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共戦共生 共誓共願   12
   

カカシがこそこそと動いている気配をうっすらと感じる。
まだテーブルに何か置いているみたい。
少しして、カカシが座ったのが分かり、カカシの優しい声がやっと耳に入ってきた。
 
「先生・・・いいよ・・・目を開けて」
 
そっと、目を開くと・・・
 
テーブルの上には、隙間がないくらいご馳走が並べてあって、窓ガラスには「先生お誕生日おめでとう!」と、書かれた紙が綺麗なリボンで飾り付けられ貼ってあった。
そして、もちろん、テーブルの真ん中には、大きなバースデーケーキと綺麗なお花のアレンジが置かれていた。
オレの大好きな苺のケーキだ!
オレは嬉しくって、思わず「わぁぁ〜」と叫んでしまった。
毎年、誕生日には、沢山の心のこもったご馳走でお祝いしてくれるけど、間違いなく今までで一番豪華だった。
もちろん、量の多さを喜んでいる訳ではないけれど、何より自分を喜ばせようというカカシの心が嬉しかったのだ。
 
「先生、お誕生日おめでとう〜!ろうそくに火をつけるからね」
そう言って、カカシはろうそくに火を灯してくれた。
 
「ハッピィバースデートゥ〜ユ〜♪
ハッピィバースデートゥ〜ユ〜♪
ハッピィバースデーディアせんせぇ〜
ハッピィバースデートゥ〜ユ〜♪」
 
カカシが歌を歌ってくれた。
「ありがとうね、カカシ」
「はい、先生、ふうして」
 
オレがふぅっと火を消したら、カカシが突然カメラを出してぱちりと写真を撮ってくれた。
 
「うわぁ、びっくりした!カカシたら、写真撮るなら最初に言ってよ、オレ凄く変な顔してたかも」
「大丈夫、ちゃんとカッコイイ顔で撮れたよ!
火影になるって決まった時のお誕生日だもんね、ちゃんと記念に残さなくっちゃと思って。
じゃぁ、もう1回。先生笑ってよ」

そう言ってカカシは写真を何枚も撮ってくれた。
 
「先生、オレからの最初のプレゼントは、ご馳走とケーキね!」
「こんなにいっぱい食べきれるかな〜?いただきま〜す!」

どれも、オレの大好物ばかりだ。
カカシが小皿に一口ずつ取り分けてくれた。
 
「うん、とっても美味しいよ〜!あぁ、幸せ〜!カカシ、また腕あげたみたいだね」

カカシの心のこもった料理は、最高に美味しかった。
オレは、次から次へと、食べまくった。
そんなオレをカカシも嬉しそうに見ながら、自分でも食べ始めた。
 
「あぁ、良かった。これなら、大丈夫だね」
「カカシ、ケーキも食べたいな〜切ってくれる?」
「え〜先生、もうケーキ?」
「うん、いいのいいの、一緒に食べるの」
 
カカシがケーキを切って、お皿にのせてくれた。
ふわふわのスポンジケーキと甘いクリームと苺が口の中でとろけた。

「もぉ〜、最高〜!すご〜く美味しいよ〜!」

カカシのケーキはそこいらのお店で売ってるケーキよりも断然美味しいんだ。
甘さも柔らかさもオレ好みで!
オレはパクリパクリとケーキを頬張った。
そんなオレをカカシがじっと見ている。
えっ、クリームでも付いてる?

「それから・・・もう一つの・・・先生の・・・リクエストのプレゼントは・・・
えっと・・・オレ・・・」

カカシは顔を真っ赤にして、何か言いたそうだ。
 
「カカシ・・・」

そんな健気なカカシを見ていたら、何だか急に胸がいっぱいになってしまった。
もう、美味しいご馳走もケーキも喉を通らなくなってしまったみたい。
フォークを置いたオレにカカシが心配そうな顔をしている。
 
「先生・・・?どうしたの」
「あはは〜何だか胸がいっぱいで・・・
ごめん、カカシ、全部食べられそうにもないや。残りは明日絶対食べるからさ」
 
いつも残さず綺麗に食べる先生が、料理を残すなんて初めて見たカカシだったけど、
胸がいっぱいとの言葉を聴いて、その気持ちはよく分かるような気がした。
だって、自分もさっきから、食べ物が全然喉を通っていかないような感じだったから。
 
「うん、オレも・・・ご馳走さま」
「ご馳走さまでした。オレが後片付けするから、カカシはお風呂に入っておいで」
「え〜そんなことお誕生日の先生にさせられないよ。また、お茶碗割られたら困るし・・・」
「大丈夫だよ、このくらい任せて」
 
オレはカカシの腕をぐいと引っ張り、カカシの背中を押してバスルームに向かわせた。
残った食べ物にはラップをかけて、冷蔵庫にしまった。
 
もうすぐ・・・
と思うと、心臓がドキドキしてきた。
ダメダメ、今はお茶碗を洗うことに集中しなくっちゃ・・・
と思った瞬間、茶碗がするりと床に滑り落ちた。
 
ガシャン・・・
 
あちゃぁぁ・・・また、カカシに怒られちゃう・・・
オレは飛び散った欠片を手早く広い集めて、カカシにバレないよう新聞紙に包んでゴミ箱に捨てた。
 
しばらくして、カカシが風呂から上がってきた。
カカシったらオレとは視線を合わせず、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して飲んでいる。
オレもそんなカカシと目が合わせられずに、入れ違いに洗面所に行き、歯を磨く。
 
 
ずっと待ち焦がれていた運命の瞬間が・・・
近づいてきた。
 
 
 

                                                           2008/6/25

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