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木ノ葉隠れの里・バレンタインデー頂上決戦!   2
   


そして、ついに運命のバレンタインデーを迎えた。

任務を終えたテンゾウを中心に、イズモ、コテツ、ハヤテ達が火影屋敷の屋上で、チョコレートを受け付けている。
カカシと書いた紙を貼ってある机の前にはあっという間に長蛇の列が出来た。

「これは、もう決まりだな」
「へへっ、今晩は焼肉食い放題〜♪」
イズモとコテツが楽しそうに、カカシへのチョコを数えながら箱に詰めている。
もちろん、ゲンマの方にも、ちらりほらりと持って来る女の子達はいたのだが。
どちらかというと、小さい男の子や、おじいさん、おばあさんという年配者の方が多いような気がする。

「へぇ、ゲンマ先輩て、顔に似合わず意外と面倒見がいいのかもな」
テンゾウが関心していると、横で、ハヤテがくすっと笑った。
「あの人らしいですね」

ゲンマとカカシが任務を終えて、特別受付所に着いたのは、もう5時をまわって、すっかり暗くなっていた頃だった。
残り時間は1時間程あったが、勝負は一目瞭然だ。
カカシの方は、大きな箱に5箱分、綺麗な包装紙にラッピングされた箱がぎっりし詰まっていた。
ゲンマの方は・・・
2箱とちょっと。

カカシは、今にも泣きそうな顔をして、ゲンマを見つめた。

「ごめん・・・オレ・・・いらないってちゃんと言ったのに・・・」
「ば〜か、カカシが謝ることないだろ」

ゲンマは、カカシの頭をくしゃりと撫でた。

しばらくの間、駆け込みでチョコを持って来た子達から直接受け取った。
あちこちで、黄色い歓声があがっている。

6時になると、行列も途絶え、ライドウやアスマ達もやって来た。

「あ〜あ、さすが、カカシだよな〜 オレの負けだ。さぁ、焼肉でも何でも食いに行こうぜ!」
と、ゲンマは、観念したように言った。

集計を終えた、テンゾウが、持っていた紙を読み上げた。

「カカシ先輩が、214個で、ゲンマ先輩が・・・84個です
よって、木ノ葉隠れ・バレンタインデー頂上決戦の勝者は・・・

「待って!」
突然カカシが、大きな声をあげた。

「あの・・・これって、どっちが、チョコをたくさんもらえるかって勝負だよね」
「ん?どう見たって、カカシの勝ちだから安心しろ」
アスマが不思議そうに、カカシを見ると・・・
カカシは、チョコの詰まった箱の中から大き目のものを一つ取り出して、ラッピングをびりびりと剥がした。

「ほら、これはチョコじゃないよ!お酒だよ!
じゃぁ、数には入らないよね?
テンゾウ、オレの方全部開けてみて!」

「カカシ!」

ゲンマは思いがけないカカシの言葉に驚いて目を丸くしている。

カカシが甘いものは苦手と言った情報が、里の女の子達のネットワークに載ると、
「ならチョコじゃなくて、お酒とかがいいんじゃないの?
カカシも二十歳になったことだし〜」
「そうよね、きらいな物あげても喜んでもらえないし〜」
と、あっという間に、チョコではなく、お酒をという女の子が増えていったのだった。

テンゾウ達は、一つずつ、丁寧にラッピングを剥がし、チョコとお酒を別々に並べて、もう一度、チョコの数を数え直した。

カカシはドキドキしながら、テンゾウの手元を見ていた。

「えっと、再度集計をしなおしました。
カカシ先輩のチョコは・・・94個でした。
やはり、この勝負、カカシ先輩の勝ちで〜す!」

晴れ晴れとしたテンゾウの声が屋上に大きく轟きわたった。

「よう、覚悟は決まったか?ゲンマ。
ま、勝負だからな。潔く腹くくれ」

いきなり、現れたシカクは、ゲンマの肩をポンポンと叩き、それから、
「よくがんばったな、カカシ」
と言って、カカシの頭を子どもにするように撫でた。

「なんでシカク隊長が・・・」
驚くゲンマに、アスマが、
「だって、この賭けの胴元はシカク隊長なんだぜ」
と、教えてあげた。

「はぁっ!?」
「ゲンマよぉ、オレたちのカカシに勝とうなんざ、100年早いぜ〜」
「いや、そんな風には・・・思ってなんか・・・」
しどろもどろのゲンマを見て、シカクは、はっはっはっと腹を抱えて大笑いをした。

「しかし、色男いじめるのは楽しいよなぁ。
こいつ等、いつもしけた面してやがって。
どうせ、バレンタインだって、チョコなんてもらえないだろうと、思ってさ」
シカクは、あごをくいとしゃくって、ライドウ達の方を見ては、また笑った。

「ゲンマやカカシばっかモテモテで、腹も立つだろうしな。
ま、ゲンマ、お前が哀れなこいつ等の腹をいっぱいにしてやれよ!」

「そういうことッスか・・・」

ゲンマも、後輩思いのシカク隊長のしたことならと、諦めもついたし、腹も立たなかった。

「よ〜し、焼肉Qに行くぞ〜
今日は食べ放題、飲み放題だ!」

カカシも嬉しそうに、
「お酒ならここにたくさんあるしね〜」
と、一升瓶を高くかかげた。

それから、焼肉Qになだれ込んだみんなは、お店の人も呆れるほど食べまくった。
バレンタインデーは毎年なぜか、お客さんがあまり来なくて暇なのに、今日のお客さんはお店のお肉を全部食べてくれそうだと、ほくほく顔だ。
なんせ食欲旺盛な十代が中心だ。
運ばれてきた高級国産和牛があっという間に胃袋に吸い込まれていく。

「てめえら・・・遠慮という言葉知らねぇのか?」
ゲンマの嘆きは誰の耳にも入らず、バクバクと美味しそうに、肉を頬張っている。
カカシは、ゲンマのお財布の中がちょっと心配になったけど、いざとなったら、自分も出すつもりだったから。

ドンチャン騒ぎがにぎやかに続いて、
「もう、食えねぇ〜」
「お腹パンパンだよ〜」
と、皆、大満足で、大人達はお酒を飲み始めた。

ゲンマはこの後にカカシとのお楽しみがあるのだから、ここで酔うわけにはいかない。
こいつらは、ほっといて、カカシとさっさとばっくれようと思った。

「カカシ、そろそろ帰るぞ。
ウチで、オレたちのバレンタイン・・・やろうな・・・」

カカシの耳元でそう囁くと、カカシは顔を真っ赤にして頷いた。
ゲンマは、そっと立ち上がり、レジへ行って、
「足りない分は明日払いに来ますから」
と言って、お財布の中から、お札を全部取り出そうとしたら・・・

「いえ、お支払いはシカクさんからいただいております」
と、店員は笑ってお辞儀をした。

「シカク隊長・・・」

ゲンマは席に戻り、シカクの方を見た。
一升瓶を抱えて、なぜか、上半身裸で踊っていた。

「オレもシカク隊長みたいな・・・
カッコイイ大人になりたい・・・
よな・・・!?」

ゲンマはぷっと吹き出し、シカクに頭を下げた。

                                                                                 2009/2/16

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