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ソフトクリーム   4
   

ゲンマはあっという間に食べ終えた。
ふとカカシを見ると、唇の回りにソフトクリームをいっぱい付けながら、一生懸命小さな口を動かしている。
 
「カカシー、早くしないと溶けちゃうよ」
三段にしてもらったものの、それでも四歳のカカシにとってはまだ多かったようだ。
「えっ、うん」
カカシは慌てて、ペロペロと舐めるスピードを速めたが、ついに、コーンの下からソフトクリームが垂れ出してしまった。

「あ〜あ、ほら、下から垂れてるぞ。カカシ、早く下から食べろ!」
ゲンマが教えてあげても、カカシには意味が分からなかったようだ。
「えっ? 下からって?」
ゲンマはカカシの手を握って、コーンの下をカカシの口に咥えさせた。
「そこから吸うんだよ」
カカシは言われた通りにチュウチュウと吸い始めた。
ズボンには垂れてるし、手も口の回りもソフトクリームまみれでベトベトになってしまった。
それでも、夢中になって、ソフトクリームを食べているカカシの何と可愛いことか。
やっとのことで、きれいにクリームを吸い終えて、ふにゃふにゃになったコーンまで食べ終えた。
 
「カカシ、クリームいっぱい付いてるぞ」
ゲンマはポケットに手を入れたがハンカチが入ってなかった。
 (まっいっか・・・)
仕方なくゲンマはカカシの唇の回りをペロリと舐めとってあげた。
カカシは目をぎゅっと瞑ってじっとしていた。
「よし、きれいになった」
 
 (何でだ? 同じミックスなのにカカシの方が甘いぞ・・・???)
 
「ありがとう、ゲンマ。とっても甘くて美味しかったね〜」
カカシが嬉しそうな顔をしてゲンマを見つめた。
ゲンマは同じミックスを食べたのにカカシの方が甘くて、何だか不思議な感じがしたけれど、その意味が分かるようになるのは、まだまだ十年以上も先のお話・・・
 
「ごめん、ごめん、べとべとになっちゃったね〜 はい、お手拭」
その光景を微笑ましく見守っていたヒアシがお手拭を持ってきてくれた。
ゲンマはカカシの口や手を拭き、そしてズボンも拭いてあげた。
 
「カカシ君には三3段は多かったかな〜 じゃぁ、明日は二段にしておこうね。
それから、他に食べたい味はある? カカシ君は何が好きかな?」
「えっと・・・」
カカシは何て答えたらいいのか分からず、ゲンマの顔をちらっと見た。
「ゲンマ君は何が好き? 遠慮しなくていいんだよ」
カカシもゲンマもソフトクリームの種類が他にどんなものがあるのかも知らなかったが、でも何か言わないとヒアシに悪いような気がした。
ゲンマは、自分は別に何でもいいからカカシの好きなものを言っておこうと思って・・・
 
「イチゴ!」
「かぼちゃ!」
 
何と二人同時に大きな声で答えた。
 
「ゲンマ君はイチゴが好きなんだね。大丈夫だよ、それはちゃんと用意できると思うから。
そっか、カカシ君はかぼちゃが好きなの・・・ う〜ん・・・
これはちょっと難しいかも・・・カカシ君、かぼちゃのアイスって食べたことあるの?」
「あの・・・ えっと・・・ ごめんなさい。食べたことはないの・・・
でも・・・ だって・・・」
 
ゲンマはカカシの言いたいことが分かって嬉しくなった。
 
「いいよ、何でもいいから正直に言ってごらん」
「うん、あのね・・・ 明後日はね、ゲンマのお誕生日なの。
ゲンマはね、かぼちゃが大好きだから、お母さんにかぼちゃのケーキ作ってもらうんだって!
ボクは・・・ まだ何も作れないけど・・・
もし、ヒアシさんがかぼちゃのソフトクリーム作ってくれたら、ゲンマ嬉しいかなって思って・・・」
「カカシ・・・」
「そっか、カカシ君は優しいんだね〜」
「ゲンマだって優しいよ〜 だって、イチゴはボクの好きなものだから!」
「おぉ、二人共良い子だ! 良い子だ!
よっし、イチゴもかぼちゃも両方作っちゃおう〜!」
ヒアシは「オー!」と拳を高く挙げた。
「今度はお友達も連れておいでね!」
ヒアシは二人の頭を撫でて、にっこりと笑った。
それから、二人はちゃんとご馳走様の挨拶をして帰った。
  
次の日もカカシとゲンマはアカデミーが終わってから、日向家に走った。
今日は、ライドウとアスマも一緒だ。
 
「こんにちは!」
声を揃えて、玄関で挨拶をすると、ヒアシがにこにこ顔で迎えてくれた。

「いらっしゃい〜 うわ〜 今日は御友達も連れてきてくれたんだね〜。
さぁ、どうそ、上がって」
「お邪魔しま〜す」

皆、ヒアシの後をゾロゾロと付いて歩く。広い台所に通されると、ライドウもアスマも大きな声をあげながら、ソフトクリームマシーンのところに駆け出した。

「うわ〜!すっげぇ〜」
「カカシ君、ごめんね。イチゴはできたんだけどね。かぼちゃはちょっと難しかったんだ。 
少し時間かかるかもしれないけど、絶対作ってみせるから! 
みんなは何がいいかな? チョコとバニラとイチゴと、それぞれミックスにもできるからね〜」
「オレ、チョコ!」
「オレは、チョコとバニラのミックス!」
ライドウとアスマが大きな声で注文した。
「じゃぁ、オレはイチゴとバニラのミックス!」
と、ゲンマもヒアシに告げた。
カカシは迷いに迷って中々決まらなかったが、最後に、
「イチゴ!!」
と、嬉しそうに声をあげた。
「はいはい、待っててね」
ヒアシは順にソフトクリームを皆に手渡した。
「いただきま〜す!」
「うわぁ〜 うめぇ〜」
「おいしい〜!」
 
大好きなイチゴ味をペロペロ舐めながら、カカシは今日は垂らさないように早く食べようと必死だ。
「おかわりしてもいいの?」
あっという間に食べ終わったアスマがヒアシに聞いた。
「まだいくらでもあるからいいんだけど、でもお腹こわしたらこまるからね〜
明日、またいらっしゃい!」
「本当にいいの?」
「あぁ、いつでもおいで」
「わ〜い!やった〜!」
 
こうして、その夏は毎日のように日向家に通って、ソフトクリームを食べまくった。
なぜ、ヒアシがソフトクリームにここまでこだわっているのかは誰にも分からなかった。
里の未来を担う可愛い子ども達を喜ばせようとの、ただそういう思いだけだったのかもしれない。
子どもは深くは考えない。
ただで美味しいソフトクリームが食べられるだけで大満足だったから。
 
でも、残念ながら、何日たっても、かぼちゃのソフトクリームを食べることはできなかったけど・・・
  

                                                                                 2008/8/7

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