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共戦共生 共誓共願   9
   

墨が乾いてから、巻物を巻いてぎゅっと握り締めた。
カカシにこの想いが届くようにと願い、そっとキスをして胸のポケットに閉まった。

「これでよしっと!さぁ、今日こそは頑張るぞ〜!」
と、自分を励ましながら、火影室を後にした。
 
家に戻ると、カカシはすでに夕飯の支度を終えていた。
「お帰りなさい」と、いつものように笑って迎えてくれたけど、どこか表情がぎこちない。
オレが大事な話があるって言ったんだもの、仕方ないよね。
カカシはそれ以上何も言わずにオレの言葉を待っている。
うわ、もうドキドキしてきちゃった。
オレは、呼吸を整えるために、洗面所に行き、顔を洗った。
顔をパンパン叩いて、気合を入れた。
これじゃまるで、決戦に向う時の出陣のようだと自分で可笑しくなる。
こんな怖い顔してちゃダメだよな。鏡を見て、にっこり微笑み、オレは歩き出した。

「よし!行くよ!」
 
今日は何が何でも言うつもりだったから、すぐにリビングの椅子に座って、キッチンにいるカカシを呼んだ。
 
「カカシ〜 ちょっとここに座って」
カカシは神妙な顔をして、ゆっくりと椅子に座った。

「今日の任務はどうだった?」
「はい、特に問題はなく、無事に終わりました」
「そう、良かった。カカシはオレの班じゃなくても、誰とでも上手くやっていけるよね?」

突然の話にカカシは驚き、何て言葉を返していいのか分からない。
 
「はっ・・・班の編成が・・・変わるんですか?」
 
普通なら一度組んだ班はそう簡単には変わることはないものだ。
もう上忍になったから、先生が担当から外れてしまうのだろうか・・・
それとも、何か自分に問題があったのだろうかとカカシは様々な可能性を考えてみる。
 
「先生・・・?」
不安げな顔でカカシはオレを見つめた。
 
「ん・・・その話は後でね
それより、オレの誕生日のプレゼントのことなんだけどさ」
 
一言話ただけで、心臓が口から飛び出しそうな程、緊張してきた。
たぶん、笑っているようで、顔もかなり引きつっているだろう。
でも、もう「プレゼント」と言ってしまったのだ。ここまで来て後戻りは出来ない。
 
「欲しいものが決まったから、お願いしてもいいかな?」
 
さっきまで戸惑っていたような表情をしていたカカシの顔がぱっと明るくなった。

「うわっ?ホントに?先生考えてくれたんだ〜」
「えへへ・・・びっくりしないでね」
「そんな・・・何言われてもびっくりなんかしないよ!
だって、先生が欲しいもの言ってくれるなんてとっても嬉しいんだからさ!」
 
オレはすっと立ち上がり、カカシの横に歩み寄った。
 
目を閉じて、もう一度あの言葉を心の中で繰り返す。
息を吐いて、目をゆっくりと見開き、カカシを見つめた。
ん!大丈夫!
 
「誕生日にはカカシが欲しい」
 
最高の笑顔で、穏やかな声でそう告げた。
 
やった〜!
言えた!言えた!オレはもうそれだけで満足だった。
昨日、あれだけの思いをしてもこの唇から出すことが出来なかった言葉をついに言えたのだから!
カカシは目を真ん丸くして固まっている。そりゃそうだよ、びっくりするなっていうのは無理だって。
 
「驚かせてごめんね。びっくりしたよね。でも、これ冗談じゃないから。
オレ、本気だから」
「先生・・・」
 
カカシはやっとのことで、小さな声でオレの名前を呼んでくれたけど、その次の言葉は出てこなかった。
  
「意味分かる?オレがどうしたいかって。
オレね、カカシのことが大好きなんだ。ずっとずっと好きだった。
カカシへの想いが日に日に大きくなっちゃって。
この想いを告げるのも散々迷ったけど、ごめん、でも、もう我慢出来ない。
それにね、本来なら、カカシが上忍になる時に、閨房術は受けなければならなかったんだけど、まだ早いからって延期させたんだ。いずれはちゃんと受けることになる。
オレがしてやれればいいんだけど、そうもいかなくなりそうだし、オレ、他の誰かじゃ許せそうもない」
 
意味ありげな言葉にカカシは不安を隠しきれない顔をしている。
 
「オレは、カカシの初めての相手になりたかったの。
修行や任務としてではなく、オレの思いで抱きたかったんだ。
でもね、だからと言って、無理やりにするつもりもないから。カカシにはゆっくり考えてもらいたい。
誕生日までに返事をくれればいいから」


カカシはオレから視線を逸らした。
言いたいことは全部言ったけど、オレの思いは伝わったのだろうか・・・
 
「ごめんね。カカシ、突然こんなこと言っちゃって」
「せっ・・・先生・・・あの・・・オレ・・・」
 
カカシは顔を真っ赤にして下を向いたままだ。
 
「ちょっと待ってて」
 
カカシはそう言って、突然ぱっと立ち上がりオレに背を向け、寝室に入ってしまった。
 
わわわ・・・カカシ怒ってるのかな・・・?
これって、パターン1でもなければ、2でもないよ。どうしよう・・・
でも、ここで待つしかないか。
 
ちょっとと言っても1分1秒が恐ろしく長く感じられる。まるで時が止まってしまったみたいだ。
オレは何も出来ずに只呆然と時計の針だけを見ていた。
 
静かな部屋で時計の音とオレの心臓の音だけが聞こえてくる。
 
どのくらい時間が経ったのだろう。
まるで時が止まってしまったように物凄く長く感じられたが、実際はほんの5分位のことだったのかもしれない。
カカシは寝室から、顔を見せないまま、小さな声で、「先生・・・」と呼んでくれた。
心臓がドキドキして口から飛び出しそうだ。
寝室に入り、一歩一歩恐る恐る近づき、カカシの前に立った。
カカシがごくりと息を呑んだのが分かった。
カカシの頬はほんのり薄桃色に染まっているように見えた。
 
「先生・・・さっきのプレゼントのことだけど・・・本当にオレなんかでいいの?」
「カカシ・・・意味分かった?」
「うん・・・でも・・・ごめん、先生、何だかまだ信じられなくて・・・本当に先生がそんなものが欲しいのか・・・」
「カカシ、オレね、本当のこと言うと、もうずっと前からカカシが欲しくて欲しくてしょうがなかったんだ。
でも、まだカカシには早いかなって・・・オレがこんな風に思ってるって知られたら、嫌われちゃうかなと思うと怖くて怖くて・・・言えなかった。

でもね、オレは決めたんだ。自分に正直になるってね。
だから、オレはカカシが欲しいです。カカシを抱きたいんだ」
 
カカシの肩が震えているのが分かった。
 
あぁぁ・・・カカシ、泣いちゃった?
やっぱ、ダメなのかな・・・
 
「だから、カカシ、今すぐにじゃなくていいから、ゆっくり考え」
 
て、と言う前に、カカシが突然オレに抱きついてきた。
 
「先生・・・先生・・・先生・・・いいの?ホントにオレで・・・?」
「ん!カカシがいいの!」
 
カカシの頬に一筋の涙がすうっと伝い零れた。
カカシはオレの胸に頬を摺り寄せ、小さな小さな声で、
 
「いいよ・・・」
 
と、言ってくれた。
 
「えっ?えっ?えぇぇぇっ〜?今、カカシ何て言った?」
 
わあぁ! 信じられない!
今、「いいよ」って? 「いいよ」って言ったの?
聞き間違えじゃないよね? ちゃんと確かめた方がいいよね。

「ねぇ、カカシ、お願いだから、もう一度、オレの顔を見て言ってくれる?」
 
カカシはオレを見上げて、今度はしっかりと目線を合わせて、大きな声で言ってくれた。
 
「いいよ!オレも先生が大好き!だから、先生のお誕生日にはオレをプレゼントします!」
「ありがとう、カカシ」
 
オレは、天にも昇るような思いで、ぎゅうっと力いっぱいカカシを抱きしめた。
 
 

                                                           2008/5/15

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