秘密の部屋とベッドの秘密 (あっきぃ)
カカシは火影服を愛しそうにそっと撫で、四代目の方をちらっと見た。
(初めが肝心だからな・・・ あのくらい言っておかないと・・・
はぁぁ・・ いったいこれからどうなることか・・・)
この先のことを考えるとちょっと目眩がしたカカシだが、
毎度毎度たとえどんな無理難題を要求されても、結局自分はあの笑顔に弱いから、仕方ないのだ。
(しかし、この部屋、何かありあそうだよな・・・
このベッドもかなり怪しいし・・・ 回るって? 回してどうすんのよ・・・
よし、今の内に写輪眼で探り入れとこうっと!)
一方四代目は、シャンプーの泡をいっぱいたてて、ご自慢の金髪をぐわしぐわしと洗っていた。
(もう、カカシったら〜 本当は嬉しいのにぃ〜 恥ずかしいお年頃なんだよねぇ〜
ん! そっか! もしかして、あれがマリッジブルーなのかな!?
でも、この部屋の凄〜い秘密を知ったら、絶対喜んでくれるよ・・・ ふふふ・・・)
しかし、ここはさすが四代目火影様、多少の事では動じない。
ちょうど、こっちを見ているカカシと目があった。
両手をVサインにして、にっこり微笑む四代目。
シャワーを止めていたので、もう湯気も消えて、裸が丸見えだ。
カカシはVサインをあっさりスルーして背を向け、
(やっぱ、シャワー浴びる時は、絶対隠して入ろう)
と心に固く決めたのだ。
カカシは瞳をゆっくりと閉じて、すばやく印を組み、写輪眼を発動させ、部屋をぐるりと見回した。
まずは、天井。
照明にも凝っていて、お洒落な小さなライトがいくつか付いているが、どうもそれだけではないらしい。
「ん? 何だろ、アレ?」
小さなフックや、他にも丸い何かの機器のような物が幾つか付いている。
次は、壁。
一見これといって怪しいところもなさそうなアイボリーのシンプルな壁紙なのだが・・・
「ん? 何だろ、アレ?」
しかし、よ〜く見ると、所々にやはり小さな機器のようなものが埋め込まれている。
そして、一番怪しいベッドの周りをぐるりと一周して、フリフリのベッドカバーをそっと持ち上げてみる。
「ん? 何だろ、コレ?」
ベッドの下は幾つかの引き出しのようになっているのだが、手を掛けてみても、簡単には開きそうにもない。
「ここ、絶対何かあるな・・・」
うろうろしているカカシを横目でちらりと見ながら、四代目はニンマリと笑った。
(へへへ〜 後でゆっくり教えてあげるよ〜 さっ、綺麗になったからあがろうっと)
シャワールームからあがった四代目は、バスローブを羽織って、ベッドサイドの小さな冷蔵庫から缶ビールを1本取り出した。
「カカシも何か飲む? 何でもあるよ〜ん」
「水でいいです」
四代目はミネラルウォターのペットボトルをカカシに渡して、ベッドに腰を下ろした。
「じゃ、乾杯しよ! ここに座って」
「乾杯って何に?」
「何って、二人の秘密の部屋の完成に決まってるでしょ!」
四代目はプシュッと缶ビールを開け、カカシのペットボトルにカチンとぶつけた。
「秘密の部屋の完成に乾杯〜! いえ〜ぃ! やっぱ大きな仕事を一つ成し遂げた後のビールは最高だな〜!」
四代目は、ゴクゴクと一気にビールを飲み干した。
「さてと、さっきはゆっくり説明できなかったから、この部屋の本当の秘密を教えてあ ・ げ ・ る」
そして・・・
「じゃじゃじゃじゃ〜ん! 見て!見て!カカシ!」
どこから出したのか、手には大きなリモコンを持って誇らしげに高く掲げて見せた。
「これから、スーパーウルトラハイパーアルティメットシークレットラブラブルームを見せてあげるね!」
「はぁっ? 何それ、却下! センスないし、やたら長いし。
っていうか、別に名前なんていらないでしょ!」
「え〜 そぉぉ・・・? まっ、じゃぁ、ネーミングは後にしてと。
この部屋にはね、凄〜い秘密が隠されているんだよ!
映像、音響、室温、香りまで思いのまま!
カカシが行きたい所に行けるバーチャルルームになってるんだ!
たとえば、南の島のリゾートホテルで海水浴とか、避暑地の別荘で森林浴とか、雪が見た〜いとかお花見がした〜いとか。
何でも出来るからさ! 北は北極から南は南極まで世界中のデータが入っているんだよ!」
再び頭の中にハテナマークがいっぱい飛んでいるカカシ、四代目の言ってることが全く理解出来ずに、きょとんとして小首を傾げた。
「例えばね〜」
四代目は、リモコンのボタンを素早くピッピッピッと押した。
すると・・・
天井から、大型の液晶テレビがズズズ〜っと降りてきた。
綺麗な海の映像が映し出され、白い砂浜にザァ〜ッと打ち寄せる波の音まで聞こえてくる。
ほのかに潮の香りがして、室温も少し上がったようだ。
「どう?どう? 凄いでしょ! 海に来た感じがするでしょ!
このテレビは、ホームシアターにもなってるから、映画も観れるし、音楽も聴ける。
もちろん、カラオケもゲームも出来るんだよ〜!
カカシ、どっか行きたい所ある?」
「いや、別に・・・」
(えへへ〜 部屋中鏡にもなるってのは、内 ・ 緒!)
「じゃじゃじゃじゃ〜ん! お次は、スーパーウルトラハイパーアルティメトイチャイチャらぶらぶベッド!!!
かかちぐるぐる〜! いや、ぐるぐるかかち〜の方がいいかな?」
「何それ? だからそんな名前は絶対却下!」
「そ〜お? 可愛いと思うけどな・・・ でね、このベッドはね・・・」
四代目は再びリモコンをピッピッピッと押した。
「回転やライトアップはもちろん、ドライアイスのスモークも出るし、ムード満点!
それに、収納は2倍!2倍!になってるから、下の引き出しにはね・・・
いろんなおもちゃやコスの衣装もいっぱい入っているからさぁ。 どんなプレイも思いのまま!
ねぇねぇ カカシ〜 今日は何して遊ぼうか?」
(えへへ〜 部屋中に隠しカメラが付いているってのも、内 ・ 緒!)
でれでれっとした四代目の顔を見て、カカシはこの部屋に入ってから、もう何度目か分からない深い深い溜息をついた。
「はぁぁ〜 全く・・・ 四代目火影ともあろうお方が、いったい何のために・・・ こんなこと・・・」
「何のためにって、二人の愛のために決まってるでしょ!!!
オレの給料の3ヶ月分も注ぎ込んで、カカシのために作ったんだよ!
この秘密の部屋はオレの夢だから!!! オレの愛の形、受け止めてよ〜!」
四代目はがっくりと肩を落としてうな垂れていたカカシの小さな肩をそっと抱き寄せて、耳元で優しく囁いた。
「ねっ、 カ ・ カ ・ シ・・・」