛いのない?」
「それじゃぁ・・・」
と、言って、店員はもう一度、エプロンのコーナーに探しに行った。
 
「こういうのかしら?」
 
店員が手にして戻ったエプロンは、さっきDVDのパッケージに写っていたようないかにもメイド風の白いエプロンで、大きなフリルが肩と裾にたなびいている。
 
「そ〜そ〜 これこれ!」
 
ゲンマは手に取って、カカシの前に当ててみる。
 
「いいんじゃね?」とゲンマがアスマの方を見ると、「うん、バッチリ!」とアスマも頷く。
 
カカシは顔を真っ赤にして、大きく首を振った。
 
「えっ ダメダメ! こんな可愛いのあの娘には絶対似合わないよ!」
 
カカシは先に店員が選んでくれた方のエプロンをもう一度見直して、薄い水色のギンガムチェックの物を手に取った。
 
「これがいいんじゃないかな?
あの娘にはこれが・・・」
 
ゲンマはそれを手に取って裏側に手を入れたり、生地の感触を確かめたりしている。
 
(まっ、このくらいの薄さだったらな・・・)
 
「じゃぁ、それでいいよ。
お姉さん、大きな赤いリボン付けてラッピングして」
「はいはい、大きな赤いリボンね〜」
 
カカシは、ほっとして店内をぐるりと見渡した。
もうバレンタイン商戦が始まっていて、ハート柄の小物や、可愛いラッピンググッズがたくさん並べられている。
カカシは何気なく見ていたが、ゲンマも演出が大事って言ってたのを思いだし、折角来たのだから、ケーキの箱を買って行こうと思った。
 
「あの〜 すみません、ケーキ用の箱もありますか?」
「もちろん、あるわよ〜!
この辺がそう、ラッピング用の包装紙もお揃いのがあるから。
赤いリボンもいろんな種類があるからゆっくり見てってね〜!」
 
「俺たちのプレゼントはこれにしような」
 
ゲンマは例の白いふりふりのエプロンを指差した。
 
「OK! それとシカク隊長には、あのDVDをあげる様に頼んでおくよ!」
 
二人は吹き出しそうになるのを必死に堪えて、ニンマリと笑った。
 
カカシは小さなハート柄のケーキ用の箱とお揃いのセットで包装紙と赤いリボン、それから、金色に輝く綺麗な紙も選んで店員に渡した。
 
「じゃぁ、これも願いします。
代金はエプロンも一緒で」
 
(あら、ゲンマ君じゃなかったのネ・・・)
 
支払いを済ませて店を出たカカシは。ゲンマとアスマに深々と頭を下げて御礼を言った。
 
「今日はいろいろありがとう!
オレ一人じゃ、絶対こんなアイディア浮かばなかったし・・・
カードは頑張ってカッコイイの作るから大丈夫!
これなら、先生喜んでくれるよね?」
「よ〜し、カカシ、腹は決まったか!
カカシの壮絶な覚悟に、先生涙流して喜んでくれるぜぇ〜!」
 
ゲンマは思わずカカシをぎゅっと抱きしめて頭をくちゃくちゃとかき混ぜた。
カカシはきょとんとして・・・

「腹が決まったって???
壮絶な覚悟って???」
「えっ、カカシさっきの裸エプロンの意味ちゃんと分かったのか?」
「はっ、はっ、は〜だ〜か〜???
裸エプロンって何? どういう意味?」
 
カカシはびっりして目を丸くしている。
 
「カカシ、俺たちの話だけじゃ分からなかったのか?」
「ただ、エプロンするだけじゃないの?」
ゲンマとアスマは、顔を見合わてふうっとため息をついた。
 
「悪い、悪い、俺たちの説明の仕方が少し足りなかったな。
カカシもこれくらい知ってるかと思ってたから」
「ちゃんと詳しく教えて」
 
カカシはちょっとムッとなって、二人を睨み付ける。
 
「だから、その・・・
服は何も着ないで、裸のまま、エプロンだけを身につけるってことだよ」
「え〜 そんなの絶対無理!
そんな恥ずかしいことできない!」
 
カカシは顔を真っ赤にして下を向いて大きく首を振った。
 
(今更恥ずかしいって関係でもないだろ・・・
 裸なんかいつも見られてるんだから・・・)

なんて突っ込みは入れなかったが。
 
「でもな、カカシ、その絶対恥ずかしくって出来ないことをカカシがしてくれたら、先生すっげー嬉しいと思うぜ!  なっ、アスマ!」
「そうそう、カカシよ〜 裸エプロンは男のロマンなんだよ! 夢なんだよ!
がんばれよ〜!」
 
そう言って、アスマがカカシの肩をポンポンと叩く。
 
「本当に・・・ 本当に、そんなことして・・・
先生が喜んでくれるの・・・?」
 
カカシはあまりのショックで頭の中が真っ白になってきた。
 
(オレが笑顔でケーキをあげれば・・・
 それに、スペシャルカードもあるし、
 頑張ってエプロンまで着けるんだ・・・
 それだけで、充分喜んでくれるよ・・・
 何もそこまでしなくったって・・・
 でも・・・
 あぁ、だめだ、こんなところじゃ落ちついて考えられないな・・・)
 
「ゲンマ、アスマ、家に帰って考えてみる」
 
カカシはバイバイと手を振って、二人の前からぱっと消えた。

                                                                              2007/2/19

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