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お願いだから・・・   12
   

突然、赤毛なのに真っ赤なロングドレスを着たド派手な女性が四代目の後ろに回り、背後から四代目の頭をバコっと殴った。
 
「いてぇ・・・」
「てめぇ・・・ よくも・・・ 私の花束贈呈カットしやがったな。
折角カカシにでかい花束あげようと思ってたのに」
 
四代目は頭を擦りながら謝った。
 
「悪い、悪い、その・・・ ちょっと時間の関係でね」
「はぁ!? 何言ってんだ。 みんなあれだけ好き勝手にしゃべってんだ。
時間がない訳ないだろ?」
 
シカクも慌てて飛んできた。
 
「悪かったな・・・ 実は・・・ その・・・
いのいちがお前の花束忘れちまって・・・な」
 
納得いかないのかプンプン顔で怒って、まだ文句を言っている。
四代目も、つい頭に血が昇ってしまったのか、
 
「クシナ、だって普通ああいう花束贈呈は、可愛い子どもがするもんだよ。
気持ちだけ十分いただいたから・・・」
 
四代目が最後まで言葉を言い終わらない内に、クシナがガバっと押したもんだから、四代目は椅子から転げ落ちてしまった。
 
「ったく、へらへら顔でいつまでも座ってんじゃねぇよ!
お前はさっさとみんなにお酌して回れよ!
その間、私がカカシにお前の弱みをいっぱい教えてやるからな!」
「ひっど〜」
 
四代目はお尻を擦りながら立ち上がり、渋々顔でビール瓶を持って皆のテーブルの方に歩き出した。
 
カカシは何が起こったのか分からずきょとんとしている。
でも、この女の人には見覚えがあった。
いつも、里の中ですれ違っても、必ず先生の頭を叩いたり、蹴りを入れてくる人だ。
そして物凄い勢いで怒鳴り始めるのだ。
最初はケンカしてるのかと驚いたが、よく話を聞いているとそうでもないらしい。
先生は幼馴染でケンカ友達だよと教えてくれた。 
子どもの頃、ガキ大将の座を先生と争っていたこと、木ノ葉の里で先生の頭を叩ける人は綱手様とこの人だけだって、後からシカク隊長に教わったんだ。
 
クシナはしっかり四代目の席に座って、今までの怖い顔が嘘のように、優しい顔でカカシを見た。
 
「カカシ、おめでとう。 私は、本当に嬉しいよ!
まさかあのバカがこんなに可愛い花嫁さん貰うとはね。
あんな奴のこところに嫁いでくれる人なんて絶対いないと思ってたからな。
でも、カカシも苦労するな・・・」
 
カカシは何て答えたらいいのか分からず、言葉を探していた。
 
「カカシにお願いがあるんだ」
「お願い?」 
「そう・・・ アイツは昔からホント大バカでね。
バカを100個付けてもたりないくらいの大バカ者だ。
自分に少し力があるからっていつも無理しやがって・・・
しかも、いつもへらへら笑って何事もなかったようにな。
今日ここにいる100人はそんなアイツのバカによって助けられたヤツばっかだよ。
そんな大バカが火影になんかになりやがって・・・
益々バカやるに決まってる・・・
アイツは頑固だから絶対人の言うこと聞かないしな。
だから、カカシ、お前が・・・ アイツに無理させないようにしてやれるのは・・・
カカシだけだろ?
分かったな。 アイツを頼むよ」
 
そう言って、クシナは深々とカカシに頭を下げた。
 
「そんな・・・ 頭を上げてください」
 
クシナが頭を上げると、クシナの頬にすぅっと一筋の涙が零れ落ちた。
 
「カカシ、心配するな、みんなお前たちのことは心から喜んでいるんだ。
カカシがお嫁に行ってくれて本当に良かったってな」
 
クシナはカカシの頭をくしゃくしゃと撫でてにっこり笑った。
 
「どうしてもアイツが言うこと聞かなかったらな・・・ その時はだな・・・」
 
それから、クシナは機関銃のように、四代目のアカデミー時代の悪戯の数々を話始めた。
中には確かにそれはばれたらヤバイだろというような話も幾つかあったけど。
カカシは、今まで四代目からも聞いたことがなかった話を聞き、お腹を抱えて笑った。
シカクも話に加わり、昔話で盛り上がった。
一回りお酌が終わって、四代目が戻って来た。
 
「もう、カカシに何話てるんだよ〜」
「あぁ、お前がいかにバカかって話だよ。
まったく木ノ葉も終わりだな〜 こんなバカが火影になるなんてな。
そうだ、カカシ! カカシが四代目やれ!
うん! カカシの方が絶対いいよ」
「はいはい、クシナ、いいからもうそこどいてよ」 
「いいか! カカシ、思いっきりコイツを尻に敷いてやれよ!」
 
クシナは意味ありげにパチリとウインクをして席を立った。
 
「えっ? どういう意味?」
「はい、クシナさん、分かりました。 任せてください」
 
カカシもにっこり笑って、クシナに答えた。
 
「うん、それでよし! じゃあな。
ミナト、カカシを困らせるようなことしたら、私が許さないからな!」
「オレがそんなことするはずないじゃん!」
「カカシ、ケンカして家出するときは私んちに来いよ!」
「ったく・・・ お前らキリがないからその辺でいいかげん終わりにしろ」
 
シカクが止めに入って、やっとクシナは自分の席に戻って行った。
まるで嵐のような人だったが、カカシはクシナさんも、そしてここにいるみんなも、
もちろん自分もだけど、先生のことが本当に本当に大好きなんだと思うと、
心がじ〜んと熱くなって、涙が溢れそうになった。
そして、そんな偉大な人に嫁ぐ自分は何て幸せなんだろうと思った。
先生に見つからない様に必死に瞬きをして涙を堪えた。
それを見てたシカクがそっとハンカチをカカシに渡した。
カカシは、そのさり気ない優しさに、もう我慢が出来なくなって、
後ろを向き、シカクのハンカチでそっと涙を拭った。
  

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