deja vu
パンネロは大きく息を吸い込んだ。
「大丈夫!大丈夫だよ」と、何度も自分に言いきかせて。 船乗り広場を通り抜け、サッシオ通りの行き止まりまで歩くと、周りにいる輩からの視線が突き刺さる。一瞬、息を飲んだパンネロだったが、一人で行くのだと覚悟を決めてきたのだ。 ここで引き返すわけにはいかない。 「あの人達だったよね?」 一番奥に立っている一際人目を引く男女二人に話しかけようと歩み寄ると、豊満な胸をした女性にジロリと睨まれた。 「あ、あの…」 「なんだい?お嬢さん」 「あら、この娘、この間、レダスのところに来た…」 「あぁ、あのバルフレア達と一緒にいた娘か?」 「は、はい、そうです。実は、レダス小父様に折り入ってお願いしたいことがありまして。 お時間を少し取っていただきたいのですが…」 「はっはっは!レダス小父様だってよ!面白いこと言うね、お嬢ちゃん。 よし!ついて来いよ、今なら屋敷に居るから、すぐに会わせてやるぜ」 「助かります!宜しくお願いします」 パンネロはぺこりと頭を下げて二人の後について行った、 大きな門を通り抜けて、屋敷の玄関から入ると長い廊下の突き当りがレダスの部屋だ。 男がノックして、ドアを開けた。 「どうした、リッキー」 「レダス、こちらのお嬢ちゃんが、話があるってさ」 「君は、確か…バルフレアと一緒にいた…?」 「はい、パンネロです」 「こんなところにお嬢ちゃん、一人で来たのかい?」 「あ、あの…レダス小父様にお願いしたいことがありまして…」 「おいおい、そのレダス小父様って呼ぶのはやめてくれないか。こっ恥ずかしいぜ」 「すみませんでした。ではなんてお呼びすれば?」 「レダスでも、はげでも何でも構わん」 「え…そんな…呼び捨てとかできません!」 後ろでは、リッキーとエルザが肩を揺らして、笑いをこらえている。 「じゃぁ、はげ様!?」 「ぷははははっーー!!はげ様だってよ、レダス!はげ様−−−−!」 我慢しきれなくなったリッキーが盛大に吹き出した。 「レダスったら、何だか嬉しそうよ〜」 エルザにも大ウケだ。 「まさか、はげに様をつけられるとはな!お嬢ちゃんは、優しい娘なんだな。 よし!気にいった!願いでも何でもきいてやるぜ」 「ありがとうございます。私、空賊を目指しているんです!」 パンネロはきらきらと瞳を輝かせ、真っ直ぐにレダスを見つめて、誇らしげにそう告げた。 「私一人で、色々と調べてはいるんですけど……どうしてもわからないことがあって……」 「ほう、空賊をねぇ。そんなことバルフレアに聞けばいいじゃないか?」 「一緒にいるみんなには迷惑をかけたくないんです! きっと、私が教えてって言えば、バルフレアさんもフランさんも、何だって教えてくれると思うんですけど。 それに、ヴァンにも私がこんなことしてるの、知られたくないし……」 「余所者の俺なら、迷惑かけてもいいってことか?」 「いえいえ、決してそんなつもりじゃ……私は一人でやるって決めたのに…… でも、どうしていいのかわからなくって…… はげ様なら……きっと、助けてくださると思って」 「わかった、わかった。どんな事情があるのか知らんが、ここまで一人でやって来た根性を見込んで、協力してやろう」 「お願いします。みんなには絶対に内緒にしてくださいね」 「安心しな、パンネロちゃん、俺様は秘密は絶対に守るから」 頬を赤く染めながらも、必死な姿のパンネロが微笑ましかった。 遠い昔に、どこかで同じような光景を見たことがあったなと、懐かしい思い出がレダスに甦ってきた。 * * * * * そうか、あれは確か、今から12年位前のこと。 俺がジャッジ隊に入隊したばかりの頃だった。 何故か、シドに気に入られてた俺はよくあの馬鹿デカイ屋敷に連れていかれて、酒の相手をさせられていた。 シドが先に潰れてさっさと寝てしまった後、いつものゲストルームに移動して、 俺も寝ようかと思った時に、コンコンとドアをノックする小さな音がした。 ドアを開けると、目に入れても痛くない程可愛い可愛いと毎日聞かされているシドご自慢の三男坊・ファムランが立っていた。 「どうした、坊主。こんなところで何してるんだ?」 「ねぇ、ゼクト、ちょっとこれ見てくれる?何度やっても計算が合わないんだけど」 そう言って、ファムランはパジャマのポケットから数枚の紙を取り出して、広げて見せてくれた。 それには、鉛筆書きではあったが、設計図が書かれていた。 よく見ると、どうやら飛空艇の模型の図面のようだ。 「そんなの親父殿に見てもらえばいいだろう?」 「見せられないから、ゼクトに聞いてるんだけど」 「何だ、親父に言えないことなのか?」 「来週の日曜日までに仕上げなくっちゃならないんだ」 来週の日曜日…… 何かあったっけか? 誕生日ではないはずだ…… 何かのイベント……? あ、そうか…… 父の日のプレゼントだなんて、泣かせるぜ。 どうだ?と自慢げに見せびらかすだろうシドの顔が浮かんだ。 図面を良く見たら、10才のガキにしては、上手く書けている。 やっぱりシドの血が流れているんだなあと、つくづく驚かされた。 「ほら、ここ、どうしても1cm足りなくなっちゃうんだ。 計算はちゃんと合ってるのはずなのに」 線は綺麗に引かれているというのに、どうも字の書き方が汚い。 ここだと指されたところをよく見ると…… 「おい、一桁違ってるぞ。ケアレスミスだな、横に書いた計算は合ってるのに、写し間違えてる」 「あれ?ホントだ、おかしいな、何度も見たはずなのにな。サンキュー、あとは大丈夫。あ、パパには絶対に内緒な」 「安心しな、ファムラン、俺様は秘密は絶対に守るから」 バイバイと手を振り、嬉しそうに部屋を出て行ったあの時のファムランが、今、ふっと目に浮かんで、消えていった。 翌週、飲みに行った時に、シドにファムラン作の飛空艇の模型を散々自慢されたことは言うまでもない。 あの坊主が、まさか、俺と同じ道を歩むことになろうとは…… その時は思ってもみなかったが。 そして…… おまえはおまえの手で…… ったく、どこまで、馬鹿親子なんだ、おまえ等。 * * * * * 「あ、あの……レダス……小父様……? どうかされましたか? 私、何か失礼なことを言いましたでしょうか?」 「いや、何でもないんだよ、お嬢ちゃん。 さぁ、始めようか」 「はい、お願いします!」 あの時のファムランと同じように、瞳を輝かせているこの娘に、 俺のすべてを教えてやろう。 「空賊とは……」 |
2011/6/19
【言い訳】
5周年記念企画作品NO.35のぐれななさんのほのぼのパンネロたんマンガの「はげ様!」が異常に大ウケしまして!
「はげ様」をテーマにSSを書いてみようと思いました。
私、レダスを普通に50歳位のおっさんだと思ってました!すみませんm(__)m
5歳のえんじぇるふぁむたんに、「ゼクト小父様」って言わせたかったんだもん!
シドの飲み友達風に書いてましたさ。
でも、念のために一応、調べておこうって思って……
えええええええええええええええええええ〜><
33歳ってえええええええええええええええ!!!
マ ジ で か −−−−???????????
バッシュより、年下かよおおおおおおおおお!!!
ふぁむたん5歳の時、レダス16歳じゃんよーーーー
まだはげてねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!
がっくり……orz
最後までは書きあげてなかったのですが、慌てて、10歳ふぁむと21歳はげの設定で書き直しましたよ。
なんか、書きたかったイメージとは全然違う話になってしまって……^^;;
最後はもう、何じゃこれ?な展開に……
これも全部はげ様のせいだーーーー!!!
拙い話ですが、父の日にシドに捧げます!