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最後の願い   2
   

イタチのオレへの思いには気付いていたのに、ずっと気付かない振りをしていた。
イタチの言葉が本当なら、明日から当分別の任務に就くことになるのだろう。
オレは、今日くらいイタチの思いに応えてあげてもいいかなという気持ちになっていた。
 
「今日だけ・・・今日一日だけでいいから・・・
オレを・・・」
 
イタチにそれ以上の言葉を言わせるのが可愛そうで、今度はオレからイタチの唇を塞いだ。
イタチを優しく抱きしめて、こんなオレでもイタチが望むならあげてもいいと思った。
 
 
そして・・・
オレはイタチが望んでいるものを与えた。
 
 
満月に近い月明かりに照らされて、オレ達は抱きしめ合った。
誰もいない静かな森の中で、イタチがオレの名前を呼ぶ声だけが響いていた。
 
 
すべてを与え終わった後、イタチはまた新たな涙を流しながら、
「ありがとうございました」
と、頭を下げた。
オレはもう一度、頭を撫でてあげた。
 
「イタチなら、もうどんな任務でも大丈夫だよ!
明日からの任務頑張ってね! じゃぁ、帰ろうっか」
 
「はい」と笑顔で答えてくれたイタチ・・・
最後に見せてくれた顔は本当に晴れやかで、清々しい笑顔だった。
  
 
そして、次の日の晩・・・
 
夜遅く、任務から帰ると里は大騒ぎだった。
イタチのうちは一族虐殺の報せを聞き、オレはショックで言葉も出なかった。
怒りで身体の震えが止まらず、どうやって家に帰ったのかも覚えていない。
気が付いたら、ベッドの上に寝転んでいた。
 
 
どうして・・・?
何故・・・?
自らの手で両親までも・・・
 
さすがにサスケだけは手にかけられなかったのか・・・
一人倒れていたサスケは無事保護されたという。
 
イタチの最後の笑顔が目に焼きついて離れない。
あの時、すでに気持ちは固まっていただろうに。
長期任務と嘘までついて、最後のお願いだなんて、何故あんなことをオレに求めたのか・・・
 
窓の外には大きな満月がただ煌々と輝いていた。
 
 
それから、立ち直るのに時間はしばらくかかったが、暗部任務は毎日まった無しで命ぜられる。
オレは何も考えずに任務に没頭した。
そして、不思議なことにイタチを監視していたオレの責任は何一つ問われなかった。
 
 
いつしか、うちは一族のことはまるで何もなかったかのように里から忘れられていった。
 
ただ一人サスケを残して・・・
 

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