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鈴の音   3
   

コンコン。
ドアをノックする。
返事はなかった。

天井裏に隠れて警護していた暗部がすっと現れて、黙って、頷いてくれた。
遅くなっても、オレが来たら通して良いとの特別な許可が下りていたようだ。

そっと、扉を開けて、執務室の中に入ると、
大きな机の上に突っ伏して寝ている先生の背中の四の文字が逆さまに見えた。

ここのところ、先生は新しい封印術を開発中ということで、徹夜が続いている。
どういう術だかはまだ教えてもらっていないけれど、
先生は、「完成したら必ず教えてあげるから、楽しみに待っていてね!」
と、笑って言ってくれた。

「黄色い閃光」の恐ろしさは、大陸中に轟き渡っているけど、
本当の恐ろしさは、実はそのスピードや強さももちろんのこと、奇想天外で誰も予想できない動きや、
柔軟性や意外性で。

特に新術の開発のおいては、天才的としか言い様がないくらいで。
ありえない属性の術を組み合わせたり、誰も思いもつかなかった術をいとも簡単に作ってしまうのだ。
螺旋丸だって、そうだ。
印を組まずに発動できる術なんて、誰も思いつかないし、誰にも作れないだろう。
まさに、破天荒な忍なのだ。

傍に寄って、先生の寝顔を覗いてみる。
あ〜あ、ヨダレ垂らしちゃって。
絶対、頬に痕が付いちゃうよな。
オレは、吹き出しそうになったのを必死にこらえて、
隣の仮眠室から、タオルケットを持って来て、先生にそっとかけてあげた。

(先生、今日の任務は無事終わりました。
机の上に報告書、置いていきますね。
転寝していると風邪ひきますよ)

声に出さずに、心の中でそう呟いて、部屋を出ようとしたら、
突然、ぎゅっと手を掴まれた。

ええ?先生起きてたの?

「ん・・・カ・・・カ・・・シ・・・」

目は覚ましていないようだ。
寝ぼけているのかな?

どうしよう・・・
無理矢理、手を解いてしまったら、起こしてしまうかもしれないし。
でも、こんなところで、転寝しているよりも、
一度起きてもらって、仮眠室へ行ってベッドの上で寝てもらった方がいいのかもしれない。
さすがに、この状態から、オレ一人で先生を抱き上げる自信はなかった。

「カカシったら、もう〜」

「コラッ〜!俺のせいにするの?カカシは!」

え?寝言だよね?
オレの夢を見ているの?

「ひどいよ〜!カカシ!そんなことするんだったら・・・」

そんなことって、
オレ、何しているんだよ?

オレの手を握る先生の力が段々と強くなってきた。

「待てえ〜!カカシィ〜!」

ひええ
オレ、逃げてるの???
先生から?

ぐいっと手を引かれたと思ったら、
「わあっ!」
と、大きな声を出して、先生が目を覚ました。

「ああ〜びっくりした。本当にカカシの手だったんだ。
今、オレ、カカシの夢を見ていたんだよ!」
「うん、先生、寝言でオレの名前呼んでいたよ」
「何だったのかは、わからないんだけどさ、カカシがオレの言うこと聞かなくって、
叱っていたら、突然、カカシが逃げ出してさ。
追いかけて、捕まえて、手を握ったと思ったら、本当にカカシの手だったなんて!
もう、驚いたよ!これって、正夢って言うのかな?」
「オレが先生を怒らせるようなことをしたの?」
「そうかもね〜!」
「もう〜ひどい夢」

先生は笑って、オレの頭をふわふわと撫でてくれた。

「おかえり、カカシ。間にあってよかった。
こんな大切な日に、雲隠れにまで、任務に行かせちゃって、ごめんね。
疲れたでしょう?」
「ううん、そんなことないよ。誰かが行かなくっちゃならないんだったら、
身軽なオレが行った方が早いし」
「折角、クラッカーで驚かせてあげようかと思ってたのに、
オレったら、寝こけてたなんで、情けないなぁ・・・
ごめんね。カカシ」

そう言って、先生は、引き出しの中から、クラッカーを4つ取り出した。

「あ、でも、ケーキはちゃんと用意してあるからね。
ちょっと、待ってて」

先生は執務室の奥の小さなキッチンにある冷蔵庫から、ケーキを持って来てくれた。
「14本って言ったらさ、太いのが1本で、細いのを4本くれたんだよ!
なんか、5本じゃ少ないよねぇ」
そう言って、笑いながら蝋燭に火を灯して、そして、ハッピーバースデイの歌を歌ってくれた。

「さ、カカシ、ふうって消して!」

それは、二人用の小さな小さなケーキだけど、
ちゃんと、「カカシ君お誕生日おめでとう」
なんてチョコレートの文字で書かれたプレートも乗っていて。

去年、先生が火影に就任してからは、別々に暮らすようになったけど、
先生は昔からイベント大好き人間で、何かあると必ずオレを呼んでくれたから、
寂しいと思ったことはなかった。
時には、何のイベントもなくても、
「今日は○○の日だから〜♪」
って、無理矢理何かにこじつけてくれて呼んでくれたし。

蝋燭の火をふうっと一息で消したら、クラッカーのパンパンパンとすごい音が静かな執務室に鳴り響いた。

「カカシ、お誕生日おめでとう〜!
はい、これ、オレからのプレゼントだよ〜♪」

にっこりと笑って、先生がオレに渡してくれたものは・・・

え・・・

これって・・・???

そ・・・

そんな・・・

ま・・・

さか・・・


オレはドキドキして、オレの掌に乗せられた綺麗な箱を見つめていた。
手も足も震えてきて、どうしようかと思った。

「開けて見てごらん」

先生が優しく微笑んでくれた。

                                                                               2009/9/26

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                           第3話は、いきなり、四カカです!