「一緒に飛べるって?チャクラを手に集中って?
四代目、申し訳ありませんが、術の説明を初めからちゃんとしてください。
俺等、頭悪いんで、全然わかりませんて!」
ゲンマは、やっとのことで、思っていることを口に出せた。
ライドウも同じだと言わんばかりに頭をうんうんと大きく振っている。
「ごめん、ごめん、悪かったね。これから教えるのは“飛雷神の術”。
“瞬身の術”に“口寄せの術”を応用させて、オレの書いた術式に瞬時に飛んでいけるとっても便利な術なんだよ」
ライドウとゲンマの身体が凍りついたように固くなる。
「黄色い閃光」という通り名の所以は、“瞬身の術”の人知を超えたその驚くべき速さからであることは、誰もが承知のことだ。
更に、術式のマーキングをつけたところなら、瞬時に飛んでいけるという、まさに四代目を代表する術なのである。
そんな高難度の術を自分達が会得できるわけがない。
(なぜ? どうして俺達に?)
(そんなの無理っしょ! 絶対無理!無理!)
しかし、ここで、「できません」という言葉を出せる勇気も二人は持ってなかった。
不安げな二人を見ながら、四代目は説明を淡々と進めた。
「君達の不安な気持ちも十分わかるよ。確かに、この術を一人でできるとは思っていない。
チャクラの消費がすごく多いから、無理なんだよ。
だから、こうして、手を繋いで3人ですればできるかな〜?って思ってね。
ちょっと、実験台になってもらったって訳」
「3人でするんですか?」
「そ、チャクラ量考えると、その方がいいかな。
一人ですると、行きは良くても、帰りが足りなくなっちゃうからね」
「ええっ? 俺達と火影様が? 一緒に飛ぶんですか?」
と、ゲンマが大きな声で叫んだ。
「違うよ。オレは一人でできるって!
一緒に飛んでもらうのは、カカシだよ。
カカシはすぐにこの術をマスターしたんだけどさ、
チャクラが足りないのに、やっぱ、無理しちゃうんだよね。
帰りにこれやっちゃうと、もう、倒れそうになるからさ。
一日、一回だけってことにした。
ま、オレがカカシを抱いて、一緒に飛んで帰ってくれば済むことなんだけどね。
恥ずかしがり屋だからさ、そんなことされる位なら、倒れてでも一人で帰るって。
カカシあれでも、結構頑固なとこあるから、オレの言うこと聞いてくれないんだよね。
で、君達なら、付き合いも古いし、カカシも信頼してるし、チャクラの相性もいいんじゃないかなって思って。あ、まだ、カカシには言ってないんだけど。
とりあえず、3人で飛ぶのことを成功させないとね。
論理的には、可能なんだけど、後は、君達の頑張り次第だ」
ライドウとゲンマは身体から、す〜っと力が抜けていくのを感じた。
四代目とカカシの親密な関係は、隠し事を嫌う四代目の性格から、暗部の中では最早知らない者はいないという程、公認の仲になっている。
「ってことは・・・俺達のチャクラで・・・」
「カカシをサポートする・・・? ってことですか?」
「ピンポ〜ン!正解で〜す!」
「はいはい、そういうことだったんですね」
「だってさ、カカシがチャクラ切れになって倒れちゃったら、大変でしょ?
カカシが大変になるってことはオレが大変になって、木ノ葉も大変になるってことだからね!」
呆れ顔で目を見合わせるライドウとゲンマに、少しも悪びれた様子もなく、当然だとばかりに話を続ける四代目。
この笑顔でお願い事をされたら、断れる筈もない。
「わかりました。四代目とカカシと木ノ葉のためなら、俺達のチャクラなんざ、いくらでも差し上げますって。
たとえ、ぶっ倒れても。な?ライドウ」
「お二人のお役に立てるなら、光栄です」
と、嫌味ったらしく返事をした二人の手を、四代目は再びぎゅっと握りしめた。
「ありがとうね、頼りにしてるよ。
あ、それから、この術ね、オレの書いた式だけに、反応できるようになってるからね。
君達が自分で書いた式には飛べないんだよね。残念ながら。
だから、この術を会得できても、個人的には使えないんだ。
オレの許可した時だけ、オレの指定したことろに飛んでもらうよ。いい?
そして、この術を会得したことは、誰にも言わないように。
オレとカカシと君達のひ・み・つ!」
四代目のの言わんとしていることが、なんとなく二人には理解できた。
多分、そういうことなんだろうなと思う。
自分達は選ばれたのだ。
四代目火影の秘密の護衛に。
「この術は、何と言っても繊細なチャクラコントロールが必要になる。
そして、通常の瞬身の術より、移動距離が圧倒的に長いからね、
慣れるまでは、身体がついていけなくて、大変なんだ。
まず、最初はオレだけのチャクラで二人を飛ばせてみせるから。
準備はいい? 手を離さないように、ぎゅっと握ってね。行くよ!」
「はい」
と、二人が答えると同時に、四代目の掌があたたかくなり、青白いチャクラが光始めた。
「飛雷神の術!!」
びゅう〜んと、時空の狭間に吸い込まれて、その圧倒的なスピードに、二人は目を開けることすらできなかった。
絶対に手を離してはいけない、そのことだけに意識を集中させて、互いの手を力強く握った。
ボンと、地面に着地した。
二人が恐る恐る目を開くと、目の前には・・・