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師匠の日   2
   

母の日のお手伝いは、シカクやチョウザも来て賑やかになったが、先生の予想通り、カカシが店先に立ったことで、例年より売り上げが倍増した。
カカシは特に何をした訳でもないのだが、店の前を通る人ににっこり微笑むだけで、皆の足が止まったのだ。
中には、母の日だというのに、カカシに見惚れて自分に買ってしまうお母さんたちもいたのだから、驚きだ。
いのいちはホクホク顔で、父の日も宜しくと、しっかり頼み込んで、大きなカーネーションの花束を御礼にカカシに渡した。
先生は、十五日のためのアレンジを注文した。
帰りには、二人でお墓参りに行って、カーネーションを墓前に供えた。
 
それから数日、先生は自来也に、カカシは先生ために、お互い秘密で師匠の日のプレゼントの用意をした。
 
カカシは早速、お赤飯を炊いてみたが、豆がぼろぼろに割れて、見るも無残なお赤飯になってしまった。
先生は、味はまぁまぁだよと言って、残さず食べてはくれたが、あれじゃぁ、人様への贈り物にはならない。
そういえば、父さんが使っていた、母さん秘伝のレシピが残ってたっけと、箪笥の奥をかき回して探し出した。
少し古びたノートを捲ると、お赤飯と書かれたページが見つかった。
 
「あった!」
と、思わず声をあげるカカシ。
 
「もち米四対白米一の割合。ささげは固めに煮る。小さじ一杯の塩とおたま1杯のお酒を入れて炊く」
と、綺麗な字で書いてあった。
 
カカシは嬉しくなって、次の日もう一度、レシピ通りに炊いてみた。
今度は大成功!
綺麗な赤い色がついて、つやつやに光っている。
塩味もちょっと効いて、文句なしの味だ。
 
「カカシ〜 美味しいよ〜! もう、最高!
これなら、誰に出しても恥ずかしくないよ! 
こんな美味しいお赤飯食べたの初めて!」
「そう? よかった!」
「うん、おかわり!」
 
先生は、一気にもぐもぐと食べきって、すかさずおかわりと茶碗を前に出した。
カカシも、美味しそうに食べる先生を見ながら、母さんの作ってくれたお赤飯を思い出し、ちょっぴり嬉しくなった。
 
前日は、任務が終わってから、材料をいっぱい買出しをして、おかずの煮物を煮たり、カカシは大忙しだった。
もちろん、先生へのプレゼントもとっておきの物をちゃんと買って用意しておいた。
 
こうして、準備万端、五月十五日の師匠の日を迎えた。
任務も無事終え、自来也先生の家に行く仕度をした。
 
「カカシ〜 今日はお泊りだから、パジャマも持って行くんだよ〜!
オレのリュックに入れておいてね。
先にいのいちのところにお花を取りに寄ってから行くから」
 
先生は、風呂敷に包んだ一升瓶をキッチンから持って来た。
そして、小さな箱を大事そうにリュックにしまった。
カカシも、ご馳走と炊き立てのお赤飯のいっぱい詰まった重箱を大事そうに抱えた。
 
「自来也先生喜ぶだろうな〜 カカシからこんなに豪華なプレゼント貰えて」
「心配しないで、先生にも、ちゃんとあるからね〜!」 
「えへへ〜  楽しみ、楽しみ! 何だろうな〜?」 
「それは、自来也先生の家に行くまで、ヒ ・ ミ ・ ツ!」
 
カカシはにっこり笑って人差し指を小さな口に当てた。
その姿があまりに可愛いくて、先生は思わずカカシの人差し指をそっと握って自分の口に当ててみた。
 
「はいはい、ヒ ・ ミ ・ ツね!
早くヒミツが知りたいから、さぁ、出発〜!」
 
先生はるんるん気分で鼻歌を歌いながら歩き出した。

                                                                                 2007/7/14

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