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みかづき島の思い出   5
   

それから、先生とオレは私服に着替えて、街に買い物に出かけた。
メインストリートの両側には大きな店が並んでいて、その道や店先には、
「祝 国王在位五周年」とか「記念セール」と書かれた看板や垂れ幕があちらこちらに掛けられていた。
すれ違うのもやっとなくらい大勢の人で賑わっていた。
人々の表情も皆明るく、活気に満ち溢れている。
国中あげて、お祭りを楽しんでいるようだ。
  
「みんないい顔してるね。 
これってやっぱりあの国王のお力なんだろうな。
どんなところでも、その“長”の思いが人々の表情に表れるもんなんだよ。
そりゃ、木ノ葉が一番だと思うけどさ、カカシもこの国のみんなの顔忘れないでね」
「うん」 
「それにしても凄い人だな〜
カカシ、 迷子にならないようにね」
 
そう言って、先生はオレの手をぎゅっと握ってくれた。
 
「まっ、万が一逸れてしまっても、先生はカカシのことすぐ見つけられるから大丈夫だけどね」
 
先生は、自信たっぷりにへへ〜んと人差し指で鼻を突いて笑った。
 
「まず、最初は浴衣買おう!」
 
ホテルの部屋に置いてあった観光MAPを開きながら、呉服屋さんを探す。
 
「ん〜 もう少し先みたいだ」
 
オレは両側のお店をきょろきょろと見回しながら、先生に手を引かれて、歩いていた。
木ノ葉の夏祭りもかなりの人出があるが、ここはその何倍もあるような気がした。 
しばらくすると、呉服屋に到着した。
 
「ここみたいだね」
 
先生とオレが店に入って行くと、「いらっしゃいませ」と、和服を着た女性の店員がさっと近づいて来た。
 
「何かお探しですか?」
 
「オレとこの子の浴衣が欲しいんですけど。
よく分からないので、適当に見繕ってくれませんか?」
「まぁ・・・ おっ、お任せください。
お二人なら、何でもお似合いでしょうね〜」
 
店員は何か言いた気だったが、そそくさと浴衣コーナーに飛んで行き、両手に三〜四着の浴衣を持って戻って来た。
 
「さぁ、こちらの試着室へどうぞ」
 
そう言って、店の奥の方にある畳が敷いてある一角へと、オレたちを案内してくれた。
そこは壁に大きな鏡付いていて、また別に後ろ姿も見れるような鏡も置いてあり、カーテンで仕切られるようになっていた。
 
「あぁ、 別に着なくてもいいですけど・・・」
 
先生が少し面倒くさそうに言うと、店員は残念そうな顔をして、
 
「じゃぁ、上から羽織ってくださいね。
これなんかどうかしら。
お客様は、綺麗な御髪をしてらっしゃるから、この藍色がお似合いだと思いますよ」
と、言いながら、先生の肩に浴衣を掛けた。
 
「こちらの可愛い僕ちゃんは、こっちの白地の浴衣がいいと思いますよ。
これね、色違いでお揃いになってるんですよ!」
 
今度はオレの後ろに回って、店員が白い浴衣を掛けてくれた。
先生は浴衣に腕を通し、鏡を見ながら、両手を広げて袂を持って、「どう?」ってオレに問いかけた。
どうと言われても、浴衣のことなんかさっぱり分からないオレは、何て言ったらいいのか、言葉を捜していると、横から店員が割り込んで来た。
 
「まぁ〜 お二人共、とってもお似合いですよ! 
御髪が金色と銀色なんて!
お二人が並ぶと、何て素敵なんでしょう!」
 
店員の興奮したような大声に、他の店員やお客さんまで何事かと集まってきた。
「きゃ〜 カッコイイ〜!」 なんて黄色い囁き声があちこちであがった。
オレは恥ずかしくなって、下を向いた。
確かに先生は何を着てもカッコイイから、普通にしていても人目を引くのに、浴衣姿の先生は、また洋服とは違った趣があって、女の人が見惚れてしまう気持ちはオレにだってよく分かる。
 
「お次はこれをどうぞ」
 
店員が二着目を肩に掛けてくれた。
先生には周りの声が聞こえないのか、堂々としている。
 
「うん、こっちもいい感じだねぇ〜 
うわぁ〜 カカシったら、可愛い〜!」
 
何も言えずに顔を赤くしたまま呆然と立ち尽くすだけのオレに、先生は平気な顔でそんなこと言うもんだから、オレは益々頭に血が昇ってしまった。
もうどっちでもいいから、早くこの店を出たくなった。
 
「ねぇ カカシ、どっちがいい?」
「えっ・・・ あっ・・・ その・・・ どっちでも・・・ 
先生が好きな方でいいよ・・・」
「そぉお・・・ あっ、まだ、あるよね?」
 
先生は振り返って、店員に向って言った。
 
「はいはい、こちらもお勧めですよ〜」
 
店員は嬉しそうな顔で、3着目を先生の肩に掛けた。
オレの肩にも3着目が掛けられた。
オレはもうまともに鏡が見れなくて、下を向いたまま立ち尽くすばかりだった。
 
「ん〜 迷っちゃうな・・・
でも、やっぱ最初のが一番いいかな。
何てったって、お揃いだしね!
カカシ いい?」
「うん」 
「じゃぁ、最初のください」
「ありがとうございます。
帯も合わせた物をご用意させていただきますので。
宜しかったら、御召しになって帰られますか?
着付けて差し上げますけど」
「う〜ん、帯締めるだけでしょ?
そのくらいなら、たぶん・・・ オレにも出来ると思うんだけどな」
「えぇ、でも折角素敵なお二人ですから、たとえ浴衣でも、
きっちりと着こなしていただきたくって。
途中で着崩れしでもしてきたら・・・
ご自分で着るのとでは、やはり・・・ 違うものなんですよ。
別に今でなくても、明日のお祭りの前に、お越しいただいても結構ですよ」
 
店員は、どうしても先生に着付けしたかったのか、少し強引で引き下がろうとはしない。
先生も根負けしたのか、
 
「じゃぁ、明日の夕方にお願いします」
と、渋々承諾した。
 
「では、このままここに置いていってください。
洗って、すぐ着れるように準備しておきますので」
 
店員はなぜか嬉しそうに微笑んだ。
 
「お手数おかけします」
 
先生が支払いをしようとお財布を後ろのポッケから取り出すと、はらりと一枚の金色のカードが床に落ちた。
店員が拾おうと腰を屈めて、そのカードを手に取った。
 
「えぇぇぇぇぇ〜
こっ、このカードはVIPカード! 
もっ、申し訳ありません」
 
店員は、驚いて頭をぺこぺこと何度も下げ続けた。
 
「最初にご提示してくだされば・・・
お茶も出さずに失礼いたしました。
御代の方も、そのカードをお持ちの方からは税金を頂かないように言われてますので、10%はお引きいたします」
「えっ? そうなの。 知らなかった」
「他のお店でお買い物される時も、どうか最初にカードをお出しになってくださいね。
きっと色々なサービスが受けられると思いますので」
「そういえば、一緒に案内の紙が入ってたけど、よく読んでなかったんだ。
でも、着付けは、このカード持ってるって知らなくてもしてくれたんでしょ?
元々、サービスのいいお店なんですよね!」
「ありがとうござます」 
「カカシ、じゃぁ、これからの買い物も楽しみだね!」
 
こうして、支払いを済ませて、やっと呉服屋さんを出ることが出来た。
何だかどっと疲れたオレは思わずほっとため息をついてしまった。
 
「ん? カカシ、疲れた? 
カカシったら可愛いから、どこに行っても囲まれちゃうねぇ〜」
「違うよ・・・ みんなが見てたのは先生の方だよ・・・」
「あはは〜 そんなことないよ〜! カカシが可愛くて、可愛くて、ね!
それにしても、あのカード凄いカードなんだね!
有難いことだよね〜 お客さんからは税金を取らないなんて!
それだけ、この国が豊かってことなんだね。
っていうより、国王の心が豊かってことかな。
さぁ、お次は水着!
今度は向こう側を歩いてみようか」
 
そして、先生とオレは通りの向かい側に渡った。
美味しそうな匂いがする飲食店、島の名産品が並ぶお土産屋、色んなお店が続いたが、女性の衣料品店はあっても、中々男性用のお店がなくて、しばらくぷらぷらと歩いていた。
  
「あっ、このお店、いい感じだね〜」
 
そう嬉しそうに先生が指差したお店は小洒落たサーフショップだった。
お店の中に入ると、落ち着いた店内には、サーフボードが並べられ、洋服や水着はもちろん、マリングッスなどの小物もたくさん置いてあった。
 
「すみません、子ども用の水着もありますか?」 
「はい、あちらがキッズコーナーになってますので、どうぞ」
 
そう言って、日に焼けた若い店員が案内してくれた。
 
「こちら様のですか?
大体この辺りのサイズが丁度良いかと思います。
ご試着なさっても結構ですよ」
 
店員はカカシに合いそうなサイズの水着を数枚出してくれた。
 
「うわ〜 カッコイイねぇ!
カカシ、どれがいい?」
 
オレはどれでも良かったのだけど、すぐには決められずに、少し迷って、眺めていたら、先生が急に、店員にこう尋ねた。
 
「あの〜 大人とペアになってるのってありますか?」
「えぇ、ありますよ」
「何だか、先生も欲しくなっちゃたよ
どうせなら、水着もお揃いでね!」
 
店員は、さっと向うの大人用の水着コーナーから3着程水着を持って戻って来た。
そして、今度はそれとお揃いの子ども用の水着を探し出し、
そして、それぞれをペアにして近くのテーブルの上に並べてくれた。
 
「えへへ〜 やっぱ、お揃いの方がいいねぇ〜 
どれにしよっか・・・」
「色も同じってゆうより、色違いでお揃いってのもいいと思いますよ!」
「う〜ん、これ、どう?」
 
先生は鮮やかなマリンブルーの水着を選んだ。
先生の瞳の色と同じだから、とっても良く似合ってる。
 
「カカシは、何色がいいかな〜?
そうだ、お兄さん、この子にアロハシャツも選んでくれる?」
 
店員はカカシを見つめ、何だか少し楽しそうに、キッズーコーナーを歩き回って、幾つかのシャツや短パンをコーディネートして持ってきてくれた。
 
「水着はこのカーキ色なんでどうかな?
可愛い顔してるから、色はちょっと渋めがいいと思うよ、
でも、アロハシャツはこの薄いピンクが似合いそう」
 
次々と、店員がカカシに洋服を宛てていく。
 
「それから、長袖は持ってる? 肌が白いからね、長袖のパーカーとかは必需品だよ!」
「そっか、長袖なんて持って来てなかったよ。
じゃぁ、もうそれ全部ください!」
「毎度あり〜」
 
オレは、びっくりした。 何もそんなに買わなくたって、水着だけでよかったのに。
 
「えっと、あぁ、そうだ忘れてた、これ使っていい?」
 
先生があのカードを見せると、店員はびっくりして、頭を下げた。
 
「うわぁ〜 お客さん そのカード持ってるんですか!
もちろん、10%は値引きさせていただきますけど・・・
あっ、ちょっと待っててくださいね」 
店員はお店の中をさささっと周り、手にいくつかの品物を持って戻ってきた。
 
「はい、おまけ! たくさんサービスしておきますよ!
この島は紫外線強いからね、海水浴する時はくれぐれも気をつけてね!
特にこのお坊ちゃまは、あまり焼きすぎないほうがいいですよ」
 
店員は、優しそうな笑顔で、カカシに帽子を被せ、長袖のパーカーを着せ、そして、サングラスまでかけてくれた。
 
「うん、このくらいしなくっちゃね」
 
先生はオレの姿を見て、思わず吹き出して笑っている。
 
「ははは〜 カカシったら、何か怪しいよ〜」
 
オレは近くにあった鏡を見て、恥ずかしくなった。
すぐ取りたかったが、折角のお店の人を好意を目の前で外すわけにはいかない。
お店を出るまで我慢しようと思った。
 
「色々ありがとうございました」
 
両手に大きな紙袋を持った先生が御礼を述べると、
 
「みかづき島を楽しんでってくださいね〜」
と言って、にっこり笑って、手を振ってくれた。
 
オレは、店を出ると、また、どっと疲れが出て、ふぅっと大きなため息をついてしまった。
 
買い物を済ませて、ホテルに戻った時は、もうへとへとだった。
 

                                                                              2007/10/13

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