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お願いだから・・・   4
   

それから、一週間が過ぎた日。
それは、アイツの誕生日の前の日だった。
報告を終えて、任務受付所から出たところを、アイツに大声で呼び止められた。
向こうから、物凄い勢いで走ってきて、いきなりオレに飛びついてきた。
 
「シカク〜 シカク〜 」
 
満面の笑みで顔中を崩れさせ、嬉しそうに抱きつくアイツの顔を見たら、何があったのかすぐに分かった。
 
「おい、おい、恥かしいから離せ」
「えへへ〜 オレもここじゃ恥かしくって話せないから、これからシカクの部屋に行っていい? 
大丈夫! 心配しないで、もう襲ったりしないからさ!」
 
それから、軽いつまみだけ買って、オレの部屋に向かった。
部屋に入ると、いつもなら、すぐビールを取り出すアイツが珍しく、真面目な顔で椅子に座った。
 
「乾杯する前に、ちょっと話しておきたいことがあるんだけどさ。
これって、公式発表は1週間後にされる極秘事項なんだ。
でも、シカクにだけは、掟を破ってでも先に伝えたかった。
だから、発表されるまでは絶対に誰にも言わないでね」
 
いつになく神妙な顔で話始めたアイツの口からは、天地が逆さまになったような衝撃的な言葉が発せられた。
 
「オレ・・・ 火影になるよ・・・」
「えぇぇぇ〜!!! おっ、おっ、 お前がぁぁぁ〜???
嘘だろ・・・ マッ、マジかよ・・・???」
 
オレは突然の大告白に、思わず立ち上がったが、まだ信じられなくって、
何て言ったらいいのか言葉も出てこなかった。
 
「みっ、水・・・」
 
オレは、とりあえず気持ちを落ち着かせようと、冷蔵庫からミネラルウォーターのペットボトルを取り出し、一気に飲んだ。
 
「ふぅ・・・ いきなり驚かせるな」
「可笑しいかな? オレが火影じゃ・・・」
「いや、そんなことはない、ただあまりに突然のことでびっくりしただけだ。
まぁ、今の木ノ葉じゃ、次期火影はお前しかいないと誰もが思ってるからさ、別に不思議ではないんだけど、まだまだ先だと思ってたしな」
「うん、オレも。
去年、三代目からは内々に話は戴いてたんだけど、まさかね、こんなに早くとは思ってもみなかったよ。
色々うちはとの事情が変わってね。
まだ、今はそこまではシカクにも言えないことなんだけど、
その内、時が来て、シカクにも動いてもらうことになったら話すからね」
「そっか、まぁ、お前のためなら何だってやるからな、オレは。
その時は遠慮なく言ってくれよ。
で、あの子の方は?」
「ん、それがね、実はこの間シカクのところから帰ったその日は、まだ勇気が出なくって、何にも言えなかったんだ。
そしたら、その次の日に火影の話をいただいて。
火影の就任は迷わず決められて、その場で返事できたんだけどね。
その晩、カカシのことは、もう一度じっくり考え直した。
だって、まさかこんなに早く火影になるなんて思ってもいなかったから、火影になんてなったら、カカシを幸せに出来ないんじゃないかなってね。
益々弱気にもなったり」
「そうだよな・・・ 火影になったら、何よりも里を一番にしなくっちゃならないしな」
「でもね・・・ 
カカシが誕生日プレゼント何が欲しい? なんて笑って言うもんだから・・・
火影になったら・・・
それこそ里を背負って、里のために命を懸ける、
そうして生きていくのがオレの運命なら・・・
一瞬一瞬を悔いなく生きたい!
自分に正直に生きたい!
う、やっと自分でも腹が決まったよ。
それから、カカシに火影になること、そして、オレの誕生日には、カカシが欲しいって、
素直に自分の気持ちを伝えることが出来たんだ」
「で?」
「そりゃ、さっきのシカクみたいにびっくりしてたよ。
火影になることと、オレから告白と同時になっちゃったからね。
でもね、『何があっても先生に付いて行く』って言ってくれたんだよ!
嬉しかった。 本当に、本当に・・・」
 
アイツは、頬を染めながら、にっこり笑ってそう話してくれた。
オレも心から嬉しかった。
もちろん、アイツが火影になることも、カカシと思いが結ばれたことも。
 
「良かったな」
 
それ以上の言葉は出て来なかった。
 
「ありがとう・・・ シカク・・・
でもさ、こんなに若い奴が火影になるんだ。
里の内外共に風当たりも強いだろうな。
まっ、色々あると思うけど、頼りにしてるから。
シカク〜 これからもよろしくね!」
 
それから、アイツは、「ビール!ビール!」と言って、冷蔵庫を明け、缶ビールを取り出し、オレによこした。
 
「さぁ、乾杯しよう〜!」
「おう!」
「オレとカカシとシカクと木ノ葉の里に!」
「四代目火影様波風ミナトに!」
 
缶ビールをカチンとぶつけて、乾杯をした。
アイツは、ゴクリゴクリと美味しそうに飲み干した。
 
「ん! やっぱシカクの家で飲むビールは最高だな!」 
「よ〜し、オレ達同期でお前の就任祝い盛大にやってやるからな〜!
任せておけ」
「たぶん、しばらくは他国からの挨拶を受けたり、公式行事なんかで忙しいと思うけどね」 
「まぁ、すぐには出来ないかもしれないが、半月もすれば一段落するだろ」
 
シカクは壁にはってあったカレンダーを横目でちらりと見た。
そして、おぉっと閃いた。
 
(それがいいかもな・・・ うん)
 
一人頭の中でその光景を思い浮かべ、思わずにんまりしてしまった。
 
「シカクったら、今何か悪いこと考えたよね?」
「いいや〜 悪いことじゃないさ。
半月後っていったら何時くらいになるかな〜?って思ってたらさ。
丁度いい日があるじゃん!」
「えっ? 何?」
 
アイツは不思議そうにカレンダーを見て小首を傾げたが、何だか分からないようだ。
 
「よし! 決めた! うん、絶対それがいい!」
 
シカクはにんまり笑いながら、うんうんと頷いた。
 
「え〜? 何するの? 教えてよぉ」
「オマエとカカシの結婚式だ!」 
「えぇぇぇ〜 けっ、けっ、結婚式ぃぃぃ〜!!!」
 
アイツは目を真ん丸くして立ち上がり大声をあげた。
 
「そっ! バレンタインに結婚式な!
お前とカカシの!」
 
 

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