
みかづき島の思い出   4
   
| 先生がフロントに名前を告げると、支配人が慌てて飛んで来て頭を下げた。 「先程、王宮から急にご予約が入りましが、生憎本日はお祭りの最中でお部屋が満室になっておりまして・・・ その・・・ 」 支配人は少し言い辛そうに口ごもってしまった。 「無理でしたら、結構ですよ。 他をあたりますので」 先生が笑って返事をすると、支配人はオレと先生を交互に見ながら、ちょっと戸惑ったような顔をした。 「いえ・・・ その・・・ 実は本館からは少し離れたところにあるコテージになってしまうのですが・・・ お部屋としては、当ホテルの中でも最高のお部屋・・・なのですが・・・ もちろん、お食事はすべて運ばせていただきますので、ご不自由をお掛けすることはありません」 「泊めていただけるなら、どんなに離れてても構いませんよ。 私達は移動は早いですから」 「では、ご案内させていただきます」 支配人はオレたちの大きく膨らんだリュックをカートに載せて運んでくれた。 中庭を通り抜けると、林のような木々の間に細い道が続いている。 結構敷地は広いようだ。 5分位歩くと、2階立てのコテージが見えてきた。 遠くで波の音が微かに聞こえるくらいで、とても静かなところだ。 大きくて立派な玄関に着いた。 「こちらが鍵でございます。 何かご不明な点がありましたら、電話で何なりとお申し付けください。 こちらは長期滞在型コテージになっておりまして、当ホテルでは最高のお部屋でございます。 中には一応キッチンも付いておりますが、木ノ葉隠れ様は国王直々のご招待です。 折角ですので、お食事の方はどうぞご遠慮なくお好きなものをご注文してくださいませ。 また、コテージの前はプライベートビーチとなっておりますので、ごゆっくりお寛ぎください。 外出される時は、フロントに戻らなくても、この先に専用の出口がございますので、そちらから、直接街に出ていただいて構いませんので。 では、失礼致します」 「ありがとうございます。 お世話になります」 先生は鍵を受け取り、頭を下げたので、オレも一緒に頭を下げた。 「凄い豪華なところだね」 そう言って、先生は鍵を開けようと、ドアの前に立った。 ふと目線があるものに注目し、突然大声を上げた。 「えぇぇぇぇぇ〜!!!」  「先生どうしたの?」 「カカシ・・・ この部屋・・・」 ドアの横のインターフォンの上に金色の横文字で・・・   Luxuary Royal Sweet Room と、書かれたプレートが付いていた。 「ぷっ・・・ だからか・・・」 先生はさっきの支配人の戸惑いの表情の意味が分かったような気がした。 「先生、どうしたの?」 「ん! あのね、ここはね、このホテルで一番豪華なお部屋なんだって。 そして、一番幸せな人が泊まるお部屋なんだよ! 先生、カカシとこんな部屋に泊まれて、ホント幸せ!」 先生はオレの方を見て嬉しそうに笑った。 「一番幸せな人???」 オレには、まだ先生の言ってる意味が分からなかったけど、先生が、「さあ、どうぞ」と、ドアを開けて、オレの背中をそっと押して中へ入れてくれた。 玄関だけでも一部屋くらいありそうな広さだった。 ドアを開けると、これまたとても広いリビングに続いていた。 テラスのカーテンを開くと、目の前は青い海! 誰もいないプライベートビーチになっている。 「うわぁぁ〜 すっげー」 先生は、子どもの様に嬉しそうに飛び回って、あちこちのドアを開けている。 バスルームは、大きなジャグジーになっていて、外には露天風呂も付いていた。 オレも先生の後を、一緒に付いて回った。 「2階に行ってみよう!」 吹き抜けの真ん中にある螺旋階段を上がると、左右にドアがあった。 右のドアを開けると・・・ こちら側はオーシャンビューになっていて、ベランダからは青い海が一望出来る。  調度品がアイボリーで統一された広い広い寝室の真ん中には・・・  これまた、豪華絢爛の天蓋付き、白いふりふりレースのベッドカバーの掛かったキングサイズのベッドがど〜んと置かれていた。 先生はベッドにダイビングして、大の字になった。 「うわぁ〜 ふかふかで気持ちいい〜!  カカシもおいでよ!」 「???」 カカシには、まだこの状況が理解できていない。  「ほら、こっち、こっち!」 先生がベッドをパンパンと叩く。 カカシはそろりと先生に近づいて、ちょこんと腰を下ろした。 「何か眠くなっちゃうよね!」 カカシは、後ろに手を付き、ベッドの上を見上げ、不思議そうに呟いた。 「こんな大きなベッド見たことない・・・ お金持ちで幸せな人って、こんなベッドに一人で寝るんだ・・・ あっちにも、もう一つお部屋あったもんね」 「んー、別にお金持ちイコール幸せって訳じゃないと思うけどね。 って、カカシ、広い部屋で一人で寝るの怖いんだ〜!?」 「そっ、そんなことないよ! 一人で寝れるもん!」 カカシはぷぃっと口を尖らせた。 「心配しなくていいよ! このベッドには二人で寝るんだよ。 この部屋は・・・  その・・・ 何ていうか・・・」 (あ〜 スィートルームって何て説明すればいいんだよ・・・!) 「幸せな人ってのは・・・ 凄く仲が良い人達っていうか・・・ たとえば・・・ その・・・ 結婚したばかりの夫婦とかね・・・」  「えぇっ? 結婚!?」 「いや・・・ 別に結婚してなくてもいいいんだけどさ・・・」 「じゃぁ・・・ だって・・・ 先生とオレって・・・ こんな部屋泊まっていいの?」 何となく意味が分かってきたオレは、何だか急に恥ずかしくなってきた。 (カカシったら、顔赤くして! 意味分かったのかな〜?) 「だから〜 いいじゃん、国王のご好意なんだからさ!  もう、深く考えないの!  こんな部屋滅多に泊まれないんだからね、楽しもうよ」 先生は立ち上がって、オレの手を引っ張って、左側の部屋に連れて行った。 薄いグリーンで統一された部屋は、林に向っているので、また、海側とは違った雰囲気が楽しめる。 日光浴と森林浴、好きな方を選べる洒落た作りになっているのだ。 もちろん、部屋の真ん中には、大きな大きなベッドが・・・ 「おぉぉ〜 こっちも落ち着いた感じでいいねぇ! カカシ、今日はどっちで寝ようか?」 「先生の好きな方でいいよ・・・」 「う〜ん、迷っちゃうねぇ・・・  そっだ、折角だからさ、三日間、ここに泊めさせてもらおうよ!」 「えぇっ? でも、国王のご招待は今晩だけでしょ? 明日、返書を貰ったら、出なくっちゃいけないんじゃないの?」 「明日の晩に取りに来てってことはさ、その時間じゃ、もう船はないだろうし、 二泊はいいと思うんだよね。 だから、あともう一泊を追加してもらって、自分達で支払えばいいし」 「えぇ? でも、とっても高そうだよ・・・」 オレは、幾ら位かかるかなんて想像もつかなかったけど、Sランクの任務を幾つこなしてもまだ足りないような気がした。 「いいの、 カカシはそんなこと心配しなくて! 先生に任せてよ! 何てったって、先生とカカシは一番幸せな人達なんだからさ! ね!」  先生は、パチリとウインクして、オレの頭をくしゃりと撫でた。 「さぁ〜 お買い物行こう! カカシの水着と浴衣買うんだからね!」 | 
2007/10/6
