Twilight Angel 1
「パパ・・・
ママはどのお星様に行ってしまったの・・・?」
シドは、読んでいた絵本をベッドの横に置いて、そっとファムランを抱き上げて、レースのカーテンを開けテラスへと出た。
宵闇の空に満月が柔らかい光を放っている。
「ファムランがこれがママの星と思うところにママはいるんだよ。
お空の上から、ファムランのこと見守ってくれてるから」
「そうなの・・・」
ファムランは、シドの腕の中で、ぐるりと頭を動かし、満天の星空を仰ぎ見た。
しばらくはあちこちを見ながら探しているようだったが、その視線があるところで止まった。
「うん、あそこに決めた」
「パパにも教えてくれる?」
ファムランは、真丸い満月を指差し、微笑んだ。
「お月様! だってお月様だったらヒュムも行けるんでしょ?
パパと僕で大きな飛行艇作って、早くママを迎えに行こうよ! 僕、一生懸命勉強して、パパのお手伝いするからさ」 円らな瞳をキラキラ輝かせて話しかけるファムランをぎゅっと抱きしめながら、
シドは湧き上がる涙を必死に抑えた。
「今度のママの身体・・・ ちょっと壊れちゃってね。
もちろん、パパにも治せないし、だから、お星様に行って少しお休みしてるんだよ。
ちゃんと治して、元気な身体になって、必ずファムランのところに戻って来てくれるから。
それまで、我慢して待っていようね」 「そうなんだ・・・ どのくらいかかるの? いつまで待てばいいの?」
「ん・・・ ファムランがいい子にしてれば・・・」
シドはたとえまだ物心がつかない幼子でもこれ以上嘘を重ねる事に心が痛んだ。
言葉に詰まる父親の顔を不安げに見つめながら、ファムランはシドの眼鏡に手を伸ばした。
「パパ・・・」
聡明なファムランは、シドの困った顔から、その時間が答えに困る程長いという事を悟ってしまったのだ。
「大丈夫だよ・・・ 僕、いつまでもずっとずぅっと待ってるから・・・
パパがいるから、寂しくないし!
ママが帰って来た時に、驚かせちゃおうよ。
僕・・・ 頑張るから・・・ いい・・・ 子に・・・ してるからさ・・・」 ファムランは今にも溢れそうな涙を必死に抑えている。
「ファムラン・・・ ファムラン・・・」
健気なファムランの顔を見たら、シドはもうこれ以上我慢することは出来なかった。
愛しい妻の顔を思い出し、腕の中の愛しい我が子にその面影を重ねる。
幾筋もの涙が伝い落ち、ファムランの天使のような頬にもぽつりと落ちた。
「パパ・・・?」
「あぁ、すまない、やはり外は寒い。
もう、寝なくっちゃね。 パパも今日はファムランと一緒に寝ていいかな?」
「うん」
ファムランはこくりと頷き、嬉しそうに笑った。
部屋に入り、ベッドにファムランをそっと寝かせ、自分も隣に潜り込んだ。
「パパ、パジャマに着替えなくていいの?」
「あぁ、もういいよ、パパ疲れちゃった、このまんま寝ちゃおうっと」
シドはシャツのボタンを二つ外して、そのまんま布団を掛けた。
「おやすみ、ファムラン」
「おやすみなさい、パパ」
腕を回し肩を優しくぽんぽんと叩いてやると、あっという間にスースーと寝息をたて始めた。
シドはファムランの寝顔を愛しげに見つめ、そっと髪を撫でた。
Phamlan ...
My Angel of the twilight ...
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2007/11/2