共戦共生 共誓共願 7
ひ〜ふ〜と息を吐いて、心臓のドキドキを抑えようと必死になる。
まだご飯を食べるだけなんだから、今からこんなでどうするんだよ!
しっかりしろよ!と自分を励ます。
それから、食べることに集中したから何とか食事は普通に済ませることが出来た。
でも、食器を洗いながら、もうドキドキしてきて、オレは皿を落として割ってしまった。
ガチャンと大きな音にカカシがびっくりして飛んで来た。
「わ〜 先生、大丈夫?」
「ごめん。ごめん」
オレはガラスの破片を一つ一つ拾う。
掃除機を持って来たカカシが、
「細かいのは吸っちゃうね」 と言って、掃除機をかけ始める。 「先生・・・ 何かあったの?」
小首をちょこんと傾げて心配そうな顔でオレを見上げるカカシ。
敏感なカカシは普段と違うオレを感じとってしまったのだろう。
自分のうろたえぶりに情けなくなる。
「ううん、何でもない。 ごめん、心配かけて。 ここんとこちょっと寝不足ぎみで」
オレは、ハハハ〜と頭を掻いて、笑ってごまかした。
もう、ダメだ。 酒だ!酒! こうなったら飲んで、酔った勢いで言うしかない!
オレは日本酒を持ってテーブルに戻った。 コップに注ぎ、冷酒のまま一気に飲んだ。
すると、カカシがまた心配そうな顔で見つめてくる。
大事な任務の話なら、自分には話せないと思っているから、それ以上は何も聞いてこない。 「先生、折角、今日は早く帰ってこれたんだからさ、早く寝たほうがいいよ。
寝不足解消しなくっちゃね。 また、いつ夜中の任務に呼び出せれるかもしれないし」 「あぁ・・・ うん・・・ そうだよね。 でも、もうちょっとだけ飲みたいんだ」
「もう一杯だけだよ〜 先生」
「そっ、そうするよ・・・」
今だ! 今しかないだろ! がぁ〜っと言って、すぐ寝ちゃえばいいんだ!
ほら! ほら! 早く! あの言葉を言うんだよ〜!
「オレも風呂入ってきちゃおう〜」
あの言葉を発しようとした瞬間に、カカシは目の前からするりと消えた。
まだ、大丈夫だ、戻って来てから言えばいいんだ。
ほら、深呼吸! はい、息を吸って〜 吐いて〜!
しばらくして、風呂から上がったカカシがパジャマに着替えて戻って来た。
「先生も、ほら歯磨いておいでよ。 オレも今日は先生と一緒に早く寝るから」
「あ〜 あの・・・ カカシ・・・」
「うん? 何?」
「えっと・・・」
ダメだ・・・ 心臓がドキドキして、呼吸が上手く出来ない。
オレは思わず胸を擦った。 「先生、大丈夫? また、顔が真っ赤だよ。もしかして、熱でもあるんじゃないの?」
カカシがそっと近づいてきて、オレの額に手を当てた。 「う〜ん、やっぱちょっと熱いかも」 カカシは体温計を取りに行く。 オレはカカシにこの心臓の音が聞かれてやしないかと恥かしくなって、まともにカカシの顔が見られない。 はぁぁ〜と深い溜息が出てきた。
もう・・・ ダメかも・・・
オレはがっくりと肩を落とし、両手で顔を覆った。
カカシが戻って来て、そんな姿を見られてしまった。
「はい、測ってみて」
言われた通りに体温を測ってみるけど、もちろん、熱なんてあるわけない。 ピピっと音が鳴ってカカシに手渡すと、ほっとしたようにカカシがオレの顔を見つめた。
「良かった! 6度3分。 でも、先生、早く寝ようね〜」 そう言って、カカシはぐいっとオレの手を握り、洗面所へと歩き始めた。 何が何でもオレを寝かすつもりだ。 思わずカカシの手をぎゅっと握り返してしまった。
「先生?」
「あはは〜 ごめん。 何か、カカシに心配かけてるみたいで・・・」
「先生はオレに何も言ってくれないけど、オレだってこれでも先生のことちゃんと見てるんだよ。
いくら任務優先でも、倒れちゃ元もこうもないでしょ。 先生は無茶ばっかするけど、もしも先生が倒れたら、みんなにも迷惑かけちゃうしね!」 「ごめん・・・ カカシ・・・ オレ・・・」 カカシの笑顔を見ていたら、胸がいっぱいになって、また、呼吸もまともに出来なくなってきた。 とりあえず、歯を磨こう。 そして、落ち着くのだ。 そう自分に言い聞かせた。
歯を磨き終わって、寝室戻ったら、カカシはもうベッドに腰掛けていた。
オレの姿を見たら、「おやすみなさい」と言って、布団に入ってしまった。
終わった・・・
すべてが・・・
終わった・・・
もう・・・
何やってんだ! オレ・・・
身体全身の力がどっと抜け、ベッドまでの数歩をやっとのことで歩いた。
オレは、今日何度目か分からない大きな溜息を吐き、倒れるようにベッドに入り、布団をばさっと頭から被って目を閉じた。
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2008/4/16