LOVE NOTE 9
それから、二人で映画を見たり、ゲームをしたり、夜更かしして遊んだ。
遅くなったので、カカシはゲンマに「泊まっていいよ」と言った。
寝たのは三時位になってしまったが、明日は日曜だから、ゆっくり昼まで眠れるし。
明け方、カカシは何かが動いた気配を感じふと目が覚めてしまった。
隣で寝ていたはずのファムの姿が見えなかった。 部屋を見渡したら、机の端にちょこんと座って足をぶらぶらとしていた。
カカシのベッドの横に布団を引いて寝ているゲンマを起こさないようにそっと降りて、机の前まで行った。
カカシは引き出しをそっと開け、ピンク色のノートを取り出した。
「はい、ノート、ファムに返すよ!
ファムの役目は終わったんだよね?
もうこれで、空の上に帰れるんでしょ?」 最初の内は、我侭なファムに振り回されていたカカシだったが、ファムの性格が分かるようになってからは、扱いにも慣れてきたし、結構良い話相手になってくれた。
サクモは仕事が忙しくて家に帰って来られない日がほとんどだったから、
兄弟のいないカカシにとっては、一人っ子の寂しさを紛らわせてくれた事も多かった。
いざ帰るとなると、ちょっぴり残念な気持ちになってきた。
「たまには遊びに来てよね」
「あぁ、お前等が喧嘩でもして、仲直りしたい時には来てやってもいいぜ!
これを渡しておく」
そう言ってファムはポッケの中から、小さな赤い石を取り出し、カカシにぽいっと投げた。
「何これ?」
「召還石だ。 この石を撫でてオレの名前を呼べばこっちの世界に来られるんだ。
まぁ、オレ様はなんせ忙しい身だからな。
愛し合ってるのに告白できない二人を結ばせるために世界中を飛び回ってるんだ。 すぐにって訳にはいかない時もあるかもしれないが半日以内には飛んで来てやるよ!」
「そう・・・ 人の幸せのために飛び回るって、いい仕事だね。
って、ところで凄く気になってたんだけど、人のためばかり動いててファムの幸せはどうなのよ?」 「バ〜カ! そんな事心配すんな。
人様に幸せを贈るキューピット様が幸せでなくてどうすんだよ?
オレなんか、ラブラブ過ぎて余るくらいなんだぜ。
だから、こうしてみんなに幸せを分けてあげてるってこと」
「じゃぁ、今度来る時は二人でね!」
「ダメダメ! 仕事が忙しくって、そう簡単にはこっちには来られないんだよ。 あっ、それから最後にもう一つ、これだけは言っておかないと。
キューピットの目には、人間の頭の上に、名前が見えるって言ったろ? 実は、もう一つ見えるものがあるんだ」 「何?」
「それは・・・
その人の好きな人の名前だ」
「えぇぇ〜 そうなの?」
「安心しろ。 ゲンマの頭の上には、最初からカカシの名前が見えてたぜ!」
「ってことは・・・?」
「そう、オレは何の魔法も掛けてない。
オレが何もしなくたって、ゲンマはカカシの事が好きだったと。 そ〜いう訳」 「そっか・・・」
「それに、カカシの上にもな、ちゃんとゲンマの名前が見えてた」
「ほっ・・・ ほんとに・・・? いつから?」
「最初からだ。 まっ、ノートを拾った時は少し薄かったけど。
今じゃ、はっきりくっきり見えるぜ!
ようするに、オレが何もしなくたって、お前らは結ばれてたってことさ!
まぁ、オレはお前等の“時”を作ってやっただけだ。 カカシ、良かったな」
「うん、ありがとう」
カカシは、ノートのせいでゲンマとこうなったのかと思ってたから、どこかちょっと変な気もしてたけど、ファムに何もしていないと言われて嬉しくなった。
「窓を開けてくれ。 そろそろ行くよ」
カカシが窓を開けると、ファムはにこりと笑って手を振った。
「じゃぁな。 頑張れよ!」
ファムはパチリとウインクをして、白い羽をぱたぱたと羽ばたかせ、すっと飛んで行った。
「ファム、バイバイ〜!」
カカシが手を振ると、一瞬ファムも振り返って手を振ってくれた。
そして、ファムの姿は小さくなり朝焼けの空にあっという間に消えて見えなくなってしまった。
それから、カカシはゲンマを起こさないようにそっとベッドに潜り込んでまた眠った。
|
2008/1/21